修行
仕事も学業も大変だが、今生きていくのに必要なことなので頑張ってる。ジョンです。
俺は死なないためにいろいろ活動しているわけだが、やはり個人の戦闘能力も鍛えておくべきだとは考えていた。
で、俺はシーガル氏に頼んで殺人術を学んでいるのだ。
習い事としては結構ニッチでシーガル氏自体も胡散臭さが半端ではないが、実際役に立ちそうな気はしている。
「俺のオススメのナイフはこれだ。両刃、フォワードグリップで普通に持っても使いやすいが、重心の位置が優れていて投擲でも有利」
「なるほど」
シーガル氏が人間のシルエットが書かれたタタミに向かって三本のナイフを投げた。首、目、心臓の位置にそれぞれ突き刺さっている。
「まずはこれをできるようになってもらう。お前の想定している相手は、あまり知能が無く俊敏に動くこともないようだが、実戦が果たして本当にそうなのかわからない。実際に戦場に出てもらうことも検討している」
いや、俺は護身術的に使いたいだけで、戦場で人を殺したいわけでは……
「真の護身とは、気付かれる前の暗殺に他ならない。ナイフ術がある程度板に付いてきたら、今度は音消しの立ち回りについても伝授する」
とまあ、なんかものすごく血に飢えた先生ではあるが、もう半年くらいは通っているのでなかなかに戦闘技術は上がってきたと思う。
特に俺が良いとされているのは、身体能力強化ウィルスで体幹の筋肉が柔らかくしなやかであることだ。
ちなみに基本的な鉄砲の撃ち方については履修が終わっている。先生は基本的にスナイパーライフルで絶対に相手から届かない位置から戦うことを推奨していたが、俺はそれがいつもできる状況じゃないと想定している旨を伝え、体術と銃撃を組み合わせた戦闘技術を教わったのだ。
「数の暴力にはどう対抗していけばいい?」
「戦うな。逃げろ」
やはり、個人でどうにかできる問題じゃないか。大量破壊兵器の開発、これも行っていったほうがいいのかもしれないな。条約に引っかかるくらいの規模ではなく、もう少し出力を押さえる感じでさ。
俺は先生と組手を行い、合図でナイフをタタミに投げる。
これがもう、全く刺さらない。ダーツみたいに狙って投げれば何とか刺さるんだけど、あらゆる姿勢からとなるとかなり難しい。
「刺さり方は分かっているだろう。繰り返し練習するだけだ」
「そうだよな」
「お前の想定する相手、ゾンビだったか。それが本当に蔓延る世界になったとしたら、俺の殺人術に感覚的なズレが生じるように思う」
「というと?」
「急所を刺したが、経験上とは反応が異なるみたいなことだ。そのズレは必ず命取りになる。正直お前の気の狂った未来への展望は胡散臭くてあまり信じてはいないが」
胡散臭さなら先生のほうがヤバいからね!?
「先生はそう考えててもいいよ。俺が生き残るためにやってるんだ」
「いや。俺も対人戦闘だけの理論には飽きてきたところだ。お前の想定をある程度吸収して、理論を拡張していく」
「ふうん」
この日の練習での刺さる確率は20%くらいだった。まあ、まだ時間はあるし、自分を高めていくことにしよう。
帰宅すると、マリアンが俺を出迎えてくれた。
彼女の風呂でのマッサージはとても良く効く。これで朝までぐっすりさ。




