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高く高くその手を掲げて!S・S・S~(セインステッキストーリーズ)よりAct7後編

魔虎は、美琴に別れを告げるが・・

美琴は魔虎と一緒に付いて行こうとする。友達を助ける為に。

魔虎は知った、美琴への想いを、その絆の固さを・・・。

「ううーん。何?」

あたしを揺り動かす手に答えて、ゆっくり起きた。

「あれ?魔虎ちゃん。どうしたの?」

あたしの枕元に立っている魔虎ちゃんに聞いた。

「美琴、奴らが来た。友達が危ないんだ。アタシは、姫那の所へ行く。」

そうあたしに告げる魔虎ちゃんの瞳は、紅く光っている。

「え?魔虎ちゃん、何処へ行くの。待って、あたしも一緒に行くよ。」

あたしは、慌てて飛び起きた。

「駄目だ!美琴は家で待っていろ。アタシが姫那を、連れて来るまで。」

魔虎が、慌てて美琴を止める。

「やーだっ、あたしも魔虎ちゃんと行くぅ。」

走り出した魔虎の後から付いて行くあたしに、

「こらっ、付いて来るな。」

「やだっ、あたしも行く。魔虎ちゃんのお友達に会いたいっ。魔虎ちゃんのお友達はあたしのお友達だって、言ったじゃない。魔虎ちゃんが行くならあたしも行く。」

美琴は、だだをこねて、魔虎を困らせる。

「美琴!今から行くのは、戦場なんだ。ヘタをすると、生きて帰れないかもしれないんだ。そんな所へ、大事な友達を連れて行けるか。」

魔虎は走るのを止めないで、付いてくる美琴に叫ぶ。

「魔虎ちゃん!あたしが大事なら、あたしも魔虎ちゃんが大事なの!魔虎ちゃんが大切なの!だから一緒に連れてって。お願いっ!」

魔虎は、ドキンと心臓が鳴る。

ーアタシが大事、大切だって美琴は言ってくれた。アタシは美琴を・・美琴の事をどう思っているんだ?同じ一人ぼっちの友達?同じ寂しそうな瞳をした友達?・・・そう、それだけ。アタシみたいに人間じゃなくなってしまった者じゃない。運命を背負った者じゃないんだから・・・。-

「美琴っ、アタシとお前は違う。お前は普通の人間なんだ。アタシみたいに人じゃなくなった者と一緒なんかじゃないっ。」

魔虎は、立ち止まって美琴を睨み、右手を高く掲げる。そして、

「美琴、見ろっ!これがアタシ、ネクロマンサーになったアタシの姿だっ!」

右手の先に魔法陣が現れて、中から黒使徒を呼ぶ。

<グルオオオオッ>黒虎が、咆哮を上げ姿を現す。

ーああ、これで美琴とも、お別れだ。ネクロマンサーである姿を、見られてしまっては。もう、離れていってしまう。悲しいけど・・これで・・いいんだ。これがアタシの運命なんだから・・。-

美琴は、目の前に迫った黒虎をじっと見つめていたが、泣き顔になっていく。

ーすまない美琴、恐がらせて。さあ、逃げ帰ってくれ。-

アタシは、赤い瞳に涙を溜めて願った。

ーありがとう、美琴。少しの間だったけど、安らいだよ。お前と会えて・・。でも、ほんとは、別れたくない・・。美琴と一緒に居たい。絆を守りたい。・・けど・・。-

「さよならっ、美琴。」

アタシが別れを告げ、美琴を見た。美琴はすっと顔を上げて、アタシを見た。

「え?」アタシの顔を見つめる美琴は、涙を流しながら微笑んでいる。

「美琴?」その微笑にアタシは驚き、訊く。

「魔虎ちゃん。・・・見つけたよ。あたしと同じ力を持っている人を。あたしと同じ苦しみを持つ運命の人を。」

アタシは理解出来ず、訊き返す。

「何を言っているんだ。美琴は、美琴には、こんな力なんて・・・。」

そこまで言って、アタシは目を疑った。美琴が胸の前で組んでいた右手を、すっと高く掲げたから。

「まっまさかっ。・・・お前・・。」

そう、それは普通の人間には無い力。普通の人間には無い運命。それは・・。

ー美琴、まさか、お前は・・・-

立ち竦み見つめるあたしの前で、美琴の右手の先に巨大な魔法陣が現れ、そこからピンク色に輝くクリスタルが・・・。

ー嘘だろ。あれは・・・。あれはピンク水晶。聖獣界のシンボル。聖獣皇の巫女にしか呼びだす事が出来ないクリスタル。そ、それじゃあ、美琴は。美琴の正体は、水晶の巫女!?-

「そ、そんな馬鹿な。美琴、お前は一体?」

涙を流した瞳の色が、ピンク色に変わりアタシを見つめる。その瞳は温かさの中に、悲しみを湛えている。

「あたしは、水晶の巫女。そして獣皇の血を受け継ぐ者。姫巫女・・美琴。まだ、この体では力を制御出来ません。言霊師の娘よ、あたしの体が力を制御出来るまで、守って下さいませんか。お願いします。」

アタシの心に直接響く声。しかし、この声は美琴の声ではなかった。もっと、そう、大人の美琴の声。

「あなたは誰?美琴のなんなんだ?」

アタシはピンク色をした瞳に、心でじかに訊く。

「マコ。・・・魔虎ちゃん。あたしの大切な友達。これからずっと一緒に居てね。黄金騎士と一緒に、あたしを守ってくれるかな。お願いできるかな、マコ。」

ーやけに馴れ馴れしく言ってくれるなあ。でも、そうだな、悪くないよ。美琴を守るっての。-

「ああ、解ったよ。約束する、守ってやる美琴を、ずっときっと・・な。」

アタシは心で誓った。

「うん、マコ。ありがとう。大きくなったら・・・大人になったら、そのときに逢いましょう。もし、その時まで覚えていてくれたなら。それまで宜しくね、あたしの守護者ガーディアン真子マコ。」

不思議な声は、心の中で別れを告げた。アタシは美琴を見つめる。瞳がピンク色から栗色に変わり、高く掲げた右手の先にあった魔法陣が消え始める。と、

突然美琴が倒れた。

「美琴!」

アタシは、美琴を抱き上げ呼ぶ。

「あ、魔虎ちゃん。あたし?」

今起きた事を記憶していないのか、アタシに訊く美琴に、

「解ったよ、美琴。お前はきっとアタシが守る。守ってやるからな。だから一緒だ、一緒に居よう。ずっと。」

「うん!魔虎ちゃん。」

美琴が嬉しそうに笑う。

ーそう!この笑顔だ。この笑顔を見ていたい。美琴の笑顔の為なら、どんな苦しい事でも高い壁が立ち塞がったとしても、守ってやる。美琴を!-

アタシは、以前に抱いた想いを新たに、決意を固めた。

「立てるか?美琴。」アタシの右手を握って、

「うん、行こう魔虎ちゃん。あたし達の友達の所へ。」

立ち上がった美琴は、力強く言った。

「ああ、行こうぜ。アタシ達の友のところへ。困っている友達を助ける為に!」

ー美琴となら行ける。美琴となら歩める。アタシ達の未来へと。-

アタシと美琴は、手を握り締めて走った。己の運命に立ち向かう為。何より強い絆を心に秘めて・・。

姫那の危機に駆け付ける少女達。

姫那も知った。その少女が如何なる運命を辿るのかを。

そして、出会いは運命を紡ぐ・・・。

次回その手の温もりに・・

次回も読んでくれなきゃ駄目よーん!

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