表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
37/41

迫撃の銃装戦士編 5


「振りかざすは巨神の槌(トールハンマー)。雷の雄叫びとともに打ち下ろせ! 万丈の雷火(サウザンドサンダー)!!」


 凛とした声が響く。

 勢いよくシオウが杖を掲げた。

 次の瞬間、虚空から降り注ぐ雷が邪黒竜を打ちのめす。


「ダブル!!」


 続けてもう一度だ。

 揚力を失い、真っ逆さまに落ちてくる巨竜。


 やるねえ。

 けれん味のない、じつに安定した魔法行使だ。


 どう、と、黒い竜が地面に叩きつけられる。

 音がしそうな勢いで耐久ゲージが減っていった。

 魔法のダメージにプラスして、落下のダメージがあるためだ。


 万丈の雷火の付随効果である麻痺(スタン)の影響で、まともに着陸できなかったのである。


 もちろんシオウはこれを狙っていた。

 魔法使いとしての戦い方を熟知している。


 僕はリロードを終えた拳銃をホルスターから抜き、ふたたび続けざまに発砲した。

 銃技(ガンスキル)月を撃ち(シューティング)抜け(ザムーン)が使えれば一発で勝負は決まるんだけど、あれはボスキャラには通じないし、そもそも聖戦士に使用可能になるのはレベル三十からである。


 魔法剣士もそうだったけど、複合役割(クラス)はこういうところがつらいよね。


 あっという間に全弾を撃ち尽くし、銃を剣に持ち替えて突進(チャージ)を敢行する。

 クシュリナーダひとりに前衛を押しつけるわけにはいかないから。


「でけえ……」


 最接近した邪黒竜を見上げ、思わず呟いちゃった。

 本気で小山みたいである。


「的が大きくて良いじゃない」


 勇敢に槍を振るうクシュリナーダのお言葉だ。

 ほんとね。

 彼女に怯懦って文字は似合わないよね。


 負けていられない。

 僕もがむしゃらに剣を突き刺す。


 おうふ。

 銃よりずっと効いてるなー。

 さすが魔剣ラジル。レベル二十五で装備できる一番強い剣だ。


「伸びろ! マリーゴールド!!」


 クシュリナーダの声に従い、ぎゅんって勢いで槍が伸びる。

 彼女を掴まらせたまま、六メートルくらいの高さまで。


 どっかどかと黒竜の胸あたりに蹴りを加えるものの、あんまり有効打にはなっていない。

 場所が悪いのだ。

 せめて首の高さくらいまでいければ良いんだけど、どう考えても一番筋肉が分厚そうなあたりだもの。


 小うるさげに腕を振る邪黒竜。

 攻撃の継続を断念して、クシュリナーダがひらりと地上に舞い降りる。


 さらっと言っちゃったけど、六メートルの高さから飛び降りるってこのすごく怖いと思うよ。

 クシュリナーダの身体能力をもってしても。


「いやあ、マリーゴールドの伸長機能に限界があるって、はじめて知ったわ」

「……まあ、限界まで伸ばすなんて滅多にないもんね」


 あんまりなセリフに、思わず返答が遅れちゃったよ。

 あんた自分の武器の限界も知らないで突撃したのか。

 どんだけ特攻野郎なんだよ。


 しっかし困ったね。

 地上からちょこちょこ攻撃しても、なかなか致命傷は与えられない。

 致命的な攻撃(クリティカルヒット)が出る急所は、たぶん首とか頭とかだろうしね。


 で、それは地上はるか十五メートル以上の高さだ。

 銃で狙ってみる?

 左手で拳銃を抜いた僕は、ほぼ真下から顔というか顎を狙って射撃する。

 どごーんどごーんと。


 音だけは立派なんだけど、与えてるダメージは微々たるものだ。

 仕方ないことではあるけど。


「掴み取るは紅蓮の魔手。業火を(まと)いて燃やし尽くせ! 地獄の炎陣(ヘルファイア)!!」


 ここで決まるシオウの魔法。

 もっのすごい巨大な火柱が吹き上がり邪黒竜を包む。

 僕やクシュリナーダも巻き込まれるんだけど、『LIO』での攻撃は味方には当たらないので普通に素通りするだけだ。


 黒い竜が苦悶の絶叫をあげながら、憎々しげに僕たちを睨む。

 そして、かっと口を開いた。


 げ。

 ブレスか。

 やばいと思う間もなく、広範囲に撒き散らされる黒い炎。


 うひいっ!

 耐久ゲージが削れていくぅぅぅっ!


