開戦
ジョニーと呼ばれ、転生によって天才児の名をほしいままにしている男、俺。
その俺は今、自分がゾンビ化する運命を回避するために、頑張ってゾンビの発生を抑えたはずだった。
しかし、目の前にあるテリーという男の死体は、ビクビク動きながら徐々に俺へと近づいてきている。
「なんだッ!」
眼前の男、こいつはこのまま放っといちゃいけねえ存在だ。
このバランス感覚を全てにおいて優先するぜッ!
なぜだろうか。俺は今、奮い立っている。
勃ち昇る生への渇望が、全身の筋肉に血を送り込んでいる。
瞬間的に頭にインベントリの中身が現れ、それは空っぽだった。何も武器を持っていない。
だが、視界の下に不自然に現れた両手。これが俺の今の武器。徒手空拳である。
俺は確実に生き残る。これは決定事項だ。
「うわああああああああ!」
俺は叫びながら、テリーの腕を蹴飛ばす。
強化された俺の身体能力によって、思いのほかパワーが出た。
エレベーターの側壁に体を強打したテリーは、そのまま動かなくなるかと思いきや、ずるずると壁に手を伝って立ち上がった。
気味の悪いうめき声を上げながら、両手をこちらに伸ばして歩み寄ってくる。
The Dead In The Water。このゲームは、ガンシューティングだ。そもそも鉄砲がなければ始まらないバランス。
素手はネタか縛りプレイでしか使わないようなレベルのもの。
だが、ノックバックさせることはできる。
「ハッ!」
俺はパンチを一発食らわせ、怯んだ隙に6Fと閉のボタンを押した後、すぐエレベーターから飛び出した。
閉まれ、閉まれ、閉まれ!
あいつはおそらく考える力がないはずだ。だから、このエレベーターから出ることはできないッ!
思惑通り、俺はエレベーターの扉を閉めて、上へと強制送還することができた。
「危なかった」
しかし、なぜあんなのが大量に発生したんだろうか。
俺はまだ興奮状態にあった。
生き残るなら、武器を探せと本能が言っている。
俺はいろいろ調べているメアリーの元に駆け寄って、その膝に乗って抱きしめた。
「どうしたんですか?」
荒い呼吸を彼女の服の繊維に押し付ける。
俺は戦った。
あいつらがここにうようよいるって? 冗談じゃない。
でも、メアリーは守りたい。
「テリーは上に送った。でも多分死んでない」
メアリーが頭を撫でていた。
「あいつらの倒し方を調べないと。俺たちで、ここを脱出しよう。きみと別れたくない」
「そうですね。そうしましょう」
なんだか慰められているみっともない子どもみたいになってしまったが、俺は奮い勃っているのだ。
始まった。俺の戦争が。




