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あめあられ

お題:誰かは傘 制限時間:15分

 雨の日ほど心躍る時はない。

 お気にいりのブーツを履いて、可愛いレインコートを羽織って、水たまりにどぼーん。

 飛び跳ねる飛沫に目を細めるみんなを見ながら、私は楽しくおかしく歩いていく。

 かんかんかん、と鉄を叩く音を響かせながら、階段を登って屋上へ。

 見渡す限りの曇り空。

 見通す限りの雨模様。

 誰も上を見ない、前と足元だけを気を付けて、濡れないように気を付けて、歩いて歩いて歩いてく。

 世界中の誰もがお空を見ない、憂鬱と沈鬱に輪をかけて捨て去ったような晴れやかな雨の日。

 見下ろせば、見定めれば。

 待ち行く行き交う人々は、みんながみんな、傘を差す。

 透明な量産品。

 花柄の回転線対称。

 真っ黒の心の色合いに、真っ赤な体の色。

 特注の特別品に、小さな鞄サイズ。

 素敵な傘ね、素敵な傘よ。

 だから私はみんなの為に、今日も空から落とすの。


 ――あめ あめ フレフレ もっとフレ――


 口ずさみながら、鼻歌吹きながら。

 

 ――だれかの 傘に もっとフレ――


 喉を震わしながら、小躍りしながら。

 私はもっと、ばらまくの。

 世界中が驚くように、雨の日でも空を見上げたくなるように。

 世界中が思い知るように、雨の日は空を見たくなるように。


 誰かは傘を差したまま、空を見ずに過ごすそんな一日を。

 誰かの傘は差したまま、空を見たまま過ごすそんな日に。


 私は高い高い屋上から、地上を見下ろし振り落す。

 雨の日よ、雨の日よ。

 誰もが頭上を鑑みる、雨の日よ。

 こんにちは、人間さん。

 貴方の傘はもういらないわ。

 私のソレが持たせない。

 さぁ両手を自由に奔放に、瞳を不審に恐慌に。

 雨の日よ、雨の日よ。

 空を気にしなきゃいけない、雨の日よ。

 もっと見上げて見つめてちょうだい。

 誰かは傘を文明なんて言うけれど。

 誰かは傘を不便なんて言うのだわ。

 素敵で身軽なレインコートを。

 雨に打たれて、うたれましょう。

 お空から、高くて遠いお空から。

 今日も私は振り落す。

 傘の上に、誰かの傘に。

 命中、ヒット。

 風が吹けば飛ばされる、そんな傘に狙いを定めながら。

 私の雨に、濡れなさい。

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