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転生令嬢は現状を語る。  作者: 水瀬


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15/22

ベルンの魔法は、おば様譲りです。

 おば様の部屋には、お茶の準備がしてあった。


 席は三つ。

 おば様と私と、ベルン。

 そして、おば様の後ろにおじ様が椅子に縛り付けられていた。猿ぐつわ付きで。




 見なかったことにした。





「ベルン、貴方が持っているその紙は何?」


 席についてすぐ、おば様はそう言った。

 ベルンがのろのろとテーブルに紙を広げる。


「婚約解消? ベルンが用意したの?」


 おば様の顔がゆがむ。

 雷が落ちそうだったので、慌てて手を上げた。


「おば様。それは、私が用意しました」

「エリザベス、貴女……」

「私、最初からベルンの婚約者になんてなりたくなかったんです。だから婚約するときに父に頼んで用意してもらいました」

「でもこれ、ちゃんと王印が……」

「おじ様はご存知です。これをもらうことを条件に、婚約を承諾しました」

「べス!」


 ベルンが立ち上がった。

 ブルブルと震えて、いかにもショックって顔をしている。


「そう……そうだったのね」


 おば様が、ため息と共に顔を伏せた。

 ベルンは立ったままだし、静まり返った部屋はひどく居心地が悪い。

 暫くして、おば様がようやく顔を上げた。


「ベルン、名前を書きなさい」

「嫌だ! 僕はべスを!」

「書きなさい」

「嫌だ! 絶対に嫌だ! 僕はべスと結婚するんだ!」


 バンッとテーブルを叩いて、ベルンが叫ぶ。

 ベルンの前に置かれたカップが揺れて、紅茶がこぼれた。

 これも、今まで見たことのないベルンの姿だ。


「じゃあ、どうして、アリスを選んだの?」


 私は、ベルンを見て聞いた。

 久しぶりにちゃんと見たベルンは、すっかりやつれていた。

 髪はぼさぼさだし、無精ひげもあった。

 やっぱり男の子なんだね。


「それは……」

「それは?」

「……そうしないとべスと結婚させないって言われて」

「ベルン、それはどう言うこと? 誰に言われたの?」


 おば様、ベルンと同じ氷魔法を使うんだけど、足元から冷気が……私は気持ちいい

 けど、足が床にひっつきそう。


「父上」

「……そう」


 ビシッ、っておば様の前にあったティーカップが割れた。

 おじ様はうめき声を上げながらガタガタと椅子を揺らしてる。

 おば様が立ち上がっておじ様の方へ振りかえった。


「あなた。洗い浚い吐いてもらいますよ?」


 そう、おば様は一歩踏み出すと、おじ様は椅子のままひっくり返った。

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