ノゾミ>>|超えられない壁|>>エリー>絶壁
「ヒャッハー!金を寄越しなぁ!!!!」
俺達の目の前には、ムキムキでスキンヘッドやモヒカン頭の男達5人ほどが立ちふさがっていた。
彼らはバイク…ではなく馬に乗り、俺達の乗った馬車を囲む。
無論上半身裸ではなく、きちんと服は着ている。
馬車を操っていた俺は、とりあえず話してみるかと思い馬に止まるように指示をだした。
「ヘッヘッヘ…兄ちゃんよぉ…金を女と服を出しなぁ…そうすりゃ楽に殺してやるよぉ」
全員長剣や槍等で武装している…そして血の匂い――野盗か、ならば容赦は無用。
「んー?お客さんー?」
ノゾミがのんびりした口調で馬車から顔を出す。
「…ッ!? ゲエッ!氷結のっ!!?!?」
銅鑼の音と共に我等がリーダーが現れる…いや銅鑼の音はなかったけども。
しかし混乱からすぐさま立ち直ったリーダー格らしき男が喋る。
「チ、お前ら逃げる…ぞあ…?…へ…?」
「リーダ…あんた…顔が…」
「いやおまえらこそ…なんだその手…いや足も…」
野盗共の頭が、手足が、体が、いびつな方向へ捻じ曲がる。
「ぎゃあああああ」
「いだいいだいいだいいいい」
「~~~ッッッ!?!?!?あああああ!!!!」
それぞれが似たような悲鳴を上げ、ボオン!文字通りと弾け飛んだ。
俺は野盗共に膨大な量の気をこめた、そして溢れる気によって彼らの体は破裂したのだ。
痛みを知らず安らかに…死なせるわけがない、悪党共にはそれ相応の死を!
「何かすごい声が聞こえたけど…?」
と馬車の中からエリーが顔を出そうとする。
「なんでもあらへんよー。汚い花火があがっただけやぁ♪
さーさエリー、続きしよかぁ…グヘヘ。」
「やんっ!ノゾミィ!もうさっきから何度もッ!~~~ッ!あんッ…」
ノゾミは出していた顔を引っ込めて馬車の中に戻る。
馬車の中から色っぽい息遣いが聞こえる。
ノゾミはどうやら元からエリーに気があったらしく、昨日の家族宣言のあと、隙あらばエリーとことを致そうとする。
敢えて言おう…お前こそ猿である!と。
あとなんか最近言動がすごく親父くさいです…はい。
まあ今まで我慢してきたことから開放された反動であろうと思い、数日は様子見をすることに決めた。
こういった野盗や魔獣の襲撃を何度か退け、野営を繰り返し、州境(旧国境)を超え、俺達はついにメーリの地に足をつけた。
「しかし…こんだけ襲撃が多いとなると、他の人たちは大変だよなぁ…。」
「ああ、それはたぶんうちらが特殊やからやで?」
「どういうことだ?」
「どういうこともなにも、こんな護衛もない馬車1台がぽっくぽっく進んでたら、そら野盗も魔獣も襲ってくるわぁ。
普通は護衛のPT雇ったり、集団でキャラバンみたいに動くのが常識やねんから。」
からからと笑いながらノゾミが言う。
「なるほど…どおりで襲撃が多いと思った、それで俺達はまあ…必要ないってか。」
「そーゆうことや。」
「ところでエリーは?」
「2ラウンドしてうちが2KO、エリーが6KOやったわ。」
「な、なにがだ?」
「なにがって、ナニがよ。」
俺はつうっと汗が頬とつたるのを感じた…エリー…強く生きろよ。
「着いたー!」
「あーしんどかった…」
「ほう、ここが…」
西都ハンナリを出て10日、ヒーヅルの首都を越え、州境を越え、ついに俺達はメーリの西側で一番の都、エンジェルロストに辿り着いた。
「とりあえずは、馬車返してギルド行って宿探しやな!」
メーリとヒーヅルは同盟…というか今やもう州として同国のようなものだが、州越え等には主に馬車が使われる、馬車は登録された都市同士でレンタル会社を通じて貸し出されており、わざわざ馬車を買う必要がない。
無論、失った場合は違約金等を払ううえ、最初のレンタル料金(喪失時の保険代込み、馬車変換後に一部返金)も結構な値段がする。
しかしハンターランクがあがるにつれ、信頼度が増すためかレンタル料がどんどんと安くなる。
今回はBランクのノゾミがいたおかげか、大分安く済んだ。
その後俺達はハンターギルドに行き、道中で狩った魔獣の素材を売り宿屋をさがすこととなった。
「まず必須なんは、防音設備のある宿屋やね!」
「防音設備?」
「そう、うちらがどんだけ声だしても、お隣には聞こえへんのよ。
一応うちも防音魔法使えるんやけど…集中力きれて絶対効果なくなると思うし…な?」
そうやってノゾミは俺の左腕に抱きつき、潤んだ瞳で見つめあげる。
「とりえず、早くお風呂に入って、柔らかいベットに行きたいなぁ…野営ばっかりで体のあちこちが痛いよ。」
右腕にエリーが抱きつき、じいっと熱の篭った瞳を俺に向ける。
俺も息子も臨戦態勢はばっちりだ!
