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第三話 仇の名は左膳


クラマは悟空たちに一礼した。


「助かった。あなた方がいなければ、この子達も俺も危なかった」


黒い羽織の青年は真っ直ぐな瞳でセリーヌを見つめる。


「いえいえ、当然のことをしただけです」


三蔵法師を名乗る銀髪の少女は、にこりと微笑んだ。


クラマは一拍置いて、悟空をちらりと見る。


「だが、猿が助太刀に入るとは……正直、驚いた」


その言葉に、猿の姿をした悟空は肩をすくめた。


「まあ、いろいろあってな」


悟空が答える。


その瞬間、悟空の姿がふわりと揺らぎ、ショウタへと変わった。

黒髪の少年――ごく普通の高校生の姿に戻った彼を見て、クラマの目がわずかに見開かれる。


「お前、何者だ?」


「ヨカゲ高校二年です……」


「?」


クラマは呆れたように首を回すと、子どもたちを見やった。


「まずは子供たちを俺の屋敷に連れていく。ついてきてくれないか」


クラマに案内され、一行は町外れの屋敷へと向かう。



その屋敷は質素ながら広く、庭には竹が風に揺れていた。

警備らしき者はいなかったが、内部は整っており、少なくとも野盗の類が住んでいるような雰囲気はない。


「ここなら安心だ。中に世話役もいる」


クラマが屋敷の門を閉め、子どもたちを女中に預けた後、茶を淹れるため一同を茶の間へと招いた。

障子越しに射す陽光のなかで、湯気の立つ茶が人数分並ぶ。


「さっきの剣士……丹下左膳って言ったな」


ショウタが口を開いた。


クラマは頷く。


「ああ。あれが、“濡れ燕”の使い手。噂よりも手強かった」


「右手も、右目も無いように見えたけど……」


「それでもあの身のこなし。あの一刀に斬られたら、並みの奴じゃ歯が立たない」


そのとき、障子の向こうから足音がした。

茶を届けに来ていたらしい若い娘が、そっと戸を開けて入ってくる。


「左膳、って……今、言いましたか?」


声が震えていた。


クラマが驚いたように目をやる。


「お艶……?」


娘は神妙な面持ちで頷いた。


「あの男に……栄三郎さまは……」


「どういうことだ?」


「二本の刀を巡って争いになって……。乾雲と、坤竜。栄三郎さまは命懸けで守ろうとしたのに……」


クラマが目を細める。


「それで、その二振りは?」


「左膳に奪われました。栄三郎さまは今も寝たきりです。どうか……仇を討ってください!」


お艶はショウタの方を向き、頭を下げた。


「いや、それは……えっと……」


ショウタは困ったように視線を逸らす。


「殺し合いとか、そういうのは――」


「じゃあ、私がやります」


ぴしゃりと言い放つお艶。

その目は真剣そのもので、恐れも迷いも見えなかった。


その空気を破るように、くぐもった声が届いた。


「お艶どの、それはわしらに任せい」


一同が振り返ると、部屋の隅にいつの間にか一人の男が立っていた。

ぼろぼろの羽織に無精髭、腰に木刀を差した浮浪者風の老人である。


「なっ、誰……?」


ショウタが立ち上がる。


「蒲生泰軒……!」


小声でクラマがつぶやいた。


「そちらの方々、すこし顔を貸してもらおうかの。クラマ殿も」


男はそう言うと、笑みを浮かべながら、まるで当然のことのように歩み出た。


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