ラブリーマイエンジェルシールたん
「―――と、いうわけだったのよ。」
私は家のリビングでお母さんに事の顛末を話した。
「ふぅん…隕石…ねえ…?」
お母さんは意味深な瞳でケイジのことを見つめている。
「まあいいわ、とりあえずケイジ君。今日泊まるところあるの?
ないでしょ。うちに泊まっていきなさいな。
拒否権はなーし♪ 娘を助けてくれたお礼、させて頂戴?」
ケイジは何か言いたげであったが、お母さんの極上スマイルに負けたのか、素直に頷いた、ウギギギギ。
「そして今日はとりあえず、寝ましょうか♪
もう遅いし、詳しい話は明日起きてからにしましょう。」
お母さんの強引な押しもあってか、今日はもう寝ることとなった。
空に起こった異変、盗賊に襲われた恐怖、隕石…私は肉体的にも精神的にも疲れていたためか、すぐにベットの上で夢の中へと沈んでいった。
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「さて、ケイジ君。寝る前にちょっとお話…しましょうか♪」
さっきから身体の振るえが止まらない。
握った手から汗が滴り落ちる。
この目の前の男―ケイジ―は…一体どれほどのものなのか…。
少なくとも敵ではないようだが、相手の心意をさぐらなくては…。
「単刀直入に聞くわ、あなた、何者?
あなたみたいな尋常じゃない魔力の持ち主…みたことないわ。
そして何より、どの系統との魔力とも違う…見たことがない。
もしよかったら、話してくれない?誰にも言わないわ。」
彼は少し考え込むようなそぶりを見せた後に、口を開いた。
「俺は話すのが苦手だ、だからありのままに話そう。
それにあなたは、たぶん信頼のおける方だと思う。
まず俺は、この世界の人間ではない、異なる世界からわたってきた。
プリメラが言っていた空に広がった闇は、たぶん俺が世界を渡るためのもので、爆発は世界に転移したときのものだと思う。
世界を渡った理由は………強者を求めてだ。
俺は前の世界では格闘家だった、より強く、最強を求めて、来る日も来る日も修行に、戦いにあけくれた。
そしてもう世界では、俺より強い者はいなくなってしまったんだ。
だから俺は、更なる強者を求めて、世界を渡った。
この世界は、選んできたんじゃなくて、たまたまなんです。
この世界は、俺がいた世界に比べて気が満ち溢れている…お察しのとおり隕石なんかじゃなくて、俺が気の加減を間違えただけなんです。」
彼の言葉は本当だろうか…世界を渡る…?ありえない…。
しかし彼の力は異質すぎる、抑えてるつもりだろうが、私にはわかる。
異常すぎるほどの魔力量…この世界のパワーバランスを変える程の。
しかしまあ、強者を求めてというのは、間違いないだろう…彼の獣のような瞳を見れば、わかる。
――なぜなら私と、同じ目をしているのだから――
「わかったわ、じゃあしばらくこの家にいなさいな?
この世界の常識を教えてあげる♪
あと、そのだだもれの魔力…ああ貴方がいう気だったかしら?
それも抑える練習しないとね♪」
「かたじけない…それではしばらく…お世話になる。」
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シールさんはなんとすばらしい方か…女神のような美しさ、聖母のような優しさ…。
シールさんまじ天使。
おまけに強い…聞いてみたところ元はヒーヅルの皇族直属の近衛騎士だったそうだ。
ダブルピー…いやプリメラを懐妊して退役し、既に16年ほどたっているが、あの動きだ。
現役時代は一体どれほどの疾さだったのか。
少なくともあちらの世界にいた時の俺では見切れなかっただろう…。
こちらに来て気の流れに敏感になっていなければ、先ほどの飛ぶ影のような曲芸もできていなかったはず。
そして何より美しい…とても1児の母親とは思えない…あれやばい俺こっちの性癖だったっけか。
しばらくはここで厄介になろうか。
当面の目標は、この世界の常識を学び、自身の気を完全にコントロールし、この世界の強者の探索を行う。
決してシールさんがいるからではにい、決してだ。
とにもかく、今日は疲れた…思えばカミンチュとの死合いからずっと休んでいない…。
そんなことを考えていると、俺のまぶたは自然と閉じていった…。




