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高く高くその手を掲げて!S・S・S~(セインステッキストーリーズ)よりAct6

アタシは人間の姿をしたダークホラーと出合った。昼間の人間界で。

白髪の老人と少女の姿をした、邪な者達に・・・・。

「あっ、おはよぉ。魔虎ちゃん。」

寝癖でボサボサの髪を撫でながら、美琴が部屋から出て来た。

「おいっ、今何時だと思ってるんだ?小学校始まってるぞ!」

アタシの言う事が、解っていないのか、

「ふえ?小学校?」

ーまだ、寝ぼけてんのか、こいつ。-

「学校行かなきゃ駄目だろっ!昨日も狼牙さんに、怒られてたじゃないか。」

・・そう、初めて美琴と会った日から、狼牙さんの家に居候させてもらう事になった。自分が元々住んでいたマンションは、暫く帰らないことにして。

「なんでー。魔虎ちゃんは、学校行かないの?」

「う。そっ、それはっその。・・行けないんだ。」

「ふーん。じゃあ、美琴も行かないっ。」

ーうっ、それはマズイ。アタシのせいで美琴がズル休みしたら狼牙さんに怒られちゃうし、2人のお兄さんにも怒られるっ!-

「だーめっ!美琴は学校行きなっ。門まで送ってやるから。ほらっ、早く用意しろよ。」

アタシは、強引に美琴を学校へ連れて行った。

「ふえーん、魔虎ちゃんと一緒がいいのー。」

「もうっ、あんまり困らせるなよぉ。美琴、帰ったら遊んでやるから。」

アタシは校門で、美琴のだだを聞き流して別れた。校門に入った美琴は半泣きで、

「絶対だよ。帰ったらずぇーたいっ、遊んでね!」

「わーった、解ったから。早く行きなよ。」

アタシはワザと冷たくあしらう。校門から離れていくアタシを、美琴はずーっと見ている。

ーアタシだって、美琴と一緒に居たいんだ。だけどアタシが一緒だといつ呪が発動するか、魔獣鬼が現れるか解らないんだ。美琴を巻き込みたくない。・・しょうがないんだ。・・・アタシはネクロマンサー言霊師なんだから。もう、人間じゃないんだから・・・。-

涙が頬を伝って零れ落ちる。居てもたっても居られなくなって、走り出した。新たな闘いを求めて。

・・西と北の境界線・・・そこに、

「ねえ、ケン。此処はどこら辺なのかしら。」

ワタシがケン (ケンパの愛称) に訊く。

「だいぶ遠く迄来ましたね。ここは西の魔城より、北。北の魔王が支配している地域です。もう、追手も入って来ないでしょう。」

「そっか、北の魔王ってどんな方なのかな?」

「聞く所によると、闇の大王様に一番近いお方でおられたようですが・・。」

「ですが?」ワタシが訊き直すと、

「ええ、今は力を失って復活を狙われているそうです。」

「ふーん、一度は負けちゃったんだ。」

「姫様、他の地域の王を、その様に言われましては・・・。」

「はいはい、ごめんねケン。口を慎むわ。」

ワタシは軽く手を振って、ケンに謝る。

そして、他の地域の王の事より、お父様の事が気に掛かる。

「・・・お父様、ご無事かしら・・。」

少し目を伏せて、ケンに訊く。

「悪い知らせは、来ておりません。ご安心下さい。」

ワタシは、ケンに微笑み、

「そう・・。良かった。・・・じゃあ、ケン。行こう!」

「はい、姫様。」

ワタシは魔導衣をはためかせて人間界を歩む。その後を白髪の老人に化け、同じく魔導衣を着たケンが、付き従った。


「今日は、何時に無く平穏だな。このままなら、美琴の帰宅時間に間に合うな。」

アタシは、小高い丘にある公園で一息ついていた。昼間の光の中で、アタシは右手の甲を見つめる。

ーこの紋章が有る限り、アタシは普通の生活は出来ない。せめて、紋章が荒ぶれない事を祈るだけ・・・。美琴と一緒になってから、少しづつ荒ぶれなくなって来ている。不思議な娘だな、美琴って。-

