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創星のレクイエム  作者: 有永 ナギサ
3章 第1部 入学式前日

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90話 灯里のレクチャー

「まあな、学園が始まったら行く時間も限られてくるし、今のうちに通い詰めとかないとさ」

「ほんと好きですなー。魔道の求道なんかより、みんなでわいわい遊んだ方が楽しいのに」

「ははは、そんなの人それぞれだろ? それに灯里だって一時期、オレのように躍起(やっき)になって求道してたんじゃないのか? 星を手に入れた直後なんて、寝る間も惜しんでさ」


 どこか口惜しそうにかたる灯里に、笑って切り返してやる。

 今の灯里は魔道よりも日だまりの日々。この何気ない日々を大切にしている。だが達観する前は、陣と同じく魔道にどっぷりつかっていたと聞いていた。なので彼女も陣の気持ちがわかるはずだ。


「ギク!? ――あはは……、それは否定できないかも……」


 頭をかきながら、視線をそらす灯里。


「というか灯里が創星術師だったこと事態、驚きだったんだが。まさかオレよりもさらに上の段階にいってたなんて……」


 少し前まで灯里は陣と同じ天賦(てんぷ)の素質をもつ、魔法使いとしか思っていなかった。だが実際は陣が目指してやまない創星術師だったのである。その事実が発覚したアンドレー戦ラスト。いったいどれだけ驚愕(きょうがく)したものか。あまりに予想外過ぎて、目の前の光景に全然現実味がなかったのであった。


「わたしもあれにはびっくりしたんだよ」

「なんだ? リルも気づいてなかったのかよ」

「自身の星をある程度コントロールできてれば、余波を()らさないことが可能なの。だから実際に星詠(ほしよ)みを使ってくれないと、判断できないもんなんだよ」


 創星術師や創星使いは、自身や疑似恒星の星の余波を遮断(しゃだん)することが可能なのだ。この事実こそ星葬機構が頭を悩ます案件。もし近づいてわかるのなら、すぐに捕獲でもなんでもできる。だが星の余波が遮断できる以上、一般人となかなか見分けがつかないのである。そのため彼らがいくら断罪したくても、思うように事をなせない。おかげで魔道の求道者はいくら星葬機構がはびころうと、ゆうゆうと表の生活ができるのであった。


「うーん、とはいってもちゃんとした創星術師かどうかは、少し謎なんだけどね……。まあ、星詠みが使えるから、そういうことにしとこう!」


 リルにツッコミをいれていると、灯里がほおに指を当て首をひねりながらなにやら意味ありげな発言を。


「うん? どういう意味だ?」

「あはは、細かいことは気にしない! 気にしない! そうだ! せっかくだし先輩として、いろいろレクチャーしてあげようか? 星の求道自体は同じはずだから、いいアドバイスができると思うよ!」


 追求すると軽くはぐらかされてしまう。ちなみに以前にも彼女の星について聞いたのだが、こんな感じで答えてくれなかった。


「じゃあ、せっかくだし、先輩の話を聞いておくとするか」

「ふっふっふ、よし、キタ! もう創星使いの話はある程度聞いたと思うから、私からはそのあと。創星術師になってからのことを、今のうちに教えといてあげよう!」


 灯里は両腰に手を当て胸を張り、ウィンクしてくる。


「ああ、頼む」

「創星術師になってからの求道は、主に自身の恒星と同調して干渉(かんしょう)し、いろいろ調整をほどこしていく流れなの。それを続けることで星のレベルが上がっていき、より強い力が手に入っていく。でもそれがいつまでも続かないのが、創星術師の悩みどころなんですなー。星のレベルが上がるということは、それだけ制御するのも難しくなるということ。その結果、安定化するのに精一杯になって、いじるどころじゃなくなるんだよねー」


 創星術師は自身が持つ恒星に同調して干渉することで、星そのもののレベルを上げることができるのだ。これにより星詠みの出力も上がり、さらなる力も行使できる。だが当然リスクもあった。それは星のレベルが上がったことで、これまで通りに干渉できなくなるというもの。ようは術者の制御できるレベルが規定値に達していないせいで、星を扱いきれなくなり同調そのものが満足にできなくなるのである。この要因があるため創星術師は思うように星のレベルを上げれず、足踏みさせられてしまうのだ。


「そこで必要になってくるのが、練度(れんど)上げ! 実際に戦闘とかで行使して、星の扱いに慣れていくの!」


 この足踏みさせられる状態だが、当然打開策もあった。今の力量で規定値に達していないのなら、ただ単に上げてやればいい話。そう、もっと自身の星に触れ、扱いに慣れていけばいいのだ。

 これを練度上げといい、その方法は主に二つ。一つは実際に行使して、制御に慣れる方法だ。ロストポイントで頻繁(ひんぱん)に創星術師同士が手合わせしているのも、これ目当てなのが大きい。一人でただ練習するのも手だが、戦闘形式にしたほうがより身の入った行使ができるというもの。それに戦いの中でならさらなる力の使い方などを発掘でき、練度のほうもより伸ばせるのである。

