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〈第16-2話〉行列

魔将の正体ではないかというギャラクスの部下を見つけるため、ラグナスを目指すクロスレギオンズ。

一度王都に戻ってきたアリスたちは、そこで新たな戦い方を模索しているロイヤル最高司令官、イリス・クローディアに会った。彼女の新たな戦闘術「法術」はまだまだ未完成だが、完成すれば従来の戦闘が大きく変化するのではないかとアリスは心の内に思った。

そして、飛行船に乗るために港に立ち寄ったが、そこは行列ができているのだった……

……長い……まさか、一時間がこんなに長いとは……

徐々に前には進みつつあるが、行き先を知ることができる掲示板すら見えない……


「……お腹すいたな~」


フレイがぼやく……一応、私たちは食事を済ませているのだが、いつもドカ食いしてる彼女にとっては少なかったようだ。


「……フレイ、ちょっと待っていてくれ。即席で錬金する」


「ふぇ?」


アルバスは左手に魔導書を取り出すと、ページを何枚かめくる……

そして、目当ての物を見つけたのか、右手に袋を取り出した。


「アルバス、フレイのことになると、口じゃ言わないけどすごく優しいよな」


「……なんで私に言うのよ」


でも、ハインドの言うとおりだ。「気がある」っていうのだろうか?

私にはあまりよくわからないけど、二人の仲がいいのはなんとなく分かる。


「……できた」


彼の右手には、何やら四角形の小さな菓子のようなものがある。


「……アルバス、それは何だ?」


「エネルギーキューブっていう食べ物さ。小さいけど、腹は膨れる」


私からしたら理想的な食べ物だ。

形が小さいから食べやすい上に、腹が膨れるなら最小限の時間を使うだけで済むからだ。


「へぇ……」


フレイは不思議そうに眺めると、口に放り込んだ。


「……ねえ、どんな味がするの?」


彼女は、咀嚼しながら味を確かめている……

真剣な表情で食べているその様は、どこかシュールにも思える。


「……? おかしいなぁ、味はあんまりしないよ……?」


不満そうに、フレイは首を傾げている。

……まあ、形状が「カロリーキューブ」に酷似していたからなんとなく察していたが、やっぱり味はあまりしないのか。


「ああ。ソレには栄養のある物しか詰めてないからな。味は期待するな」


「むう……なんか引っかかるなぁ……」


彼女の感覚からしたら、前歯に食べ物の残りが挟まったような感覚なのだろうか……

いや、本人でもないのに、こんな空想をすべきではないか。


「……ねえ、食べ物を食べるってどんな感覚なのよ?」


唐突にシユウがハインドから現れた。

……念のため、冷やかしに備えておくか。


「ええ?……楽しいよ! 一日の中で一番楽しい時じゃないかな?」


「フレイの言う通りかもしれないな。人間の三大欲求の一つでもあるわけだし、私も少なからず楽しんでいるだろう」


「俺も二人の意見と同じだ! 一番かどうかは分からないけど、楽しいな」


私は違うのだけど。

食べた後は眠くなるし、それのせいで集中力が落ちる。加えて、平らげるのが面倒で時間の無駄にも思える。


「そうなんだ。 ボクたちは、そもそも食事ができないからその辺が疎くてさ……」


「え!? 食事ができないの……? それは気の毒だなぁ……」


フレイが眉を八の字にしている。

トリガーはあくまでも武器。食べ物を食すことはできないことは当然だ。

まあ、人間の私にとっては知ったことではないな。


「ち、ちょっと! あたいたちを憐れまないでくれる!? 人間のくせに生意気よ!」


「シユウちゃん。少し言い過ぎじゃないの?」


斧風情が……まあいい。

そうこうしているうちに、列もだいぶ進んだ。


「……あれ?」


おかしい。行き先の掲示板に、いつもなら「〇」が付いているはずのシュタールラントが「×」……

普通なら×が付くことなんて、戦争や経済制裁といった緊張状態の時しかありえないはずだ。


「珍しいな……シュタールラントは何処と戦争をしてるんだ?」


「戦争……そういえば、周りに灰色人種がいないぜ」


なるほど、技術を売りによく来るシュタールの灰色人種がいないのか……。

なんか違和感があると思っていたが、ハインドのお蔭でようやく謎が解けた。


「でも、戦争していたとしたら、すぐにこちらにも情報が入ってくるはずよ」


少なくとも、現地にいるライターが情報をロイヤル国内に伝えるはずだ。

しかし、それもないとなると……謎は深まる……


「もしかして、鎖国をしてるんじゃないかな~?」


鎖国……そうか、その手がある。

以前に鎖国をしていた国はヤマト。あの国は開国する最近まで、内情が分からない謎の国だった。

今思えば、あの国が開国したと同時にシュタールラントが鎖国をしたようにも見えるが……


「フレイの言うことにも一理あるが、それをするメリットは少なくないか……?」


アルバスの言うとおりだ。

鎖国のメリットは、国の内情を探りにくくさせるぐらいであって、むしろ国民にとっては貿易の封鎖といった利益が少なくなるデメリットの方が大きい。よって、国民から反感を買うことに繋がる……

そうまでしていったい何を……?


と、考えているうちに、窓口に着いた。


「四人分でお願いね」


「はい、四人分ですね。1…2…3……4。 どうぞ」


チケットをそれぞれ受け取り、ドッグへ向かう。


「飛行船かぁ……楽しみだなぁ」


「アスカ、列車の時とあまり変わんないよ」


「え?そうなの?アリス」


私たちはラグナス行きの便に乗り込んだ。


客室は列車と大差がない。

というか、飛行船の客室構造が列車に移植されているとでも言うべきか。

違いを挙げるなら、揺れない代わりにエンジン音が聞こえる感じだ。


指定された部屋に移動し、腰を掛ける。


「まあ、ラグナスには明日ぐらいには着くよ」


時間自体は、スノウダートに行くときとあまり変わらない。


「列車と違って早いよな。あんな距離を一日で股にかけるなんてさ」


「そうだな。飛行船は列車のように地面を走る必要がない。よって摩擦が少ないのさ。それに、飛行船はレシプロエンジンで動いているからな」


へ、へえ……アルバスはマニアックだ。

列車の時のみならず、ここでも引き出しを持っているとは……


「アルバス、どうしてそこまで物知りなんだ?」


グリダ……彼のトリガーまでもが気になる知識量だ。


「うん?……まあ、いろんな本を読んでいるからだろうな。所詮は付け焼刃さ」


「マジかよ。……俺は普段本を読まないからなぁ……」


「私も~」


付け焼刃……私からも彼は立派なマニアのように見えるのだけど……。

もしかしたら、私たち三人があまり本を読まないだけなのかもしれないが。


すると、出航の合図である汽笛が鳴り響く。


それから1、2秒して、飛行船は動き出した。

目的はラグナス……そこにギャラクスの幹部がいる……!

ハインド「……今思ったんだけどさ、王都以外にも港を作ればいいんじゃないかな?」


フレイ「そうだね。そのほうがあんな行列を作る必要なんてないよね」


アリス「いや、一つだけの方が入国管理とかの手続きが簡単だし、密航者を見つけやすかったりという利点があるのよ」


アルバス「それに、コストでも一つだけの大きい港をつくる方が、沢山小さな港を作るより安いしな」


「「「へえ……」」」


次回もお楽しみにね。

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