いきなり黄金伝説
「ヘアッー!」
私はえさに夢中の野ウサギの背後から近づき、両手に持った双剣を背中に突きつけた。
「ウワァァァ…」
野ウサギは何もできずビクンビクンと震えた後、絶命した。
ふっ…みたかこの剣裁き…彼もきっと私に惚れたはずだ…。
「プリメラ、そのウサギは食うのか?」
意外にも彼から帰ってきた言葉は賞賛とは別のものだった。
ま、あまあウサギ程度では惚れられないだろう。クマだ、クマタンだ。
「そ、そうよ!ここらで休憩にしましょう!」
そんなつもりはなかったが、咄嗟にそう答えてしまった。
「そうか…よかった、てっきり何も考えず無益な殺生をしているのかと思ってな…」
あ、あぶなかった…!食べるといっててよかったわ…!
彼は博愛主義者なのだろうか…しかしハンターになるということは、生き物を殺すということだ、彼にはかわいそうかもしれないが、その辺を教えなければ…。
「俺が捌こう、プリメラは火の用意を頼む。」
彼はそう言って手馴れた手つきでウサギを解体していった。
「ケイジさんは、こういうの慣れてるの?」
「ケイジでいいよ。
ああ、野宿ばっかりだったからな。」
呼び捨てフラグキタアアアアアア!
なにこれ、もうこれ恋人まで一直線じゃん!!!
私、ハンターやめて寿退社いたしますうううう!!!
ふふふ、そのためにも有終の美を飾らなければ…華麗にクマタンを狩って、あとはケイジにつきっきりで個人レッスンをする。
そしてケイジが一人前になったら、私は彼を家で待つ妻になるのよ…。
もう…ウサギは狩りたくない…ハハ…もう夢にウサギが出てくるのは嫌よ…やめて!私は悪くない!
おいしくもまずくもない食事を終え、私は腰を上げた。
「さって!じゃあケイジ!行きましょう!
………私ね、この狩が終わったら…ハンター…引退するんだ…。
それでね!街でケイジにつきっきりで極意を教えてあげる!
だから今日は、私の華麗な剣裁きを…その目に焼き付けなさい!
手出しは無用!ケイジは黙ってみてなさい!」
「おい待てそれはフラg…」
「――――ッ!!!出たわ!ビッククマタンよ!」
私は双剣を持ち、クマタンに向かって駆け出した。
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彼女はいきなり、人畜無害そうな野ウサギの背後から奇襲をかけた。
一体どういうつもりだろうか…まあ子供はあんなものだろうか、力を持てば振り回したくなる。
アリの巣をつついたりするのと一緒だ。
いや待て彼女は15だ、それにハンターだ…意味もなく殺さないだろう。
よかった、やはり食糧としてだったようだ。
彼女はウサギをさばこうとしていたが、ぎこちなさすぎる。
それにどこか血をさけている、まあ女の子だから仕方がないか。
食事中、彼女は…ウサギが…ウサギが…ごめんなさいごめんなさいとかぶつぶつと呟いていた、やはり早急にいい病院を探さねば…。
俺は街に戻ったら最優先ですべきこととして病院探しを頭にいれた。
食事の終わり頃、彼女はおもむろに立ち上がり、俺に告げた。
「私…この狩が終わったら…ハンター引退するんだ…」
思わず口に含んでいた水を噴出した。
「おい待てそれはフラg…」
「――――ッ!!!出たわ!ビッククマタンよ!」
彼女は双剣を持ち、クマタンに向かって駆け出した。
―まあいい、いざとなれば助けに入ればいい。
俺はそう思い、彼女のあとをついていった。
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彼女が堂々と真正面から切りかかっていったのは…体長5メートルはあるかという熊…漆黒の毛色。
光を吸い込む黒の中に、燦然と輝く赤く丸い頬っぺた、そして白い瞳。
なんかどっかで見たことがあるな…。
その熊に対して彼女が双剣を振りかぶった瞬間…!
「ひぎぃッ~~~~~!!?!?」
熊は右手を一閃、彼女の双剣をはじきとばしていた。
彼女は尻餅をついてペタンと座っている。
心なしかプルプル震えている、目と鼻からはとめどなく透明な汗が流れている。
彼女の防具…なぜ狩りに来てプリーツスカート&ニーハイなのかはわからんが、あれでもれっきとした防具らしい。
しかも股間からは湯気と黄金の汗が流れている、これは見なかったことにしてあげたほうがいいだろうか…。
上は弓道などで用いる胸あてのようなものだろうか、どちらにせよ対した装甲ではなさそうだ…。
あのクマが振るえば上と下がさよならグッバイなのは確定的に明らか。
彼女は一体何がしたいのか…ガクガクと震えて目はうつろだ。
あ、あへぇ…とか言っている。
うむ、どこからどう見てもピンチだ。
助けるのは簡単だが…それは彼女のためにならない。
彼女は、1日しか見ていないが大体どんな人間かわかる。
彼女はたぶんかわいそうな子だ、おまけに俺の天翔波のせいで石が直撃し、さらに脳に障害が残ってしまった。
まあこれに関しては元からであった可能性もあるが…とにかく…かわいそうな子なのだ。
天真爛漫?と言えるかどうかわからない、クエッションがつく、そしてお調子者だ。
俺に華麗な剣捌きを見ておけという発言からもわかる。
そんな彼女を今助ければどうなるのか、答えは簡単だ。
―べ、別に助けてくれなんて言ってないし!私1人でもいけてたし!
などと言うだろう。
だから俺は今は彼女を助けない、彼女が自分の力、無力さを感じ取り、助けを求めるまでは…。
そうしなければ彼女のためにならない、現実というものをつきつめてやらねばならないのだ、それが大人の仕事だ。
どこかの狸も言っていた「戦わなきゃ!現実と!」と。
まあ無論、ギリギリまで見て助けを求めない場合は、問答無用で助けるつもりではあるがな…。
―さて、彼女はどうでるか…。
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「モ"オオオオオオォォン!!」
クマタンが右手を振り上げ、私に振るってきた。
私は咄嗟に双剣でうけようとしたが、あまりの衝撃に剣は両方はじきとばされた…。
―――ッ!
怖い…なによこれ…怖い怖い怖い怖い怖い…
目の前の魔獣との圧倒的な力の差。
本能でそれを感じ取り、私は腰が抜けてしまった。
―私は死ぬ…ここで…クマとか無理だったんだ、ウサギにしとけばよかったんだ。
彼もきっと幻滅だろう…ってそうだ!彼だ…彼に逃げてといわないと…
けどいやだ、死にたくない、彼と別れたくない、けど彼に死んで欲しくない…大体彼にかっこいいところを見せるのではなかったのか、助けを求めるにしろこんなかっこ悪いところ見せれるわけがない。
そんな思考が私の中をループするなか、目の前のクマタンが右手をゆっくりと振り上げるのを見た。
振り下ろされる右腕…私は…
―――…助けて…
呟くように発した言葉、決して届くわけがない…。
けど…
「承知」
彼の頼もしい声が…私に届いた。




