冷凍
ジョンという転生者の俺は、ゾンビ化して死ぬのを回避するために、今、ゾンビウィルスが開発されないように研究に口出しをして頑張っている。
研究自体はかなりスムーズに進んでいるのだ。経営陣のパワハラも食い止めることができた。あとは完成させて、プロジェクトを完了させるのみ!
「これがその細胞人体です。考える機能や意識が無いので、人間の細胞だけの人間です。模型なので細胞人体模型と言う人もいるんです」
とメアリーが言った。
ここは人工島研究施設の8F、実験に使う資材や実験動物が保管されているフロアだ。
二人きりなので、俺たちは手を繋いでいる。
「へえ」
「生きてないので死んでるんですが、死体ではありません。細胞を組み立てただけなので」
「で、複数体の細胞人体が、この冷凍睡眠装置で保管されていると」
「はい。冷凍しているので凍っています。細胞人体は生きていないので死んでいるため、代謝を発生させるために代謝させるための装置を使うんです。生命活動装置です。冷凍睡眠装置では、これを付けなくてもそのまま保存できるんです。冷凍するので」
「難しいな」
「私が簡単に説明しすぎたため、難しかったのかもしれないです」
「ふむ」
まあ、かいつまんでみると、この人間を再現した細胞の塊は普段冷凍保存されていて、薬剤を投与して経過を観察したりっていう実験に使う時だけ、細胞たちを動かすための装置を使う、ということなのだろう。
「イチャイチャしているのに会社にいるのは、仕事だからですか?」
「好きだからだよ」
即答すると、メアリーは少し照れたらしい。
悪いな。俺はガン攻めしていくタイプなんだ。
「仕事をしている時は、お給料が発生しているのに、仕事をしないでイチャイチャしてる今も発生してます。恋をしている気分。つまり、恋愛なんです」
「なるほど」
メアリーは誰かがここにくると仕事モードになって素っ気なくなる。そうならないように、俺は二人きりの時間を作ったのだった。
「これでここの説明は以上なのか?」
「はい。細胞人体が最後だったので、終わりです」
「どうする? まだ時間は余ってるけど」
「抱きしめるためにハグしたいです。向かい合って座るやつもしたいので、椅子に座りたいです」
「うん」
説明してもらうために取っておいた時間が半分くらい余ったので、俺たちはこんな感じで薄暗いフロアの中で暇を潰した。
オフィスに戻ると、マリーが俺の報酬に関していろいろと教えてくれた。
なんか来月付けで正社員になるらしい。
いいのか。俺4歳だぞ。
「ジョニーん家のダイナーの改修工事が始まったそうよ」
「やれやれ」
「知ってる? ボブの実際のとこ」
「知らんけど」
「それがね、どうもジョニーのお婆ちゃんを狙ってるみたい。困ったご老人だよ」
「数寄者だなあ。マリーは言い寄られたりしなかったのか?」
「彼の趣味じゃないでしょ。お腹とか胸の皮がぶよぶよで垂れてて、掴めないと安心できない人なんだから」
「なるほど」
ボブは最近、たまにしかここに顔を見せに来ないが、わりと噂は耳にする。妙に発言力の強い専務だからね。
しばらくはこの研究施設に対する見識を深めて、今後トラブルが起きてもなんとか収められるようにしていこう。
もちろん、メアリーとの仲も深めていかないとな。




