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マシン・ブレイカー ―Crusaders of Chaos―  作者: マシン・ブレイカー制作委員会
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四十五話 面接

蒼井(あおい) 将貴(まさたか)といいます、よろしくお願いします」

 黒のスーツをきっちりと着込んだ男性が槙原とジョナサンが座るテーブルの前で一礼した。

「蒼井さん、ですね。どうぞ席にお座りください」

「はい」

 槙原が書類を見ながら言うと蒼井はきょろきょろと辺りを見ながら座った。

「ではまず、今回の求人に応募した経緯や理由を教えてください」

「えーっと……私はメガロポリス横浜で、個人でボディーガードをやっていたのですが、そのー、前に勤めていた会社からここで面接が行われることを教えられまして、それで応募した次第です」

 蒼井は必死そうな表情を浮かべ、何度も言葉をつまらせながら矢継ぎ早に飛んでくる質問に答えていた。

 しかしそれは緊張しているからではなく、何も考えてないからだというのは見るからに明らかだった。

 なぜなら槙原がしている質問の一部は履歴書に書かれている物の確認だったからだ。それなのに蒼井の反応はたどたどしい。おそらく誰かに書いてもらったか昔書いた物を機械的に書き写してきたので覚えていないかだろう。

 ジョナサンが蒼井にわからないように、口を閉じながらあくびをしたのを見て、槙原は質問を切り上げることにした。

「私の能力(アギト)は自分の体力が続く限り水を生み出せる【無限水(オールウェイ)……」

「あ、それは書いてあるので大丈夫です」

 そう言って槙原は唐突に蒼井の答えを打ち切った。蒼井は突然自分の売り文句を止められたからか、不満そうな表情を浮かべた。

 そんな責めるような蒼井の視線に反応することすることなく、槙原は部屋の端へと歩きだした。

「では、とりあえず簡単な試験をしてもらいましょう」

「試験?」

「ええ。ある物を見てもらうだけの簡単な試験です」

 そう言って槙原はいつの間にか手にしていたリモコンを操作した。すると先程まであった壁が少しずつ透明になっていった。

 ホログラフィーだったのだろうか、壁が完全に消えると狭い面接室が一気に広くなり、普段使われているであろう机や本棚が姿を現した。

 そんな新しく現れた部屋の中心に異様な物体が1つあった。

 まるで眠っているような裸の女性の姿が浮き彫りになっている、とても大きな植物がそこにはあった。

「何ですか、あの趣味が悪そうな……」

 そう言いながら蒼井は目を凝らしながら植物を見ようとした。その瞬間、植物に浮かぶ女性の目が突然見開かれた。

 そして面接室内に野太い男性の、女々しい悲鳴が轟いた。


---


 自分の机に槙原がジョナサンの確認に相槌をうちながら履歴書をまとめていると脇からするすると蔓が伸びてきて、机の上にあったメモ帳とボールペンをひったくった。

「で、今回の面接はお前から見てどうだった?」

「……いまいちですね。影山さんの【送影】は能力自体はいいんですけどね、代償が」

「あー、人間にも機械にも認知してもらえなくなる、っていうやつだったな。下手すればフレンドリーファイアが起きかねない」

「ええ。ミツバアタックをくらっても動揺しなかった、という点は好評価なんですけどねー」

 ビリッ、という音がして再び蔓が槙原の机にはいより、破れたメモを置いた。

「『あの、私のすがたをみせるのはもうかんべんしてもらえませんか』?」

「無理だな」

 槙原がメモを朗読しジョナサンが一瞬で否定すると植物……能見は『なんで!?』と蔓を器用にあやつって一気に書き上げた。

「……まあ、新垣君の言ってた通り自分の命をかけてやってくれるほどのやる気があるかどうか簡単に分かるからですね」

「副作用が発生する可能性がある職場だということを示せる最大の物件だからな。それに仲間が副作用に陥った程度で動揺していたら話にならん」

 そうですけど……、と能見は泣き顔を浮かべながら書きなぐっている横で槙原は非常に罰が悪い顔を浮かべた。

「自分の姿を見られて絶叫される、っていうのが精神的にかなりハードなのはわかる。だがこれは全世界を恐怖に陥れたウイルス開発者を捕まえるための大事な戦力補強の事案だ。戦場で働けない分、戦っている新垣やAーSへの負担が減るように俺達がなんとかしてやらんとな」

 そう言って、ジョナサンは包帯とギブスでぐるぐる巻きになっている自分の腕に目を落とした。


---


 時は経ち、月が空に浮かび始めた頃。

 久我原は叢雲と共に、メガロポリス外で今となっては珍しくなった二階建ての廃工場に足を踏み入れていた。

 久我原が黙って辺りを見回していると叢雲が視線を右上に向けた。

 するとその方向からカン、カン、と金属製の階段を降りている時の足音が響いてきた。

「……あんたが今回の依頼主か?」

「ええ。暴走する危険性があるから、と言われて敬遠されるアーマー型機械兵を使いこなす傭兵さん?」

 雲の切れ目から現れた月の光が階段から降りてきた女の顔を照らす。

「そうだ。依頼と報酬は何だ?」

「私の命を守って。そして、報酬はあなたが求め続けている情報を」

 久我原は一瞬眉間を顰めたが、すぐに真顔に戻った。

「……本当に見つけられるのか、国崎早苗?」


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