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人を超えしモノ~AIが溢れる中で人としてどう生きる?~  作者: ゆる弥


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18.鋼鉄の骨組み

「メデューサは永久に不滅だぁ! 警察なんて全員くたばれぇ!」

 

 叫びながらこちらへ駆けて来る男をみて。

 こりゃ逃げられねぇな。

 と思ったわけだ。

 

 その時見える距離にいた俺達は、完全に爆発の影響を受ける距離にいた。咄嗟に律を包み込むように抱きかかえ、車の影へと逃げる。そして、地面へと倒れ込んだ。


「うおおおおぉぉぉぉぉぉ!」


 ──カチリ


 何かが噛み合ったような音がやけに鮮明に聞こえた。

 その音と同時に、一瞬世界が光を放ったように錯覚した。


 次の瞬間、至近距離に雷が落ちた様な凄まじい轟音。

 続けざまに爆風が後ろの車もろとも俺と律の体を持ち上げて吹き飛ばしていく。

 俺は必死に律を抱えていた。


 そのまま視界は真っ暗になった。

 

 どれだけ時間がたっただろうか。後ろを振り返るとビルのガラスが木っ端みじんにはじけ飛び、近くにあった車両もひっくり返っている。


 相当強い爆発だったようだ。自分が生きているのが不思議だ。目の前にいる律も胸が動いているところを見ると生きているようだ。


 俺は少し体を起こし、街の様子を伺うと救急車がそこかしこを行き交い、焦げ臭い匂いと燃えていく車がたくさん見える。


 犯人は考えるまでもなく木端微塵になっていただろう。目の前にいる少女はなんとか守ることができたようだ。煤の着いている顔がピクリと動くと目を覚ました。

 

「須藤さん……」

 

 俺の背中を見て、目を見開く。背中がどうしたのだろうかと疑問に思っていたら、律から映像が送られてきた。自分の背中の状態の映像だった。


 自らの鋼鉄の骨組みがむき出しの背中。

 それを見た瞬間に今までの過去の記録が再生された。

 人間だったころの記憶。


 母親は良く働いていて、俺が警察になったと聞いたら飛んで喜んでいた。でも、警察組織というのは陰湿な体質の所でもあり、殺人犯の父親だということで様々な嫌がらせを受けた。


 そして、俺は死を選び、母親の手によって復活させられたのだ。

 

「須藤さんって、エクシードヒューマンだったんですか……」

 

 エクシードヒューマン。それは十二年前、丁度俺が警察となるときに生まれた人種。開発されたその人種は一部の内臓は人間の物だが、ガワの骨格から何からは鉄でできているという人類を超えた物。


 もちろん脳みそはAIチップだ。だから、俺はAIもロボットも嫌いなんだ。自分の中のこの感情というものは嘘のモノだということなのだから。

 

「俺は弱い人間だったんだ。父のことで嫌がらせを受けていた俺は、ある時耐えられなくなった。警察に就職することは決まっていた。事件の真相をはっきりさせようと思っていたんだ」


 自分の鋼鉄の骨組みだけになった背中の映像を見ながら手で擦る。

 嗅覚がないのだが、焦げ臭いと認識できるのが、この体の高性能性を示している気がする。


「だが、心がもたなかった。高層ビルから飛び降りたんだ。たまたま命を取り留めたが、脳死だった。そこで、おふくろは俺を多額の借金をしてエクシードヒューマンへと変貌させた……。今までプロテクトがかかっていたが、衝撃で解除されたみたいだな」

 

「他の人はそれを知っているんですか?」


 眉間に皺を寄せて俺の体をジッと見ながらそう話す律は、目をハの字にして悲しそうに見つめている。別に、俺も隠しているつもりはなかったんだ。


 記憶が閉ざされていたため、自分が人間だとずっと思っていた。どこかでこういう人種がいることは頭の片隅にとどめていた。


 それが、まさか自分がその人種だったとは。犯罪組織の中にもこういうロボットがいるのだろうか。だとしたら、対抗できるのは俺しかいないだろう。

 

「いや、一部の人間しか知らない。それこそ、警視総監は知っているだろう。俺の飛び降り事件のことも、その後のことも知っているだろうからな」

 

「お父様が……」

 

 自分には何も知らされていないことが不満だったのかもしれないが、こればっかりは仕方がないだろう。一緒にいる男が実はAIを搭載した似非人間なんだから。


 だが、不思議なことがある。おふくろはそんな多額の借金をしているにも関わらず優雅に暮らしている。いったいどういうことなのかはわからない。


 あの人は色んな意味で強い人なんだろう。俺の秘密を律に知られてしまった。もうしかしたらもうバディは組めないかもな。律がお断りだろう。そう思い暗い顔をしてしまっていたようだ。

 

「なんか、つきなみなんですけど、須藤さんは須藤さんだと思いますよ。他の何者でもありません」

 

 その言葉になんだか、心が洗われた。AIに心というものがあるのならだが。


 律が着ていた上着を貸してくれたのでそれを羽織り、背中を隠す。


 ゆっくりと無事だった胸ポケットの煙草を取り出して口にくわえる。オイルライターで火を点け、煙を灰に入れていく。この肺も人造の物だ。だから、いくら黒くなろうと関係ない。


 すべてを思い出した俺は、逆に開き直っていた。俺がロボットなんだ。それなら、いろいろとやりようがあるなと。できることはすべてやる。


 そして、この日本を脅かしているメデューサという組織を壊滅させるんだ。これからは、完全に力仕事は俺だな。なんてったって、ロボットだからな。


 律に見送られながら、俺は修理してもらうために製造元を訪ねて戻ってきたのは一週間後のことだった。

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