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創星のレクイエム  作者: 有永 ナギサ
3章 第1部 入学式前日

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89話 リルとの生活

 陣とリルはあれから神代(かみしろ)特区旧市街をあとにして、灯里との待ち合わせ場所である海岸沿いの広場に来ていた。ここは木々が立ち並び、花々もたくさん植えられている緑豊かな場所。さらに海も見渡せ、気持ちのいい潮風が吹き抜けるまさに絶好のスポット。散歩や日向ぼっこなどをして、のんびりするのにはうってつけであろう。広場内をリルと一緒に歩いていると、前方から陣の方へ勢いよく走ってくる少女の姿が。


「リルー! 会いたかったよー!」

「あわわ、灯里、苦しいんだよー!?」


 灯里はリルに飛びつき、そのままギューっと抱きしめる。そしてすりすりほおずりを。


「なんかすごい久しぶり感を出してるが、灯里ってしょっちゅうオレらに会いに来てるよな。昨日もシリウスの事務所に乗り込んで来て、(さわ)いでたし」


 しばらく会っていないような反応だが、実際は結構な頻度(ひんど)で二人は会っていた。というのも灯里が何度も陣たちのところへ、遊びに来るからだ。自宅やシリウスの事務所内、中には奈月のおつかい中にまで。今は春休みとあって、かなりヒマしているらしい。


「もー、わかってないなー、陣くんは。私とリルは少し前まで、ずっと一緒にいたんだよ。それが急に離ればなれになって、どれだけ悲しい思いをしてるか……」


 灯里はリルから離れ、胸をぎゅっと押さえながら目をふせた。

 陣がリル・フォルトナーの疑似恒星を受け取る前まで、灯里とリルはずっと一緒にいたのだ。それが急に離ればなれになってしまったのだから、さびしく思うのもしかたないのかもしれない。二人の仲は本当の姉妹のようであったがため、なおさらだろう。


「そういえばお前ら、姉妹のように仲がよかったもんな。そう考えると、灯里の気持ちもわからなくもないか」

「――うぅ……、灯里がこんなにもわたしのことを想ってくれてたなんて……。灯里、普段一緒にいない分、お姉さんにめいいっぱい甘えてくれたらいいからね」


 リルは灯里の想いに深く感動したらしく、涙目に。そして慈愛に満ちたほほえで、灯里に両手を差し出した。

 もはやこの場面、どこからどうみてもいい話。二人の思い合う姿に、少しぐっときてしまうといっていい。だがそんなすてきな雰囲気も、次の灯里の一言で崩れてしまうことになるとは。


「うん? どったの? 二人とも? 私はただリルがいないと、家の家事とかやってくれる人がいなくて大変だって話をしてるんだけど」


 灯里はほおに指を当て、さぞ不思議そうに首をかしげる。


「なんだそれ」

「ちょっと、灯里ー!? わたしの感動を返してなんだよー!?」


 これには両腕を上げ、ぴょんぴょん飛び跳ねながら抗議するリル。


「あはは、ごめん、ごめん! もちろんリルがいなくてさびしいのもあるから、そう、すねなさんなー、よしよし」


 灯里はそんなむっとするリルの頭をなでながら、なだめ始めた。


「というか家の方、そんなにもやばいのか?」

「うん! そうなの! 部屋が物で散乱してるし、洗濯や使った食器がたまってる始末! さらには起こしてくれる人がいないから寝過ぎちゃうし、もうさんざんなんだからー!」


 よくぞ聞いてくれましたと、両腕を胸元近くでブンブン振りうったえてくる灯里。

 そういえば少し前、リルが四条家の屋敷(やしき)でカミングアウトしたことを思い出す。確か灯里はけっこうだらしない性格だといっていたはずだ。


「灯里、マスターのところに行く前、あれだけがんばるよう念押ししたよね? まさかぜんぜんできてないとか……」

「だって一度やってもらう生活に慣れてしまったら、そう簡単に戻れるわけないよー! だからどうか戻ってきてー! リル! でないと灯里さんの快適な生活がー!」


 灯里は唖然とするリルに泣きつき、助けを求めだす。

 どうやら相当堪(こた)えているらしい。


「灯里のやつ、もうすぐ学園生活が始まるのに大丈夫なのか?」

「――はぁ……、今さらながら、すごく心配になってきたんだよ」

「――まあ、これが私の現状だけど、リルの方は大丈夫なの? 陣くんのところでうまくやれてる? エッチなこととかされてない?」


 二人であきれていると、灯里が急にリルの両肩をつかみ心配を。

 ただその内容が陣にとって聞き捨てならないものだったため、すぐさまつっこみを入れることに。


「おい、なんでそんな感想が出てくるんだ?」

「えー、だって陣くんもお年ごろでしょー? かわいい女の子と一緒に暮らすとなったら、こう、ムラムラしたりして手を出しちゃったりしないのかなーって」


 灯里は小悪魔な笑みを浮かべ、意味ありげな視線を向けてくる。


「はっ、どう考えてもこんなちんちくりん相手に、変な気持ちは抱かないだろ。バカも休み休み言えよ」


 対して陣はリルの頭をぽんぽんと優しくたたきながら、ありえないとあざ笑ってやった。

 すると今度はリルが聞き捨てならないと、ビシッと指を突き付け割り込んでくる。


「ひどい言いぐさなんだよ!? こっちも気にしてるんだから、もっとオブラートに包んでだね!?」

「いや、ほんとのことだし」

「むぅー、本来の姿だったら、絶対どぎまぎさせられるのにー」


 陣の正論に、リルは拳をにぎりしめながら悔しそうに主張を。


(――まあ、確かにあの姿ならな……)


 思い出すのは少し前、出会ったであろうリル・フォルトナーの姿である。彼女はリルと違い、普通に歳相応としそうおうの姿。しかもはかなげな雰囲気を出す、かなりの美人ときた。そのためもしその姿で来られていたら、正直どうなっていたかわからなかった。


「あはは、リルもいろいろ大変ですなー」

「ほんとマスターのデリカシーのなさにはねー。――まあ、それ以外の不満はないかな。基本自由にさせてくれるし。ただ灯里みたいに、家事を押しつけられるのはあるけど」


 やれやれと肩をすくめるリル。そしてほおにポンポン指を当てながら肯定してくれるも、最後にはジト目を向けてきた。


「ははは、住まわせてやってるんだから、それぐらいは働いてもらわないとな」


 なんでもリルは陣のところに来る前、灯里のあまりのだらしなさにあきれ、しかたなく家事などをやってあげていたらしいのだ。それを聞きどうせならウチでもやってくれと、頼んだのが始まり。実際リルの家事スキルはなかなかのモノであり、かなり助かっていた。


「最近思うんだけど、わたし疑似恒星としての仕事もこなしてるのに、過剰労働過ぎないかな?」

「そこはほら、ガキのおもり代もふくめたらさ」

「うぅ、灯里ー!? マスターがいじめるんだよー!?」


 あまりのひどい言いように、リルは灯里に泣きつきに行ってしまった。


「あはは、よしよーし、リルはいい子だねー。――それはそうと、陣くん、また旧市街の方に行ってきたの?」


 灯里はリルの頭をなであやしながら、ふと込み入った話をしてくる。




次回 灯里のレクチャー

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