ラブリーマイエンジェル2
「おらぁ!!!」
気合を籠めた正拳突きが白いトカゲにぶちあたる。
トカゲは空高く舞い上がり…絶命した。
トカゲといっても10メートルほどの大きさで、硬いと言われる鱗、鋭い牙に爪、退化した翼…世間ではホワイトドラゴンと呼ばれる、超位種であった…。
「んっんー♪ 拳は何よりも強し、名言だなっ!」
――どう考えても俺専用の言葉である。
「さーて、早く帰らないと日がくれちまう…ぐへへ…まってろよ…もふもf…じゃないカレン…ハクア…!」
ギルドからは、馬を使って往復4日の討伐クエストなはずなのに…スキップで往復4時間の日帰りクエストってどういうことだと言われそうだが、まあなんとかなるだろう。
「しかし…問題はこいつをどうするか…持って帰るのはいいが、木々にぶちあたって素材が痛みそうだしなぁ…」
「ううむ………」
あぐらを組んで座り込むが、いい案が思い浮かばない…。
「しょうがない、一休み一休み…」
寝転がればいいトンチ…じゃない案が浮かぶかもしれない、どこぞの坊主もやってたしな。
…
……
………
…………
……………
カッー!
この時俺に電流走る。
「 閃 い た ッ!」
俺はおもむろにリミッター3――思えばこの世界で始めての解除である――を解除し、ホワイトドラゴンの尻尾を掴んで気を流し込んだ。
ホワイトドラゴンを倒した10分後、俺はでゴレイクへ戻り、ハンターギルドへやってきた。
「ルルさんただいま戻りましたー。」
「あれっ!?ケイジくんクエストへ行かなかったっけ?」
「ああ、行ってきましたよ、はいこれスノウウルフの牙20本。」
ゴトゴトゴトッ!とカウンターに牙を並べる。
「っ!?!?!?
ちょ、ちょっと待ってよ!何よこれ!?
ていうかさっき出たばっかりなのにどういうことなの!?」
「まあまあ、こまけえことはいいんですよ!」
「いやいやいや! 細かくないよ!? 細かくからね?!」
「そんなことよりルルさん、ちょっと別のモンスター拾っちゃってさ、ちょっとでかいから裏においてあるんだけど、買取ってやってもらえる?」
「………………もうつっこまないわよ…。
と、とりあえず…見に行くわ…………。
そうよ… の関係者なんだから…そうよ…あの子だってそうだったし…」
最後らへんは小さな声で何をいっているか聞こえなかったが、まあいいか。
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私には、少し代わった友人がいる、いや…訂正しよう。
少しではない、次元が違った友人がいる。
出会いはここ、ゴレイクの温泉であった。
当時ギルドの受付嬢に成り立てだった私は、日々の楽しみである仕事後の温泉にきたのだ。
いつものように体を洗い、大露天風呂に入ろうとすると…
天使がいた。
思わず、ラブリーマイエンジェル…とか呟いてしまった、同性なのに。
それくらい彼女は綺麗だったのだ。
同年代ということもあったのかもしれない、髪や肌の悩み、仕事の愚痴…初めてあったはずなのに、往年の友達のように話せた。
不思議な女性だった。
いっつも語尾に♪がついていそうな、明るくて、楽しそうなキラキラ輝いている印象だ。
彼女はお隣にある同盟国のなんとか騎士というのをやっているらしい、しかし騎士とは思えないくらい柔らかい肌である…ううむ…うらやましい。
それから彼女とはちょくちょく会うようになった、昼休みにランチを食べたり、夜一緒にお酒を飲んだり…。
休日に買い物にいったりした。
当時は彼女がここにきた理由である、ちょっと幻種の素材を強奪しにきた、等という馬鹿げた理由を信じなかった。
それが本当なのだと心で理解したのは、とある事件があった日だった。
その日私は受付嬢になって初めて超高級レア素材を取り扱った。
ホワイトドラゴンの瞳、牙、そして大量の鱗である。
物が物なだけに、そういう素材の場合、ハンターが希望すればオークション等に出し、後日報酬金を渡すのである。
初めてのレア素材にどぎまぎしながら取り扱った…説明をし終え、ハンターが帰って「ふうー」と大きなため息を吐いたところで、全身の血が一気に引いた。
無かったのだ、ドラゴンの瞳が…確かに私が確認したのに、なくなっている。
そんなわけがない、必死に周りを探すが見つからない。
いつだ、いつ無くした、まず最初に瞳を受け取り、端にのけて牙を見て…大量の鱗を見て…。
わからない、最初に見たあとからわからない…どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしようどうしよう…。
やばいやばいやばいやばいやばい………
素材を持ってきたのは、ゴレイクの下級議員のドラ息子だ。
女癖が悪く、金に物を言わせたりして女性に手をだしたりしているという。
悪い噂ばかりだ…あいつか、あいつが…そういえば最近やたらと私のところに顔をだしていた、確かに嫌な…いやらしい目をした奴だと…わかっていたのに……はめられた…ッ!
私はこれから起こりうることを想像し、震えながら体を抱きしめた。
最初から罠だったのだ、当たり前だ、あいつなんかがホワイトドラゴンを狩れるわけがない、最初からこのつもりだったのだ、そしてそれを盾に私を…私を…ッ!
ギルドマスターに報告を…いや、けど証拠がない…そもそもあいつは下級とはいえここら一帯の有力な力をもつ議員の息子…つまりどうしようもない…。
ダメだ、ダメだダメだダメだダメダ……もう…ダメ……
精神が限界にきていた、あふれ出た不安は、涙となって目から零れ落ちて…
「るーる♪どうしたの?♪」
天使が、零れ落ちた涙をスクってくれた。
「んー♪ そっかそっか、うんうん♪
よくがんばってねぇルル。
だから、あとは私にまかせなさーい♪」
事情を話したら、シールが優しく撫でてくれた…。
心は落ち着いた…けど、状況は変わらない、どうしよう。
「だーかーら♪ 私に任せて? ね?♪」
シールが私の頬を両手でもって、無理やりまっすぐ見つめさせる。
うん、痛い首がグキッっていった、グキって。
顔はすごく綺麗でかわいくて…けどすごく…怖いです。
「わ、わかった…。
けど、どうするの…?ホワイトドラゴンの瞳なんて…」
ホワイトドラゴンをはじめ、死んだドラゴンの瞳はかなりの魔力を秘めた魔水晶となる。
武具などに使用されればそれだけで凄まじい威力を発揮するという。
そしてそれは宝石としても一級品でもあり、メーリでも議員共の婦人が買いあさっているという…。
そして今回はそんな超位種のドラゴンの中でも手ごわいとされるホワイトドラゴンだ。
それをシールはどうするというのか…
「ん、じゃあちょっとドラゴン狩ってくる♪」
ちょっと買い物いってくる、そんなノリで彼女は答えたのだった。
ヒーヅルに住むとある一児の母の昔話です。




