この世界
街に向かいながら、俺は助けた少女、プリメーラちゃんからこの世界のことを色々と聞いていた。
まず、この世界はサウザンスというらしい。
世界は3つの大陸に分かれており、インス大陸、ヴァイ大陸、ドライ大陸である。
インス大陸は、今俺がいるところ。
ドライ大陸に関しては、氷の世界らしい、地球でいうと南極だろうか。
ヴァイ大陸に関しては、存在だけが確認されている。
というのも、まだまだ造船技術が低く、もちろん飛行機などあるわけもない、また海は非常にあれており、おまけに魔物がいるため誰も確認できていないのである。
何度も調査兵団が組まれ、渡航しているが、帰ってきた兵団はいない。
そんなわけで、この世界は実質インス大陸のみとなるのだろうか。
そしてインス大陸、この大陸にはおおまかに6つに分けることができる。
・メーリ連合 12の州の集まりである。国土は広く軍事力も高い。
・ヒーヅル 国土は狭いものの、魔法技術が高く、メーリとも同盟関係にあった。
あった、というのも、隣国に策略等を受け事実上崩壊した。
現在はメーリの保護下にあり13番目の州として存続している。
・コーリ ヒーヅルを策略の下に崩壊させた国。
他国の技術等を許可なく盗んだりしているため軍事力は高い。
表向きは何も悪いことをしていないように見える。
・アールア共和国 最多人口国。人だけは多い、技術等は低い。
そのありあまる人口でごり押しな国。
・レード連邦 メーリ連合と比肩する国家。
実はコーリをけしかけヒーヅルを抑えるつもりであったが、失敗。
・他 上記以外の国、地域。結構多いが国土が狭かったりで基本いないのと一緒。
そして俺たちは現在、ヒーヅル州の西森にいて、ヒーヅル州の西都であるハンナリに向かっているわけである。
「カミンチュ(笑)さんはどこの国の方なんですか?あーけど黒髪黒目だし私と同じヒーヅルですよね?」
「ケイジでいい。それと俺はヒーヅル出身じゃない、東にある小さな名も無き国だよ。」
「じゃあ私もプリメラでいいですよ、親しい人はみんなそれで呼んでるんです。
あとちゃん付け禁止!…ね?」
バチコーン♪と音がしそうなウィンクをしつつプリメラが俺に答えた。
まずい…かわいい…何を隠そう俺は生まれて25年間、女と付き合ったことはない。
無論童貞だ。
そんな俺がこんなかわいい子と…気づけば俺は胴着を左右にはだけさせながら彼女に呟いた。
や ら な い か
「え?なにを?」
俺は泣いた、心の中で泣いた。
彼女の純真無垢な心に、そして俺自身の心の醜さに。
俺はなんということをしてしまったのだ、こんな年端もいかぬ少女に。
そんな俺の心を察してか、彼女は話題を切り替えた。
「そういえばさっきのコーリの奴ら、紅い魔法剣持ってたよね…隕石が落ちてなかったらやばかったよねぇ…」
おそらくは火が飛び出した剣のことだろうか、やばかったのか?
あれくらい俺の気があれば何とも…とそうだったこの世界は違うのだ。
それも確認せねばなるまい。
「ああ、びっくりしたな、あれを見るのははじめてなのだが、すごい奴だったのか?
それと実は俺は魔法に疎くてな、あれがどれくらいだったか教えてくれないか?」
さりげなく聞くことが大切だ。
彼女は魔法が好きなのか、目をきらきらさせながら喰い付いて来た。
「しょうがないにゃあ…いいよ…?」
魔法というのは、空気中等にある魔素及び自身の体内にある魔力を使役して使うことをいう。
魔素とはなんぞや、って思ったがつまりは気のことらしい。
つまり俺が使う天翔波も魔法の一種だそうだ。
魔法は、属性は、無・火・水・風・土の5つ。
無というのは純粋な混じりけのない魔素及び魔力だそうで、誰でも使えるらしい。
無は、身体を活性化させたり、植物に触れて成長を促したりと、色々便利だが、魔力値が低いとたいした効果はない。
つまり、痛いの痛いの飛んでいけーとするだけで本当にちょっといたいのが治るのだ。
また純粋なエネルギーとしてもあり、俺の気は無にあたるようだ。
四元素の魔法にあっては、使えるものはかなり少ないらしく、またそれらが使える=魔力値もそれなりにある、ということらしい。
そのせいもあってか、四つのどれかを持つものは実力者であるらしい。
ふむ、強者を探す基準のひとつになりそうだ。
魔法は努力次第で伸びる、が、体内にある魔力値というのは先天的なものが多いそうだ。
またこの世には精霊と呼ばれるものがいるそうだ。
四元素それぞれいて、捕まえたりして武器に埋め込んだりする。
おそらくエネルギー生命体、ってやつだろうか…よくわからん。
ちなみにさっきのコーリの男が使っていた紅い魔法剣、これは火の精霊が埋め込まれていたそうだ。
俺への炎は牽制だったらしく、本当は更に強い火魔法が使えるそうだ。
しかしまあ…俺の覇王天翔波を見る限り、脅威ではなさそうだ。
「なるほど、大体わかった。ありがとう。
ところでプリメラ、お前はこの世界で強いのか?」
彼女の体内の気の量を測って尋ねてみる。
「んー?私?…まあ一般人よりは強いと思うけどー…ああけどメーリ連合の正騎士程度なら勝てるよ!さすがに近衛騎士は厳しいけど…」
彼女は大分強いほうみたいだ…そうすると先ほどのコーリの男も強いほうなのか…。
俺は彼女の何倍の強さなんだろう…考えるのも馬鹿らしいな…
この世界に強者はいるのだろうか…いやいや弱気になるな俺!
魔法があるなら強いやつだっているはずだ!それこそチートみたいな!
それにドラゴンとかもいそうだしな!
それに某御方も気が読めないために玉集めのとき苦戦していたしな。
こいつらの気は弱いが、もしかしたら俺みたいに抑えているだけかもしれん…怒りが爆発してとてつもなく強くなったりとか!
そうこう考えているうちに、目の前に大きな壁と紋が見えてきた。
「着いたよ!ようこそヒーヅルへ!」
プリメラがスカートを両手でつまみ、お辞儀をするようにして俺に礼をした…ああこれ見たことある、カーテシーってやつか。
彼女の微笑みは、それはそれは綺麗だった。