 創星術師の中には闘争の中、練度と並行して自身の星のレベルを上げる荒業(あらわざをとる者もいるという。死力をつくすことで限界を超え、星をさらなる高みへと進化させる。暴走するリスクは高いが、こちらのほうが普通に同調してあげるより効率が段違いとか。しかもこの方法だと練度のほうも格段に上がっているらしく、割と手に入れた新たな力を使いこなせるようになっているとのこと。


「ほかにも自身の星を研究して、星詠みのシステム面を改良したりするのもあるね」


 練度を上げる二つ目の方法。それは自身の恒星を研究していく方法だ。練度を上げるとなると必ずしも行使するだけではなく、その力についての知識を深め技量を(みが)いていく手もある。そのやり方は基本的に星詠みのシステム面の強化。星詠みは星の輝きに方向性を与え、行使する術技。なのでその工程をいろいろいじることで、出力や形成速度、操作性などを上げることができる。しかも星への理解力も上げながらだ。これにより術者はより強力な星詠みを行使できるだけでなく、練度のほうも磨きをかけることができるのであった。


「こうやって星の扱いに慣れていけば、制御レベルも次第に上がっていくでしょ? そうすればまた同調による強化ができるようになるってわけ!」

「それでまた壁にぶち当たって、練度を上げてのくり返しか……。なら、今のうちに練度の方を上げておくのもわるくはないな」


 そう、創星術師になってからの求道を簡単に説明すると、星のレベルを上げ切れなくなったら練度を上げ、そしてまた星のレベルを上げるのくり返し。こうやって自らの星の限界値を上げていく流れであった。


「星の研究に関しては、別にロストポイントじゃなくてもいいのがうれしいよね! 私もよく自宅とか学園で、ひそかにやってたし!」


 星の研究に関しては、わざわざロストポイントに行かなくてもいいらしい。というのも今の状態を見て、どういじっていくかを思考するのがメイン。なので安全で、なおかつ落ち着ける場所でやったほうがいろいろ効率がいいとか。


「あれって理論を構築しといて、疑似恒星に組み込んでいく流れだっけ」

「そうなんだよ、マスター。星詠みの行使はかなり神経を使うから、どうしても精確な操作は難しくなっちゃうからね。だからあらかじめ疑似恒星にその工程を(きざ)んでおいて、手間を(はぶ)くんだよ。こうしておけば魔法みたいにいちいち方向性の核を作らなくて済むし、疑似恒星事態もサポートしてくれるからスムーズに行使できるの」


 リルのほうも説明に加わってくれる。

 やはり疑似恒星だけあって、そこらへんのことはくわしいみたいだ。


「ただ一度星の位階を上げると、これまで通りの理論じゃうまくいかなくなるパターンが多いんだよ。そうなったら現在の星のレベルで、またシステム面を改良していく必要があるんだけど、そこはまた星への理解力を上げると思ってね」

「まあ、説明はこんなもんでしょ! どうどう、陣くん、灯里さんの講義はためになったかな? それじゃあ、さっそく授業料をいただこうか!」


 灯里は満足げに説明をおえたあと、目を輝かせて手を差し出してきた。

 事前になにも言わず、説明がおわったあとに請求(せいきゅう)してくるとは。なかなかの詐欺(さぎ)商法である。


「ははは、じゃあ、あとで缶ジュースでも買ってやるよ」

「うわーん、小遣い稼ぎにもならなかったよー!?」

「ところで灯里、今って魔道の求道はどうしてるんだ?」


 残念がる灯里に、気になっていたことをたずねた。

 今の灯里は魔道に否定的。だが彼女も陣と同じく狂おしいほどの力への(かわ)きがある。それに星を持っている以上、なにかしらの求道をやらざるおえないはず。そのあたりはいったい、どうしているのだろうか。


「ほとんどしてないよ。たまに調整して、星を安定させるぐらい」

「それって大丈夫なのか? オレたち特有の渇きもあるし、星の衝動だってあるだろ?」

「うーん、渇きは確かにあるね。でも魔道に関して達観(たっかん)してる分、ぎりぎり押し殺せてるよ。あと星の衝動は力への欲望さえ抑えれたら、わりとなんとかなるものなんだ!」


 創星術師は星の衝動に()られ、さらなる高みを求めずにはいられなくなると聞いていた。結果、その人生すべてを魔道の求道にささげるようになるとか。だが灯里の話を聞く限り、そこまで深刻なものでもないみたいだ。

 確かにそういわれてみたら星魔教信者の創星術師たちは、自分たちの星よりサポートする創星術師たちの星を優先すると聞いたことがあった。おそらく彼らは()き上がる星の衝動を、ほかの創星術師の求道を手伝うことでごまかしたりしているのだろう。


「なるほど。じゃあ……」

「はい、ストップー! 暗い話はもうあきたよー!」


 ほかにも気になっていることを聞こうとするが、灯里が手で制してきた。

 もはや魔道に興味をなくした彼女だ。このまま続けられても、おもしろくないのだろう。


「そんなことよりも、さっさと遊びに行こうよー! 今日は春休み最後の日! いっぱい満喫(まんきつ)しないとねー! ほら、陣くん! リルも!」


 灯里は陣の手をとり、はじけんばかりの笑顔を。そして引っ張りながら、早く早くとせかしてきた。


「わかったから、そう引っ張るなって」


 こうして灯里に手を引かれ、陣たちは遊びに向かうのであった。








次回 研究機関ノルン

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