それを知らないって、かなりやばい。
おじ様が連れていかれて、新しいお茶とお菓子が用意された。
「おば様、おじ様が犯罪者ってどういうことですか?」
「言葉のとおりよ」
「だって、おじ様って」
「ベルンもだけど、エリザベスももっと視野を広げるべきね。って言うか、常識を勉強しなさい。この国の王は私よ。あの人は入り婿で、お飾りなのよ」
えー、知らなかった。
「勝手に王印押すなんて、ありえないわよね」
おば様の目が笑っていない。
「アリスはいい子だったみたいね。ベルン」
「……」
「ベルンの言った通り、あの子はクラス全員と同じように仲がいい。でも、ベルンのことは狙っていたみたい。でもそれはベルンも悪いのよ。分かる?」
「……」
「まず、エリザベスの噂を否定しなかった。いつもクラスの中でアリスと一緒に居た。そして、交流パーティーでアリスをエスコートしてしまった。ドレスまで準備したんですって?」
「アリスが、思い出がほしいって言ったんだ。この学園を卒業すれば、また庶民になる。一度でいいからちゃんとしたパーティーでエスコートされたいって。先生たちも、クラスみんなも、父上もそうしてやってほしいって、だから僕は」
がっくりと肩を落としたまま、ベルンが言う。
「そう、でも、あれはダメよ。あれは公式なパーティーなの。世間に貴方の意思を表すものだもの。せめてどこかのお家のパーティーだったらまだよかったのに」
「そこまで考えていなかった。授業の一環だからって……」
「どうして外交官が呼ばれると思うの? たかが学生のパーティーに!」
バンッとテーブルを一発。
「それに、アリスの思い出作りがそんなに大事なら、エリザベスの思い出はどうでもよかったの?」
「あ……」
「エリザベスも学園は今年が最後なのよ? それがこんなことになって……」
おば様はそう言って首を振った。
いやいいんですよ。私は、無駄にドレスも買わなくてよかったし、こうしてベルンと無事婚約解消出来たし。新天地もみつかったし。
「ベルンは、エリザベスの体だけあれば、エリザベスの心も、エリザベスとの思い出もいらないのね」
「ちがう、そんなこと、ない」
「そうかしら? 学園最後の思い出、エリザベスはこの一年嫌な思いしかしてないのよ。その間、エリザベスは貴方に何度婚約解消を申し出たの? 噂の否定をしたの? ベルンはそれになんて答えたの?」
ベルンが泣きだした。
「エリザベスはきっと、学園の話が出るたびこの一年を思い出す、それも嫌な思い出をね」
おば様はまたため息を漏らした。




