20話 従者の提案
「陣さんは従者を欲しくありませんか?」
「どうしたんだ、急に?」
「うふふ、もしあなたが星詠みに手を出したならば、陣さんのもとに付こうと思いまして。ですので今のうちに予約しておこうかと」
ルシアは口元に手をやり、クスクスとどこか妖艶な笑みを浮かべてくる。
「実はこれまでウワサを聞いてきて、すごく興味があったんですよ! そして実際に会ってわかってしまったんです! 陣さんこそワタシがずっと探してきた答えなんだと! きっとあなたは、誰もが到達できなかったその果てまでたどり着く! そしてこの世界の真理に手を伸ばすでしょう! それまでおそばに控え力となり、行きつく結末を間近で見てみたいのです!」
そして彼女は陣に手のひらを伸ばし、まるで恋する乙女のごとく熱烈にかたりだした。瞳を淡い狂気の色に染めながらだ。
「なんだかめんどくさそうな話になってきやがったな。というかあんた本職は星魔教のエージェントなんだろ?」
「エージェントもやっていますが、星魔教の一信者でもあります。なので星詠みという神の試練に立ち向かうであろうあなたさまの従者となり、お手伝いさせていただきたい。もちろん命令されれば、なんなりとこなしてみせましょう。ワタシ見ての通りかなりの狂信者なので、命をも投げ出す覚悟がありますよ!」
とんっと胸をたたき、並々ならぬ意気込みを口にするルシア。
「重すぎるわ! ――はぁ……、まったく、そういうことでお引き取り願うぜ。人を下につけるのは性にあわんからな」
あまりの覚悟に思わずツッコミを入れてしまう。
あと陣は一人でアウトローに生きたいタイプ。ゆえにそばで仕えられるのは正直いって気が散るため、遠慮してもらいたかった。
「あら、彼女すごく優秀そうだしいいじゃない。陣の従者になるということは、アタシのの戦力になるのと同じことなんでしょ」
しかし断る気満々の陣に対し、奈月は乗り気の態度をみせる。
彼女に対してはすでに陣がお墨付きをしている。それゆえ奈月は自分の陣営にと、彼女の力を欲しているのだろう。彼女が陣の従者になるということはつまり、陣が力を貸す奈月の力になるも同義なのだから。
「はい、陣さんが力を貸すなら、従者であるワタシも喜んで奈月さんの力になりましょう」
奈月に恭しくお辞儀し、力強くほほえむルシア。
「うん、いい子ね。陣のところに好きなだけ転がりこみなさいな。アタシが許可してあげるから!」
奈月はそんな従順な態度を示す彼女を、さぞ気に入った様子。ルシアの肩にぽんと手を置き、勝手に快く迎えだした。
「お力ぞえありがとうございます! もし次の主君を選ぶ機会があるなら、ぜひ奈月さんのもとでおしたがえしたいと思えてきました!」
「くす、アタシのもとについてもいいのよ? 破格の好待遇で迎えてあげるわ!」
奈月は意味ありげにウィンクしながら勧誘を。
するとルシアは陣の方に歩いてきて、そっと後ろへとひかえだす。そして胸に手を当て、まっすぐに自身の想いを告げた。
「申しわけございません。ワタシ一途なんで、一目ぼれした陣さんのもと以外は今のところ考えられないんですよ」
「あら、振られちゃったわね、ざんねん。じゃあ、陣にすべて任せましょうか。くす」
奈月は肩をすくめながらも、おかしそうに笑っていた。
「おーい、なに勝手に当事者を放って話を進めてるんだ? これだともう許可した空気になってるじゃねーか」
これにはさすがにツッコミを入れるしかない。
打ち解けるのはいいことかもしれないが、問題はルシアが陣の従者になるということで勝手に話が進んでいるということだ。なので奈月とルシアによりまとまりかけていた空気に、抗議するしかなかった。
「あら、決定したけどなにか?」
すると奈月は両腰に手を当てながら、さぞ当然のように告げてくる。
「陣さん、それではお世話になりますね!」
ルシアもルシアで陣の上着の袖をぎゅっとつかみ、目をキラキラさせながら笑いかけてくる。
「――お前らな……」
もはやノリノリな二人に、頭を抱える陣なのであった。
次回 カーティス神父