俺は鼻息を荒くして宿屋街へ向かった。
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最近やばい…何がってナニがだ。
何かいってるかわからない、いや何がとは言わないが…ってそうじゃない!やばいのは幸せ度合いがだ。
家を出されてずっと一人だった…確かに友達はできたし、周りのみんなも怖いくらい優しかった。
恵まれていたと思う…でも、やっぱり一人だった。
だから、ケイジと一つになれてうれしかった以上に、安心感で包まれた。
ノゾミと一緒になったときは、びっくりした。
確かにスキンシップがちょっと激しいかな?って思ってはいた。
けれど侍女学校では結構当たり前だったので、気にしないでいたのだ。
好きといわれた時は、びっくりした…けど不思議と嫌じゃなかった。
『家族になろう』って言われた時は…泣きそうになった。
まあそのあと散々とひいひい泣かされたわけだが………話がそれた、私にとって家族は嫌な思い出でしかなかった。
だからメーリには近づきたくなかった…けど今はもう違う、ケイジがいる、ノゾミがいる、そう思うだけで胸の奥底から力があふれ出てくる。
怖かったメーリに行くことも、不安はあるが、この暖かい力が後押ししてくれる。
いい加減、過去にとらわれるのはやめよう…私はエリーだ、そう決意すると2人にメーリに行くことを伝えた。
ヒーヅルからメーリ州越えをするとき、正直足がすくんだ。
けどケイジが右手を、ノゾミが左手を握ってくれた、私は意を決して足を踏み出すと、簡単に地に足がついた…なんだ、簡単なことだったのだ…。
その日の晩は2人を求めまくった、反省はしているが、後悔はしていない。
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「とりあえずは、超位種でもいってみる?」
ノゾミが朝食を食べながら何食わぬ顔で発言した。
宿屋?問題なく探せたぜ、もちろん防音効果はしっかりだったと実体験で検証済みだ。
なお、結果は7ラウンドしてエリーが10KO、ノゾミが8KOだった。
2人もこつがわかってきたのか、最近反撃するようになってきたのだ…正直たまらん。
「ちょ、超位種って…大丈夫かなぁ…?」
「大丈夫やろ、うちらもう何回もBランクPTクエこなしてるし、それに…万が一のことが起こっても、ケイジがおるし、なあ?」
そうやってちらりとこちらを見るノゾミ…まあたぶん大丈夫だと思う。
「そうだな…まあ2人のことは何があっても守ってみせるぜ。」
「ま、初陣やし…とりあえずは最低ランクの超位種クエ…いってみよか!」
こうして俺達は超位種討伐クエストを受けることにした。
「この討伐クエを受けたい。」
ロストエンジェルのハンターギルドでクエスト依頼書を出す。
受付嬢はそこそこ綺麗な子だった。
「あ、はい…ええとグリーンドラゴンの討伐…ですか…?ええと失礼ですが、他のPtは…?」
「俺達だけだが?」
「ええと…」
受付は何かを言いたげだった、大方超位種に3人で挑むことに何かいいたいのだろう…。
この世界で超位種といえば、いくら最弱種といってもAランクに属する…PTならばA~Bランクのハンターを最低10人は欲しいところである。
それを3人…しかもBとC2人だ……そう思っていると。
「あんた達、死にたいの?」
後ろを振り向くと、茶色の髪をツインテールにした…一見して幼女がこちらを見ていた。
「聞こえなかったのかしら?あんた達、3人でグリーンドラゴンとかバカなの?死ぬの?」
やはり目の前の幼女が言葉を発していたらしい、迷子だろうか?
