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ジョンという死が決定しているモブに転生した俺にとって、これから起こり得る事件にはできる限り手を打ってきた。
で、今日も一つそれが実ったといえるだろう。
以前、ある条件を飲んでもらう代わりに資金提供を行ったアダルトビデオの監督と、彼の引き連れるスタッフたちが、三本目にして偉業を成したのだ。
ちなみに、その条件というのはシンプルだ。男女関係なくウィルスに感染し、もう二度と戻らない。というもの。
最初は監督が撮影していたシリーズの延長として製作された。それから、対象年齢を広げたものして単館上映を行った。
そこそこのヒットがあり、三本目の新作が全国的にロードショーされることになったというわけだ。
「世界中の青少年へのサービスシーン、お父さんお母さんへのサービスシーン、そして、あなたへのサービスシーン。それがこの作品の全てですよ」
そのように監督は俺に語った。
「感謝してるよ。これだけ沢山の人に見てもらって、ゾンビの存在を何となく啓蒙することができた」
「そのゾンビについてですが、次の作品で、ハリー組は具体的なものにしていきたいと考えているんです。今までの作品では、どちらかといえば少子化問題に対する問題提起に止まっているというか」
なるほどね。やはりゾンビものとして世界に認識されていないからこそヒットできたというわけか。
だが、ゾンビ化に近い現象で人間同士での争いが起こるという文脈は、多くの人に啓蒙することができたと言えるだろう。
カルト的な人気も出てきたしな。
「ゾンビは、もしかすると『世界の不条理』によって、作品は興行的に失敗するかもしれない。それでもやるというなら、今回分の利益も全てそこに還元しても構わないが、どうだ?」
「はあ。どれだけ良い作品を撮っても、広告宣伝にカネをかけても、『不条理』によって握りつぶされるということですか?」
「そうだ。撮影すら困難になる可能性がある。ゾンビは世界の不条理で、Xデーになるまで世に出せないかもしれない」
「まさか」
「俺はその危険性をずっと監督に指摘してきただろう。あなたの頭の中では、俺が伝えたゾンビとほぼ同じものが想像できているのだろうけど、それはおそらく稀なケースだよ」
「誰かが始めるまで、誰も思いつかなかった、それだけのことだと私は思ってるんですがねえ」
「直接的にゾンビを扱うなら、それこそニッチ分野で小さく始めた方がいいのかもしれない。もちろん、大作に取り掛かってみてもいいけどね」
「グヘッ」と監督が気持ち悪い笑い方をした。どうやら、アダルトビデオの方面で何かいい思いつきをしたんだろう。
「どうした?」
「とりあえず、その『世界の不条理』を体験してみようと思います。……やはり病院だな。女性看護師、それもバストとヒップ以外は肉がこそげ落ちていても大丈夫だろう」
監督がぶつぶつ言い始める。
こうなると、もう素人にはついていけない領域だ。
「じゃあ、よろしく頼む。金が必要だったら言ってくれ」
「あ、ああ。ありがとうございます。ではまた」
俺は通話を終え、インテグレイテッド・デスクから離れて大きく伸びをした。
「ジョニーさんだと思ってびっくりしました。まさか、あの映画の制作会社に資金提供をしていたのがジョニーさんだったとは」
「次はエッチなビデオを撮るんだってさ」
「出演するといろんな人に見られてしまうんです。ジョニーさんは私だけの恋人で、だからこそ他人に見せたくないので出演しないでください」
「あたりまえじゃん」
さすがに竿役はネタキャラのモブ以上に辛いものがあるからな。




