泣くくらいなら、最初からするな。
ベルンは泣いてしまってどうしようもなくて、おば様は諦めて私を見た。
「エリザベスはベルンのことが嫌いなの?」
「嫌いじゃありません。好きじゃないだけで」
「それはこれから先も変わらないこと?」
「今回のことがなければ……」
「そうね、そうよね……もう取り返しはつかないかしら?」
そう、ベルンの方に視線を向ける。
「おば様、私、子供のころからずっと、ベルンがアリスを選ぶって知ってたんです」
「知っていた? それは未来が見えると言うこと?」
「違います、理由は言えませんが、知っていたんです。学園の最終学年にアリスが現れて、ベルンと親しくなって私が婚約破棄されるって」
ベルンが顔を上げた。びっくりした顔をしてる。
「べス、だから婚約解消したかったの?」
「そうよ。最初から自分を裏切ると分かっている人間を好きになるほど、私はお人よしじゃない」
「僕は絶対べスと婚約解消なんてしない!」
「そうかもね」
そうだと思う。ベルンは一貫して婚約解消を認めてない。
「ベルンは子供のころから、私のことを好きみたいだったし、私のためにいろいろしてくれたもんね。だから私、もしかして、私の知っている未来とは違う未来になるのかも、って期待した。ベルンはアリスを見ないかもって」
「……」
「でも、一番大事な時、ベルンは裏切った」
「あれは」
「ベルンが私が下位クラスに落ちることを知らなかったら……知っていてもそれをちゃんと教えてくれていたら、まだ良かった。知っていた上に、あの時少しも言い訳しなかった。もうあの時で、ダメだった」
目を閉じる。ベルンのように、涙は出ない。
自分の知っているゲームの世界とは、全部が違っていたのに。
どこかで、ヒロインのアリスを幸せにしようとする力が働いていた。
「結局、アリスが現れた。笑っちゃった。あぁ、やっぱりなって」
「べス……ゴメン。本当にゴメン」
「私も、ベルンのこと試していたんだとは思う。ベルンがどう行動するかって」
ベルンがまた泣きだした。
泣いたってもうしょうがないのに。
「もっと早く、無理矢理でも婚約解消しとけばよかったね。そしたらベルンとアリスも、おじ様も、私も、皆幸せだったね」
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
次話で最終話になります。
最終話は本日14:00に予約投稿しています。
最後までよろしくお願いします。




