↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
多田笑のコメディー短編集  作者: 多田 笑
PR
5/10

お金

しいなここみ様主催『無謀! 瞬発力企画2』参加作品です。

 私は、とあるゲームに参加することになった。このゲームでは、命を落とす可能性もあるという。それでも、私は参加した。


 ──お金が必要だからだ。


 娘の高額な手術費用。

 私の命と引き換えになろうとも、必ず稼いでみせる。


「それでは、お集まりの皆様。ゲームを開始いたします」


 会場のスピーカーから、無機質な声が響いた。おそらくゲームマスターなのだろう。


 参加者はおよそ二十人。


 誰もが無言で、互いを警戒している。


 勝ち抜けば、賞金一億円。


 生きて帰るか。ここで終わるか。


「今回のゲームは、こちら!」


 デン、デン、デン、デン、デン、デン、デン!


 場違いなほど陽気な効果音とともに、スクリーンに大きな文字が映し出された。


『食べ物しりとり』


(……は? しりとり? 命がけで? しりとりを?)


「それではルールを説明いたします。食べ物をテーマにした“しりとり”です。順番に食べ物を答えていただきます」


「しつもーん」


 背の高い男性が手を挙げた。


「日本で食べていないものでも、他国で食べられていればOKですか?」


「フフフ……とても良い質問ですね」


 男性は、照れたように頭を掻いた。


(て、照れるな……!)


「食べ物かどうかの判定は、実際に回答者に食べていただきます。食べられれば、食べ物と見なします」


(え……? つまり、食べられれば何でもアリ?)


「しつもーん」


 再び、同じ男性。


「バナナは、おやつに入りますか?」


「……それでは、くじ引きを行います」


(無視された……! さっき褒められて調子に乗ったな)


 男性は、しょんぼりしていた。


◇


 くじ引きの結果、私は三番。


「それでは開始します。一番の方からどうぞ」


「和牛サーロインステーキ五百グラム」


(いきなり贅沢! しかもグラム指定!?)


 ジュー……ジュー……


 奥から調理音が聞こえる。


 やがて扉が開き、湯気を立てたステーキが運ばれてきた。


 男性は幸せそうに頬張る。

 私たちは、それを黙って見守る。


(……テンポ、悪くない?)



 二番の男性の番。


(“む”って難しくない……?)


「ムール貝」


(おお、ある!)


 しかし運ばれてきたのは──殻付きの生のムール貝。


(そうか! 料理名にしなければ素材のまま! まさか……死の可能性って、生食による食中毒!?)


 男性は青ざめる。


「あ、あの……食べなかったら?」


「その場合は脱落。お帰りいただきます」


(え、帰れるの? 死なないの?)


「じゃあ……帰ります」


 二番はあっさり脱落した。



「三番の方。“い”から始まる食べ物を」


「いちご」


 運ばれてきたのは、いちごが一粒。


 私はすぐに食べ終えた。


◇


 その後も、しりとりは続く。


「ゴルゴンゾーラパスタ」

「タン塩十人前」

「江戸前寿司三人前」

「海老天丼、三つ」


(……ここ、お食事処? みんな注文してない?)


 周回を重ねるごとに、参加者は満腹で脱落していった。誰もが満足そうな顔で。


 そして最後まで残ったのは、私。

 私は、お腹にたまらないものばかりを選び続けた。


 こうして私は賞金一億円を手に入れた。


 だが──


 好きなものを腹いっぱい食べて帰っていった彼ら。

 好きなものを我慢し、お金を得た私。


 果たして、どちらが勝者なのだろう……。



 いや、それよりも──



 何だ、このデスゲーム!!

最後までお読みいただきありがとうございます。

誤字・脱字、誤用などあれば、誤字報告いただけると幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。