 これ、近くにいる方がダメージ大きいらしい。

 シオウとコーガもかなり良い勢いで耐久ゲージが減ってるけど、僕やクシュリナーダほどじゃない。


 ちらっと目配せした僕たちは、ほうほうの体でドラゴンから距離を取った。

 ひえええ。

 ブレス一発で、七割くらいもっていかれたよ。


すべての者に癒しを(オールヒール)


 両手を広げたコーガの身体からあたたかな光があふれ、全員の耐久を回復させてゆく。

 助かった!

 いっぺんに全員分の回復ができるんだね。


「魔力の消費は激しいけどな」


 コーガが苦笑してる。

 こればっかりは仕方ない。

 全員が完全回復できる魔法なんか、そうほいほいは使えないだろう。


 もちろんドラゴンのブレスも連射はきかないだろうけど、一発がでかすぎる。あれを喰らうたびに全体回復が必要だと考えると、ぶっちゃけジリ貧だ。


「私とウリエルが左右に分かれて攻撃。これでどう?」


 クシュリナーダの提案は、的を分散するというものである。

 なかなか大胆な戦法だ。


 両方向から攻撃すれば、たしかに邪黒竜のブレスは全員には当たらない。必ず死角ができるから。

 けれど、僕もクシュリナーダも常に一人で戦わなくてはいけない。

 互いの背中を守り合うってわけにはいかないのである。


「よし。それでいこう」


 それでも僕が頷いたのは、このままでは手詰まりだからだ。

 削り合いの消耗戦になってしまったら、ちょっと勝算の立てようがない。


 同時に走り出したふたり。

 僕は時計と逆回りに右から、クシュリナーダは左から回り込む。

 コーガはシオウを守りながら、回復魔法が届くぎりぎりの位置で待機だ。


 距離を詰めてゆく。

 大胆に、そして慎重に。


 邪黒竜が動いた。

 爪と牙でクシュリナーダに襲いかかる。


 さすがに強い。持ち前の速度と体術でしのいではいるものの、ごりごりと耐久ゲージが削られてゆく。

 一撃が重すぎるんだよな。


 そして僕ものんきに観戦している余裕はなかった。

 唸りをあげて風を切った尻尾が叩きつけられたからである。

 間一髪で回避してバックステップを刻む。


 くっそう。

 攻撃が多彩すぎる。

 せめて寄せ手が三人いれば死角をつけるんだけど。


 と、はなはだ建設性を欠く思考が頭をよぎったときだった。


「援軍、ただいま到着でゴザル!」


 かん高い声が響き、僕とクシュリナーダの等距離の地点に何者かが現れる。






 黒装束に青い目、右手には小刀。

 そして頭に猫耳のカチューシャをつけた少女だ。

 左手がかすむと、何本ものクナイが邪黒竜の胴体に突き刺さる。


 ニンジャである。

 エキスパート系の役割(クラス)であるレンジャーの上位役割(クラス)だ。

 転職はレベル四十からだから、このプレイヤーはすごく強い人である。


 ただ、なぜだろう。


「パーティー申請をするでゴザル!」


 まったく強そうな感じも、すごそうな感じもしない。


 だって、猫耳ニンジャガールだよ?

 どこからつっこんで良いのかわからないよ。


「了承よ! 私はクシュリナーダ! よろしく!!」

「マサムネでゴザル!」


 猫で少女でニンジャで名刀だ。

 どんだけ盛れば気が済むのだろう。


「僕はウリエル」

「大天使でゴザルな! うぷぷぷっ!」


 笑われた!?

 なんだこの屈辱はっ。


 むっきー! この恨み、ドラゴンにぶつけてやる。

 右手で剣を構えたまま左手で拳銃を抜き、至近距離から尻尾に撃ち込む。


 不快げに吠えた邪黒竜がばさりと翼を広げた。

 そのままふわりと浮き上がる。


 ブレスか、と、一瞬警戒を強めるが、どうやらドラゴンは逃亡を選択したらしく、そのまま飛び去ってしまう。


 追撃しようと杖を掲げたシオウが、ため息とともにそれをおろした。

 クレバーな判断だ。


 この状態から一発二発くらい魔法を当てたところで、それで倒せるわけではない。

 魔力は温存しておいた方が良いだろう。

 戦いはまだ先があるのだから。


「頭の良い奴でゴザルな。ボクが加わって前衛が三人になったことで、勝算が一割くらい下がるだろうって計算ができるようでゴザル」


 かちりと小刀を鞘に収めたマサムネが、えっらそうに論評する。

 ボクっ娘だったよ……。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