アリシャ・ヴォッカ
「天才天才と調子にのりやがって!!!兄より優れた妹なんぞいねえんだよ!!」
そうやって兄が私の足を無理やりに開く。
「やめて!やめてよ兄様!」
「うるせえ!」
そういって私の腹を殴る兄は、私よりも遥かにすごい魔力を持っていた、質も、量も。
私は質も量も兄には及ばなかった、まあ常人に比べると大分と優れてはいるが。
そして兄より優れていた点、それは2系統の魔法を使えること。
そのせいもあってか、私は魔法に関する研究が簡単にできた。
2つある、ということは比べられる、ということだ。
私は2系統の魔法を使い、さまざまな研究を重ねていった。
その結果、周りからは神童と呼ばれ、天才と称された。
兄も、もちろん神童であり、天才であった、それは私よりも。
ただしそれは火の魔法、こと戦闘に関してのことだ。
大きな見えない結果よりも小さな見える結果のほうが回りは持てはやす。
画期的な魔法具などの開発により、私は兄より天才と称され、兄はそれが気に入らなかったのだ。
傲慢な兄は、それが許せなかったのだろう…小さな小さなそのプライドを守るために。
兄は…私を襲ったのだ。
あの子と同じように。
幸い、私は兄の性格を熟知している、そして兄の好みもだ。
私は所謂幼児体型だ、あの日の妹と瓜二つだろう、妹はあれから成長したらしいが、私は全然だ。
19歳となった今でも、変わらない…12のときから成長していない…。
15で12の妹と同体型…むしろ妹が襲われたのも、私を襲うと不味いから出来損ないの妹を襲うという短絡的な思考からだったという。
世間的に言えば12を襲うほうがどうかと思うのだろうか…まあよくわからない。
さて、回避方法が反吐がでるほどのものであっても、初めてを奪われるという最悪の結末に比べればまだましだった。
「兄様、兄様やめて…なんでこんなひどいことするの…?
私はいつだって兄様のことが大好きなのに…。
ごめんなさい兄様、魔法具とか、調子にのっちゃっていたわ…。
けど、私、兄様に認めて欲しくて…かまって欲しくてしちゃったの…。
だから兄様がいやならもうしない、だから兄様、やめて…私兄様と一つになるのはうれしいけど、こんな形でなんて嫌だよ…。」
そう言ってぽろぽろと涙を流し、兄に抱きつく私、相変わらず演技が上手いことである。
まあこんな家でずっといればこうならざるを得ない。
「そうか…そうかよ、へはは!なら最初から犯っときゃよかったなぁ!」
そうやって私の胸に手を伸ばす兄。
バシッ!とそれをはたく。
「ああ?」
兄が怒気を含めて私を見るが、計画通り…!だ。
「もう兄様!こんな形は嫌って言ったでしょ!せっかく一つになるんだから、もっとロマンチックにしてよ!
来週…兄様の誕生日でしょ…?その時に、プレゼントしたいな…兄様に…私の…。」
最後らへんはボソボソとわざと言う。
しかし大体は察してくれるだろう、そこまでバカではない。
「ふっ、ふへへ!いいだろう!楽しみにしておくぜ!だが約束をやb「兄様!」………なんだ?」
「信じてくれないの…?私は、兄様のもの…だよ?」
最後は涙目&上目遣いでとどめだ。
「あ、ああっ!信じているさ!はっはっはっは!」
そういって兄は私の部屋を出て行った。
「…………来週までに、家を出る用意をしないとね…」
私は家を出る決意をした、もうヴォッカ家や上級議員の暗部について、大体のことは纏め終えた、あとは外でもできるだろう。
しかし私は家を出ることはできなかった…もちろん兄に純潔など捧げてもいない。
翌日、私は血を吐いて倒れた。
不治の病だった。
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微弱ではあるが、エリーとノゾミの気はある、この感じは気絶しているのだろうか。
死んではいないことにほっとする。
しかしそれもまた、消える。
何か別の気に阻まれ、上手く追うことができない…。
ああ、どうしてこんなことに。
俺に力があれば。
ごめん、ごめんよ。
なーんてことには、ならない。
思ったことは、唯一つ。
「俺の女に手をだしやがって…!
……久しぶりに………キレちまったよ…」
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久々に彼に会えたと思ったら、胸ばかりを見てきた。
どうしてこう男ってのは…おい、てめえもだジジイ。
視線を無視して報告していると、急に彼がバッ!と顔を外に向けた。
え?なに?エリーとノゾミがどうしたの?
