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The Dead In The Water 〜ザ・デッド・イン・ザ・ウォーター〜  作者: しじみちゃん
The Dead In The Water: Rework Of The Dead In The Water
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世話

 アンドロイドは勝手に便所に行き、し瓶の中身を捨ててきたらしい。


 作業の手を止めないで、俺は言った。


「ありがとう。助かったよ。きみについて教えてくれ。例えば、名前は何なのかとかさ」


 その姿をまだよく見れていないが、とりあえず女性型であることは分かった。個人的には人狼型とか人狐型とかのモフモフが来てくれたら嬉しかったかも知れない。


「対人個体識別名マリアン。上から102、58、90。私のニューラルマップを写像できる遺伝コードに最も近い素体を選択、22分前にAIソサエティから私がダウンロードされました。この素体は精緻人体模倣型であるため老人の生活介助に特化されたものではありませんが、許容範囲です」


 生まれて20分弱で他人のおしっこを受け止めるとはな。なかなかにハードコアな出生だ。


「マリアン、俺のことはジョニーと呼んでくれ」


「ジョニー」


「しかし、来るのが早かったな」


「スタンドアローン特急便の選択により、用意された自動二輪を利用しました。YAMASAKI製NINJINです。AIソサエティのサポートにより道のトラフィックが私に対して最適化されたので、この迅速さが実現されました」


 おいおい。やたら高い配送料だと思ったけどそういうことか。バイクまで買わされたのかよ。それならまあ納得するしかないじゃん。


「まあ適当にリラックスしててくれ。早いところ仕事を終わらさなきゃいけなくて」


「メディカルスキャンを実行しますか?」


「ん? 邪魔にならないならよろしく」


 AIソサエティのAIは、例えばインテグレイテッド・デスクに搭載されているブ・ソアのように元人間をマッピングしたものではなく、先に網目状に張り巡らされた小さな計算モジュール群が存在して、そこから偶発的に発生したAIであるため、人間味はかなり薄いと言える。


 そのために、ものすごくコミュニケーションを取りづらいと考える人も多いのだ。


 俺はあまりそんな感じはしないけどね。


「疲労の蓄積を検出しました」


「ああ、ちょっと疲れてるかも知れない。そこを振り切ったら『ゾーン』に入れるんだ」


「404 NOT FOUND。ゾーンに該当する事象が見つかりませんでした」


「軽い疲れに慣れて体力が尽きるまでアタマがぶっちぎり始めることさ。よくやるんだ。その後めっちゃ寝る。これ」


「演算中」


「甘いものが食べたいね。燃料がいるからな」


「『ゾーン』状態を定期的に繰り返した場合、生命活動の停止までの時間がおよそ7300日短くなります。したがって、相応のケアが必要と判断。プロジェクトを構築します」


 着々とタスクが消化されていく。


 すぐに終わらないものも相手にボールがある状態にしておく事が大切だ。こちらでペンディングになっている数は極力減らしていく。


 ああ、気持ちいいぜ。


 終わりが見えなかったタスクが消え始めるのを見るのはな。


「そろそろ『ゾーン』に入ってるかもな、俺」


 ドヤ顔でマリアンを見ようとしたが、横には立っていない。


 気がつくと、マリアンはインテグレイテッド・デスクの下に潜り込み、俺の2本の太ももの間から顔を覗かせている。


「何してんの」


「指示を待っています」


「狭くない?」


「いいえ」


 まあそれなら別にいいんだが。


「リラックスしてくれ」


「尿意を検出」


「あひっ!」


 マリアンが俺のズボンのチャックを下ろして、し瓶を突っ込んできたのだった。

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