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高く高くその手を掲げて!S・S・S~(セインステッキストーリーズ)よりAct7前編

人間界で生き抜こうと考える姫那とケンパに、闇からの追っ手が近付く。

醜い姿のダークホラーが・・・。

「魔虎ちゃーんっ、ただいまぁーっ!」

元気な声で呼びかけて、あたしは魔虎ちゃんに抱きついた。

「うわっ、美琴。くっつくなっ!」

あたしのアタックに、拳骨を喰らわせて魔虎ちゃんが怒る。

「いったーいっ。ひどーいよぉ、魔虎ちゃん。」ニコニコと笑いながら、頭を押さえて言った。

「んーっ?魔虎ちゃん、何か良いことあったんだ。」

アタシは何時に無く、機嫌が良い魔虎ちゃんに気付いて言ったら、

「んーっ、なんもねぇよ。」あっさりと否定されてしまう。

「うそうそ。だぁって、そんな嬉しそうな顔してるもん。」

「え?そっそうか?そんな顔してるのか?アタシ。」

ちょっと、焦った様に返事して、

「ふーん、そっか、そうなんだ。・・アタシ、顔に出てたんだ。」

「うん。で?何でそんなに嬉しかったの?」

あたしの質問に、珍しく答えてくれた。

「今日さ、不思議な子に会ったんだ。その子もアタシ達と同じ、ボッチっ子でさ。友達になったんだ。」

あたしに何の躊躇いも無く、そんな話をしてくれる。

「へーっ、お友達に・・。いいなーっ。ねえ、その子って女の子?」

「そー。女の子だよ、ダークホラーのね。」

ーえ?ダークホラーって、魔虎ちゃんの敵なんじゃあ?どうして?-

「魔虎ちゃん、今、ダークホラーって言った様な?・・本当?」

あたしは聞き違いかと思って訊き返す。

「あーっ、本当だよ。居たんだな、ダークホラーにもあんなヤツが。ビックリしたけどな。」

微笑みながら言う魔虎ちゃんに、あたしは良かったと思った。

闘う事ばかり考えていると思ったのに、ダークホラーにも友達を作ってしまえる魔虎ちゃんが、羨ましかった。

「イイなー、魔虎ちゃんって。お友達どんどん作れて。あたしなんて、小学校でもお友達なんて作れないのに・・・。」

あたしが俯いて言うのを、

「美琴には、アタシが居るじゃないか。それにアタシの友達は、美琴の友達なんだぞ。美琴にも会わせてやるよ。姫那に。」

あたしの御でこをちょこんと突いて、魔虎ちゃんが慰めてくれる。

「本当?お友達になってくれるかな?」

「なんだ?美琴。疑ってるのか?」

「え?ううん。疑ってなんていないよ。ちょっと心配になっただけ。」

ーあたしが友達を作れないのは、不思議な力があるから、それを見た子は皆あたしを避ける様になる。変な物を見る目になって、遠ざかる様になる・・。-

「美琴、アタシはずっと一緒に居てやる。きっとお前を守ってやるから。美琴がピンチになったら、何処へでも、例え魔王の元へでも掛け付けてやるから。だからそんな悲しい瞳をするな。」

ー魔虎ちゃん。優しいな、嬉しい。-

「うん。魔虎ちゃん大好き!」

あたしは飛びっきりの笑顔で魔虎ちゃんに抱き付いた。


「んんー。おしっこ・・」

あたしは寝惚けながら、トイレに起きた。あたしの横で、すやすやと、寝息をたててる魔虎ちゃんを、起こさない様に気をつけながら、部屋を出ると、

「あれぇ?」寝惚け眼で、リビングに灯りが付いているのに気付いた。

「お義父さんかな?何のお話をしてるうだろう。」

あたしはそっと聞き耳を立てる。話し声が聞こえた。

<西の魔王が、倒されたそうだ。・・・そうじゃない、仲間にだ。・・・そう、仲間割れだ、その倒した奴が、魔女王を名乗って君臨したそうだ。・・・名?その名は、魔儀気マギキとか言うらしい。・・>

