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◆ 24・寝ても起きても地獄(後) ◆


 ルーファの反応が怖すぎる。

 笑顔、無言。



 そ、そうだよね? 愛する天使娘が堕天使になってたらショックだよね?! 分かる、分かるよ、でも言い訳くらいはさせて欲しい。今か? 今、話せるか? いやいや、ミランダを思い出せ。そうだよ、言い訳が死に結び付く世界線も山ほどあったじゃないの!



 ごくりと唾を飲み込む。

 彼の一挙手一投足に気を配る。



〈だいじょうぶ、ルフスは怒ってないみたい。計画通り? みたい〉



「え?」



〈ルフスは『想定内』って言ってるよ?〉

 どういう事? 想定内って、アーラの堕天が? なんで??

 つか、アーラ、めっちゃ便利じゃん!!!!



 心の中にもう一人がいる感覚は慣れないが、心が読める天使の存在は有難い。今後は相手の行動を先回りできそうな能力だ。


「また……時間が減ったな」


 ルーファが呟いた。



 時間? 悪徳計のこと?



「ちなみにチャーリー、お前が『他の』天使の成りすましじゃねぇっていう証拠は?」

「ほ、他?!」


 思ってもみなかった言葉に素っ頓狂な声が出る。



 他ってなんだ。他なんてあり得るの? 天使が身体を乗っ取るパターンもありえたって事? ……確かに、人間の魂に混ぜ込んだりとかしちゃえるわけだし? ありえるのか?

〈そうなの?〉

 いや、分かんないけど。むしろ天使なんだから、あんたの方が詳しい気がするんだけど。

〈分からないの〉

 役立たずじゃん!!!!



 ルーファは自分の事を元勇者で悪魔でも上位の存在だと言っていた。敵に回すべきではないし、確実に仲良くやっていくべき存在だ。


「本物のシャーロット……もちろん、証拠はあるわ。どうぞ、シャーロットクイズを出して見なさいよ! 全問正解してやるから!」

「いや、ミランダに会え」


 ミランダ――その名に戦慄(せんりつ)する。

 彼女は私のメイドで、現在は悪魔もどきになっているはずの人物である。

 暗闇時間が長かったせいで忘れていたが、私は悪魔との取引時に生贄(いけにえ)として差し出している。彼女が本物の悪魔として復活するには私の命が必要であり、それが悪魔ルールともいうべきものだ。



 つまり、ミランダこそ私って人間がシャーロットでないと困る感じ? 悪魔ルールが私にも働いてるかミランダがジャッジするって? 物騒通り越して下手したら死ぬじゃん……。

〈ミランダは、優しい人だったよ?〉

 ……え? あんたミランダに会ったの?

〈うん、おうちにいるよ?〉

 ……そ、んなぁ……。

 


 家に帰れば自動的にミランダとのVS状態が始まるのだと思えば、頭も抱えたくなる。どちらにしろ、ルーファの提案を断る方法もない。今は少し落ち着いて見えるが、下手をすれば先ほどの稲光のような彼の力に消される可能性だってある。

 勿論、飢餓状態にならない為にも殺す選択肢は限りなく薄いのだろうが――。

 こうして相対しているルーファの本心が分からない。


「あ、会いましょう……。代わりに、守ってくれるなら。最低限でもいいので!」


 前にミランダからは助けられないと言われている。今度も同じ答えが返ってくる事を覚悟していた。だが、ルーファは優し気に微笑む。


「お前が、本物だったらな? 最初の一発は防いでやるよ」



 一発……?! たったの?


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