<ピクッ>

右手の紋章が、魔を感じ取った。

ー!・・来やがった!-

咄嗟に辺りを見回すと、

「こいつらか!・・珍しいな、こんなパターン。」

アタシが見据えた先に、白髪の老人と女の子が歩いている。

ーアタシに気付いているな。それでも知らない振りして通るなんて・・・。舐めてくれるじゃない。-

目の前を通り過ぎる普通の人間に化けた、ダークホラーを見据えて、

「こんな日中に人間界を歩くなんて、舐めてんじゃないわよ!ダークホラー。」

右手の甲を相手に向けて、紋章を発動させる。紫色に発光した<黒の牙>の紋章が相手を照らす。

「あなたは、何者なのですか?」

白髪の老人に化けた、ダークホラーがあたしに訊く。

「滅びる者に、名乗る名など無い。アタシは言霊師、ネクロマンサーだ!ダークホラー!」

右手を高く掲げて、魔法陣を開き<黒虎くろこ>を呼ぶ。

「出てきなっ!黒虎っ!!」アタシの叫びに、

「ガオルルルッ!」

魔法陣からアタシの黒使徒が出現する。

白髪の老人が、少女を守るように前に出て、

「可愛らしいネクロマンサーよ、貴女の力を貸して頂けないでしょうか。この姫様の身を守る為に。」

ーはあ?何でアタシがダークホラーを守らなきゃいけないんだ。ふざけるなっ!-

「何を馬鹿なことを言うんだ。アタシは魔を狩る者だぞ。」

黒虎を待たせて、アタシが言う。

「話しを聞いてください。この方はある獅騎導士、守りし者の娘なのです。今は魔王姫ですが、いずれ人に戻り、守りし者となられる方なのです。それに姫様は、追手に追われる身。助けが必要なのです。どうか、お力をお貸し下さい。」

