◆ 25・悪魔と対峙(前) ◆
戦地が一歩一歩近づいてくる。
いや、死地だ。
ルーファの希望通り、私はミランダに会う事になった。アーラの言うように彼女が実家にいるのなら、遅かれ早かれ対面はなされてしまうのだから、逃げても無駄なのだ。
今なら、初回の一発分はルーファの保護が約束されている。
逆に安全かもしれない。
何より、武力も揃っている。帰るにあたってスライ先輩とライラは食い下がったし、説明も求められた。時間が惜しいが小一時間、嘘を織り交ぜて説得したし、後ほど詳しい事情説明をする事も約束させられている。
〈ミランダ……そんな恐ろしい人だったなんて……っ〉
お父様の政敵が送り込んだ殺し屋っていうの、嘘だからね?
〈そうなの?〉
私の中で、心優しい天使アーラが戸惑っている。
ちらりと隣を見れば、フローレンスとルーファがいる。どちらも張り付けただけの笑みだ。フローレンスはあんな目にあわされたというのに、ルーファに対して怯える素振りもない。
一人でも仲間が欲しい現状においては有難いが、やはり感性はぶっとんでると言わざるを得ない。
なにせ、頭をたたき割られかけていたのだ。今も彼女の額や頬には痣と血がついている。
「フロー……大丈夫なの?」
念のため問いかければ、彼女は嬉しそうに頷く。
「はい、姉様。どこも痛くありません」
本当に?!?! 見た目、かなりボロってますけど?
〈うん? フローレンスはだいじょうぶみたい。本当に痛くないって言ってる。あ、そういえば……ミランダはシャーロットに腹を立ててたよ?〉
知らずにいたかった話である。
顔を合わせた瞬間に殺される危険は、ルーファのお陰でないにしても、だ。二撃目、三撃目と生き残る方策が必要だ。
悪魔もどきとの戦闘になるのだ。
ね、あんたって昔、ルーファと勇者業してたんでしょ? その時って具体的にどうやって悪魔とか倒してたの? 魔王倒したりしてたって事は悪魔なんて余裕よね??
〈どう……って言われても……。まだ記憶がぼんやりしてるところがあるの。たぶん色々おかしいのかも? なのかな?〉
いや、私には分かんないって。
〈あのね、わたしね、『この』記憶が戻るまでルフスの心、読めなかったんだ。今は少しだけ見える。伝わってくるの……ルフスは約束を守ってくれる人だよ、安心して、シャーロット〉
やはりアーラは言うほど役には立たない。彼女の言う『この』記憶とやらもどんな記憶なのか分からないし、聞くほどの時間も余裕もない。
「まぁ、とりあえず……先輩は二撃目が出る前には結界をお願いします。ライラとフローは殺れるタイミングでガンガン攻めて、私は狙われてる張本人だから距離を取って隠れますとも」
私の作戦に、スライ先輩が呆れ声を出す。
「すでに、本来のシャーロット・グレイス・ヨークじゃないか」
「ええ、いかにもチャーリーですわ」
親友ライラも肩を竦めて応じた。
いやいや、チャーリー=性悪の意味で使わないで欲しい。これは合理的な作戦でしょう?
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