ーふえ、そうなんだ。西の魔王が倒されたけど、今度は魔女王になった。倒したのが仲間だったって事で、何も変わらないんだ。ダークホラーは何も変わらないんだ。-

あたしはふと、魔虎ちゃんの友達の事が気になってしまった。

「明日になったら、魔虎ちゃんに教えてあげようっと。」

あたしは、ベットに潜り込んでまた眠りに付いた。

その頃・・・。

「ねえ、ケン。ワタシなんだか恐い。今夜は何故だか恐いの。・・抱いて、抱きしめて。お願い!」

ワタシは言い知れぬ恐怖を感じて、ケンパにお願いする。

「姫様、今夜の月は紅いですね。何か良からぬ事が無ければいいのですが。」

ケンパも、何かを感じているのか、ワタシを抱きつつ辺りを警戒している。

その2人に闇から近付く者が居た。体中から触手を生やし、呪われた醜い姿の者が・・。

そう、それが魔獣鬼、ダークホラーの本当の姿。

<ザザザッ>

姫那達がいる公園自体がゆっくりと闇に覆われていく。風に雲が流され、月が雲に隠れる。月光がさえぎられて、2人の姿も暗く、黒くなって闇の中へ溶け込んでいく。

「ここに居た。見つけたぞ魔王姫。城へ帰れ、それとも此処で滅ぼしてやろうか?」

突然ワタシの後から声がした。禍々しい声が・・・。

「だ、誰なの?」

ワタシとケンが飛び退り身構えながら声の主に訊く。

「我は、西の魔女王配下、斗牛鬼。さあ、どうする。来るか?ここで滅ぼして欲しいか?選べ!」

「斗牛鬼とか言ったな。今、お前は西の魔女王って言ったが、それは何処のどいつの話だ?!」

ケンパが、恐る恐る訊く。

「ふんっ、魔女王様は、魔女王様だ。他に誰が居る。西の魔国の女王マギキ様だ。」

ーえ?西の・・魔国の・・女王・・マギキ?うそっまさかあの蜘蛛女が・・お父様を・・裏切って・・滅ぼした・・なんて・・・-

「うそっ、うそっ、うそおぉぉっ!」ワタシは、絶叫する。

ー譬え滅ぼされるにしろ、まさかあの女に掛かってお父様が殺されてしまったなんて・・-

「さあ!選べ。ここで殺されるか、大人しく城まで来てそこで殺されるか。まあ、どちらにしろ滅ぼされるのは違いないがな・・。」

斗牛鬼は、ワタシに死の宣告をする。だけど、

「姫様には一指も触れさせん。このケンパが相手だ。」

ケンパは姿を変え、本当の姿へ戻る。コヨーテの魔獣鬼の姿へと。

「ケン!駄目よ。逃げましょう!」

ワタシがケンパを止めようとしたが、逆にケンパがワタシを逃がそうとする。

「姫様、このケンパが闘っている間に、お逃げ下さい。どうせこの斗牛鬼を倒したとて、第二、第三の追っ手が参ります。さあ、今はお逃げ下さい!」

ケンパが斗牛鬼の前に立ち塞がって、ワタシに言った。

「少しの間でしたが、姫様とご一緒できてこのケンパ、幸せでした。・・どうか逃げ延びられて、この人間界でお幸せに。生きて、生き延びて下さい。」

そしてケンパは、斗牛鬼と闘い始めた。

ーケン!ワタシ、ワタシは必ず逃げ切って、そしていつかきっと、お父様を滅ぼしたマギキを倒して仇を討ってやる。ケンの気持ちを無駄にはしないから。必ず!-

ワタシは、ケンパを後に残して走り出す。

ーお願い、ケンパ。勝って、生き残って。そしてもう一度ワタシに、あの優しい顔を見せて。-

「誰か、誰か!お願い。助けてワタシ達を。ケンを救って、お願い。」

ワタシは、泣きながら走った。


友達のピンチに、2人は立ち上がる。

そして魔虎は美琴の正体を知る事となる・・・。

次回トリオ後編

次回も読んでくれなきゃ駄目よーん!

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