ぼそっと呟いた彼の声は聞き取れなかった。
しかし、次の瞬間…
私の呼吸はとまった
彼から、ありえないくらいの魔力が溢れている…ジジイなんて目じゃない…これではまるで超位種に出会ったときの…いやそれ以上の圧力だ。
足が震えて勝手に尻餅をつく、怖い怖い怖い怖い怖い…目の前のソレが人間ではない、何か別のものに見えて…。
ふっと圧力が消えて楽になったと思ったら、彼が喋った言葉で再び私は固まることになる。
「おそらくだが、エリーとノゾミが…さらわれた。」
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「いい加減、喋ったらどうだ?アリシャ。」
目の前の男のなんと小さなことか。
数ヶ月前、不治の病を発祥してから、近づくことさえしない。
私がヴォッカ家の不祥事をまとめていることが発覚してから、してくることといえば、冷水を私にぶっかけるか、棒で私を叩くかだったが、血を吐いたりつばをはいたりしているうちに、それすらもしなくなった。
私がかかっている不治の病は、本当に不治のものだ。
原因も、治癒方法もまったくの不明。
身体の内が侵されているとのことであるが、感染理由もわからない。
だからこうして隔離されているわけだし、不用意に近づくことさえされない。
彼らも私に死なれては困るのだ。
私にしかあけられないといっても、そこには不祥事の全てがおいてある、存在する以上、無視できない。
今後それを開ける方法がでてくるかもしれない、それが自分達であればいいが、もし国側であったならば身の破滅だろう。
いや破滅程度で済めばよい、他の上級議員までもを巻き込めば、死んだほうがましなことになるだろう…。
だから彼らも私を死なせないように、最初以外ほとんど拷問なんかしなかった。
血を吐いてからはそれすらもない、ご飯だって死なない程度ではあるが出してくる。
今まで散々めちゃくちゃしてきたのだ、せいぜいもがき苦しむがいい、あの子の人生を台無しにした報いを受けるがいい、だから私も簡単に死ぬつもりはなかった。
もう先は長くないだろうが、死ぬまで彼らの悔しそうな、焦る姿を見てやろう。
そう思っていた…今日、今このときまでは…!
「~~~~ッッッ!!??」
目を疑った、なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?
なんであの子がここにいるの!?
目の前には、見間違えることなどありえない。
…私と同じ金髪の、前にあったときよりはちょっと成長した…最愛の妹がいた。
「そうだよぉおお、お前の愛しいエリーちゃんだよおお!
知らないと思ったのかぁ?お前がこっそりエリーを保護していたことをなあ!」
そういってエリーの腹を蹴りあげる。
「やめて!やめてよ!」
「…ッ!!?グッ…カフゥ……こ、ここは…?」
「エリー!エリー!!?」
「姉…様…?~~~ッ!?」
「おはよぉ、エリーシア。
さて!!ここで天才のてめえに質問だぁ!
鍵はどこだ!!!答えろ!」
そういってさらにエリーを蹴り上げる。
「やめて!お願い!やめて兄様!その子に、エリーに手を出さないで!!!」
「だまれ!てめえは質問にこたえろ!天才ちゃんならわかんだろおおがああああ!
答えないとわかんだろが!答えろ!答えろ!答えろおおおお!」
そうやってエリーを何度も何度も踏みつける。
「やめて!言うから!鍵をあけるから!なんでもするから!お願い!その子に手をださないで!やめてええええ!!!」
その瞬間、ニタアとする兄、この人間は、どこまでクズなのだろうか。
しかしこの兄がクズならば、私はなんだろうか、妹を巻き込んだ私は…。
「ゲホッ!…ハア…ハア…なんなのよあんたら…!
勝手につれてきて人を足蹴にして…!
いつまでも昔の私と思わないでよ!!」
そういって彼女は足に微弱の電気を流し、一瞬で距離をとる…。
―!!!
雷属性…!思ったとおりだ、研究の結果氷などと同じように亜種として雷があることが判明した。
あの子はもしかしたら…と思っていたが、どうやら自分のものにしたようだ…。
うれしい、もう会えないのは悲しいが、無事に逃げて欲しい、あの能力を使えば何とか逃げ切れるかもしれない。
そして私は死のう…これ以上生きていても同じことが起こるだけだ、あの子に迷惑がかかるだけだ…。
そう思っていたのに、あの子は…
「はああああッ!」
あろうことか短剣を片手に兄に突撃した。
「出来損ないが、時間を無駄にさせるな。」
あの子が兄に踏まれうめいている。
「性処理として生かしてやろうと思ったが、もういい。
まあ片足切っても死にゃしないだろう。」
そうやってあの子に短剣を振り下ろそうとする兄…。
「やめて!やめてええええええ!!!!」
久々に動かした身体は思うように動かない、しかし動かないではない、動かすのだ、今動かずに、いつ動くというのだ。
私は全身を這う痛みを無視して、あの子の上に覆いかぶさった。
「ゲホッ!ゲホ…」
びちゃびちゃと血が出る、もちろん、私の口からで、刺されたわけでもない。
「チッ! 寄るなうつるだろうが!」
どうやら、思ったよりこの身体は長く持ちそうにないみたいだ。
きしむ身体を無理やり起こし、エリーも座らせる。
「エリー…ずうっと前に渡した…赤いペンダント…まだ持ってる…?」
「…ッツゥ…意味わかんないわ…なんなのよ…「持っているの?」
…………ハッ!今更返せって?グッ…言われなくても返してやるわよこんなもの!」
そうやって首にぶら下げた紐と引きちぎり、投げつけてきたものは、この家を出る前、お守りに渡したものだ。
私は思わず微笑する…うれしい、持っていてくれたんだ…。
あの時、私の全てを籠めたこの赤い紅い宝石は、火の加護がある。
身に着けるだけで、多少は火の魔法が使えるようになるはずだ。
そして同時に増幅器でも、ある。
「兄様……渡すわ…」
兄が近づいてくる、顔はニヤニヤと笑っている。
1歩…2歩…今ッ!
「引導をねッ!!」
増幅器を使い、私自身の持つ極大呪文を兄へと解き放つ。
「ヘルフレイムッ!!!!」
範囲極小、ただし威力は極大、私のとっておきの、最高の魔法。
ただただこの日のために、火の魔法を極めた兄を殺すために作った、私だけの魔法。
地面を溶解させ
天井を軽く突き抜ける
炎は
兄のにちゃっとつぶれた笑みと共に
消滅した。
「どうしたああああ?生温いなああ?アリシャアアアア!」
兄の手から放たれた火が、私とエリーを包み込んだ。




