表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/6

第一話 与えられし力

ある日、御池貴光といふ平安貴族、神の寄越し給ひし異形の獣に撥ねられ、見知らぬ異界へ転生仕りけり。


 されど貴光、その事実を理解せず。


「……いと痛きなり」


 草の上に伏しける身を起こし、烏帽子を正しけり。


 見渡せば、周囲は見知らぬ草原。

 空はいと青く、風強し。

 遠くには耳長き女、鹿めきし獣に跨り駆け抜けける。


「……都より遠き地なりや?」


 その時なり。


 天より突如として声響きける。


『異世界転生おめでとうございます』


「…………は?」


『貴方には特別な能力が与えられます』


「の、呪詛か?」


『まず一つ。“鉄の牛車召喚”』


 刹那。


 轟音と共に、巨大なる鉄の塊、草原へ現れけり。


「……………………」


 黒く。

 硬く。

 妙に四角し。


「……牛車なり?」


『二つ目。“黒き神境”』


 続いて黒き板、ぽとりと落ちける。


『三つ目。“あ〇ぞん使用権限”』


「何語なり」


『では良き異世界生活を』


「待たれよ」


 声、消えけり。


 風のみ吹きたり。


「……雑な神なり」


 貴光、恐る恐る鉄の牛車へ近寄りける。


 触れればひやりとして硬し。


「鉄にて出来たる牛車とは……」


 窓を覗き込みけるが、中はいと暑し。


「風通し最悪なり」


 ぺちぺち。


 叩けどびくともせず。


「無駄に頑丈なり」


 その折、小さき鉄片ぽとりと落ちける。


「……?」


 貴光、拾ひ上げ、しばし眺めけり。


「小さき鉄屑なり」


 そして迷いなく、近くの川へ投げ捨てける。


 ちゃぽん、と音響きけり。


『あっ』


「何なり今の」


 返答なし。


 次に黒き神境を拾ひ上げける。


 その瞬間、板、突如として光りたり。


「ッッッ!?!?」


 貴光、叫びながら放り投げける。


 黒き神境、岩へ激突せしも傷一つなし。


「妖具なり!!」


 さらに、ぶぶぶ、と震え始めける。


「ひぃッ!!」


 烏帽子を押さえつつ後退りける。


 されど、しばらく見つめておると、ただ震えるのみ。


「……案外おとなしき妖具なり」


 恐る恐る拾い上げける。


 すると黒き板、己の顔映し出しけり。


「ッッ!?!?」


 再び投げ捨てける。


「閉じ込められし男おる!!」


 されど黒き神境、またしても無傷。


「なんと頑丈なり……」


 貴光、しばし考え込みける。


 そして鉄の牛車を見やり。


「……牛おらねば動かぬなり」


 しばし沈黙。


 風、草原を吹き抜けけり。


 その時。


 近くを歩みける巨大なる黒牛、貴光の目に入りたり。


「おお」


 貴光、静かに頷きける。


「牛車には、やはり牛なり」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