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転生令嬢は現状を語る。  作者: 水瀬


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21/22

泣くくらいなら、最初からするな。

 ベルンは泣いてしまってどうしようもなくて、おば様は諦めて私を見た。


「エリザベスはベルンのことが嫌いなの?」

「嫌いじゃありません。好きじゃないだけで」

「それはこれから先も変わらないこと?」

「今回のことがなければ……」

「そうね、そうよね……もう取り返しはつかないかしら?」


 そう、ベルンの方に視線を向ける。


「おば様、私、子供のころからずっと、ベルンがアリスを選ぶって知ってたんです」

「知っていた? それは未来が見えると言うこと?」

「違います、理由は言えませんが、知っていたんです。学園の最終学年にアリスが現れて、ベルンと親しくなって私が婚約破棄されるって」


 ベルンが顔を上げた。びっくりした顔をしてる。


「べス、だから婚約解消したかったの?」

「そうよ。最初から自分を裏切ると分かっている人間を好きになるほど、私はお人よしじゃない」

「僕は絶対べスと婚約解消なんてしない!」

「そうかもね」


 そうだと思う。ベルンは一貫して婚約解消を認めてない。


「ベルンは子供のころから、私のことを好きみたいだったし、私のためにいろいろしてくれたもんね。だから私、もしかして、私の知っている未来とは違う未来になるのかも、って期待した。ベルンはアリスを見ないかもって」

「……」

「でも、一番大事な時、ベルンは裏切った」

「あれは」

「ベルンが私が下位クラスに落ちることを知らなかったら……知っていてもそれをちゃんと教えてくれていたら、まだ良かった。知っていた上に、あの時少しも言い訳しなかった。もうあの時で、ダメだった」


 目を閉じる。ベルンのように、涙は出ない。

 自分の知っているゲームの世界とは、全部が違っていたのに。

 どこかで、ヒロインのアリスを幸せにしようとする力が働いていた。


「結局、アリスが現れた。笑っちゃった。あぁ、やっぱりなって」

「べス……ゴメン。本当にゴメン」

「私も、ベルンのこと試していたんだとは思う。ベルンがどう行動するかって」


 ベルンがまた泣きだした。

 泣いたってもうしょうがないのに。


「もっと早く、無理矢理でも婚約解消しとけばよかったね。そしたらベルンとアリスも、おじ様も、私も、皆幸せだったね」

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。


次話で最終話になります。

最終話は本日14:00に予約投稿しています。


最後までよろしくお願いします。

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