必死に頼む白髪の老人の姿をしたダークホラーに、

「話はそれだけか?邪な者。アタシは魔を狩る者だ。邪な者を助ける結われは無い。例え元獅騎導士だったのだろうと、関係は無い。狩るのみっ!」

アタシは、右手を少女に向けて呪文を放つ。

喰獣牙イービーストクロウ!」

アタシの呪法を受けて、黒虎が魔法陣から少女に向けて飛び掛る。

「ガオルルルッ!」

黒虎が少女に牙を剥いて、襲い掛かり喰らい付く瞬間、

「姫様!お除け下さい。」

ケンパが姫那を守るべく、黒虎の前に立ち塞がった。

ー馬鹿な、ダークホラーの中でも他の者を守ろうとする者がいるとは。アタシの記憶の中には、こんな事は始めてだ。だが・・・。-

アタシは次の瞬間には、白髪の老人が黒虎に引き裂かれ、少女に喰らい付くものと思っていたが・・・。

「!何?なんで・・・。黒虎?」

アタシは自分の目を疑ってしまった。黒虎が、倒されるなら解るが・・・。

白髪の老人を押し退けて、少女が黒虎の前に出て右手を伸ばしたら。

「何やってんだよ。黒虎!」

アタシはひっくり返る位びっくりした。なぜなら、

「きゃあっ、かっわいいーっ!この猫ちゃん。」

少女の右手に頭を撫でられ、立ち竦んでいる黒虎を見たから。

「こっこらっ!黒虎!なに、懐いてんだっ!」

アタシは紋章を向けて黒虎を、呼び戻そうとするが、

「ねぇっ!あなた。この子、何て名前なの?」

無邪気に訊く少女に、

「あ?えっ?くっ、くろこ・・って・・・違うっ!!」

アタシは頭が混乱して、名前を教えてしまった。

「そっかあ、くろこちゃんって言うんだ。可愛いね、この子。」

少女は、黒虎の喉を撫でて抱き付いている。

ーうっ、うわあっ。アタシでもやったこと無いのに。黒の使徒を懐かせている。なんなんだこいつ。-

「おっ、お前っ。何者なんだ?一体。」

アタシが指差し、少女に訊く。

「えっ?ワタシ?ワタシは元魔王姫。魔王姫、姫那ヒナって言うの。あなたは?」

屈託の無い笑顔で訊かれて思わず、

「アタシは魔虎。ネクロマンサー魔虎。」

答えてしまった。

ーううっ、なんだこいつ。全く敵対心が無い。まるでどっかの娘っ子みたい・・・。美琴みたいだ。やりにくいな・・。-

「くそっ、もういいだろ。黒虎を放せよ。」

アタシが姫那に向って言うと、

「えーっ、だってこの子も、もっと撫でてって言ってるよ。もう少しこの子といたいの。駄目?」

ニコニコと笑って、こちらを見ている姫那に、

「うーっ、こらっ黒虎!もういいだろ。帰って来い!」

右手の甲を向けて、強引に魔法陣の中に戻す。

「あーっ、くろこちゃん帰っちゃった。」残念そうに姫那が言った。

ーなんか、もう。闘う気が失せちゃったな。-

アタシは、ダークホラーに対して今までに感じた事のない違和感を、覚えてしまった。

「もういい、何処へでも行っちまえっ。アタシの前から失せろっ。」

アタシは2人のダークホラーに、そっぽを向いて腕を組んだ。

「ねぇ、魔虎ちゃん。一緒に来てよ。ワタシの味方になってよ。」

姫那は、ずうずうしい事を言ってくる。

「馬鹿か?何でアタシが味方をしなければならないんだ。寝ぼけるなよ、邪な者!」アタシがそこまで言うと、

「うっ、ううっ、ぐすんっ。」

姫那が、泣き出した。

ーえ?アタシ、なんか悪いこと言ったっけ?-

「おっおいっ。何で泣くんだよ。」

「えっくっ、だって魔虎ちゃん。味方してくれないし、邪な者って呼ぶから。」

そう言うと、また泣き出す姫那に、

「うわあっ、泣くなっ。泣くなったら。おいっ!そこの白髪のダークホラー、なんとかしろっ!」

アタシはケンパに向って、姫那を泣き止ますように命令した。

「姫様、ネクロマンサーの仰るとおり、泣き止んで下さい。彼女は、お味方は出来ないと仰られたのです。我々ダークホラーの味方など私も無理なお願いをしてしまった事を謝ります。お許し下さい。」

ケンパの言葉で、更に泣き声を大きくする姫那。

ーううっ、何でアタシが・・。美琴といい、姫那といい。ほっとけないヤツラばっかりじゃないか。-

「ううっ、解った。わかったから。泣き止んでくれよ。」

アタシが頭をかきかき、姫那に言った。

「姫那の味方してやるから、もう泣くな。」

「えっ!本当?」ぴったりと泣き止んで、姫那が此方を向く。

「ああ。味方になってやるから。だから、そんなに泣くな。」

「ホントに本当?」

「アタシに二言はない!」アタシは断言した。

「やった。じゃあ、くろこちゃんと、また会える?」

アタシは額を押さえて、

「姫那、黒虎はペットじゃないんだぞ。」

「えーっ、でもぉ。くろこちゃん可愛いんだもん。」

姫那は、アタシにお願いする様にせがむ。

「黒虎は、必要な時意外には呼び出さない。解ったな!」

「ぶーっぶーっ。」

姫那が、ぶうたれて拗ねた。

ーなんだか、ダークホラーとは思えないな。・・またアタシ、流されてしまったのかもしれないな。-

「それでは、ネクロマンサー魔虎殿。私共の味方と、思って宜しいのですか?」

ケンパが念を押すと、

「ケン。味方じゃなくて、お友達っ!だよね。」

姫那が微笑んで、アタシに同意を求める。

「ねっ!魔虎ちゃん!」

ーううっ、友達かよ。しょーがねえーなあー。-

「わかった。姫那!アタシ達は友人だ。それでいいな!」

「うん。ワタシの2人目のお友達。」

ー?二人目?そっか、こいつも寂しかったんだな。-

笑顔になってアタシを見つめる瞳の中に、少し光が差し込んできているのを感じて、

ーこいつもアタシと同じ、一人ぼっちだったんだな。-

「ああ。ピンチになったら呼べよ。何処へでも現れて、お前の味方をしてやる。解ったか姫那。」

「はいっ、魔虎ちゃん!」

そう言って微笑む顔は、普通の少女。人間の少女そのものだった。

魔虎と姫那は友達となり、美琴とも間も無く出会う事となる。

それがこの後に繋がる、運命の出会いとも知らずに。

次回 トリオ

次回も読んでくれなきゃ駄目よーん!

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