「大丈夫だよお嬢ちゃん、そんなことよりお父さんとお母さんはどうしたのかな?」
俺は幼女の頭に手をおいて優しくたずねる。
「気安く触れるな!」
バシッと手を払いのけられる…気が強そうでいい幼女である。
そのやりとりのせいか、ギルド内での注目も集まった…。
「お、おいあれって絶壁のコーニャ…」
「シッ!言うなその名を…」
キッ!と幼女がゴロツキ共を睨むと、奴らはさっと目をそらした…。
絶壁とな…?ふむ…確かに絶壁だ…どこってまあその胸部装甲がな…。
「なるほど、絶壁か」
その瞬間、幼女の気が膨れ上がったと思うと、足元から何かが飛び出してきた。
ガッー!
俺が咄嗟に手刀で打ち砕くと、幼女は驚いた顔をした。
打ち砕いたのは…土?ギルドの床板を突き破り土壁が盛り上がっている。
「なるほど…こっちの絶壁ね…」
「コロス…」
幼女の気が先ほどより膨れ上がったと思ったその時…
「あれーコーニャやないー?」
のんびりとした声がギルドにこだました。
ノゾミがフードを取って顔をさらす。
そうすると先ほどよりさらに大きなざわめきがギルドを包む。
「お、おいあれって氷結の…」
「すごい果実だ…」
うん…お前らの二つ名とか、すごいって、もう実力とは違うところを見てるよね、魔力じゃなくて胸力だよね、とつっこみをいれていると…。
「ユ、ユリノ!…ッチ!……そう、そう……あんたのPtなのね…」
コーニャと呼ばれた幼女は忌々しそうにノゾミを見つめる、いや視線は目を見るというより、若干したのほうだが…。
「あいかわらずちっこくてかわいいなぁ♪」
「うるさいっ!だまれこの牛が!」
2人は知り合いなのだろうか?それにしてもこの様子は犬猿の仲といった感じだ。
「あのー…クエストどうしますか?」
受付嬢が困った顔でこちらに声をかける。
「うけるで、うちらのPtだけで。」
「わ、わかりました。」
さっきまで何か言いたげだった受付嬢だが、ノゾミのネームバリューのおかげか、それともこれ以上厄介ごとにかかわるのは御免と思ったのか…まあその両方だろう、クエスト受注の認可を出した。
「ほなケイジ、エリー、行こか。」
ノゾミは俺とエリーの手をつなぎギルドを出て行った。
後ろからは恨めしそうな視線を送る幼女が取り残された。
「なあ、ノゾミ、さっきのって知り合いか?」
「一応な。なんか昔っからうちにつっかかってくるんよ…特に胸に関して。」
うっ…とうなってエリーが自分の胸を見つめる。
大丈夫だ!俺は小さいのも好きだぜ!エリーの頭をわしわしと撫でる。
「で、彼女は絶壁のコーニャって呼ばれててな。一応あれでうちと同い年や。
さっきも見たと思うけど、土魔法のエキスパートでな、絶壁っていうて土の障壁は彼女のお得意技や。」
「ふーん…合法ロリってやつか…」
「ろり…?」
「気にしないでくれ。」
「まあええか、ほなグリーンドラゴン討伐に向けて、買出しにいこかー!」
「「おー!」」
次の相手はグリーンドラゴン…ついに、ついにドラゴンだ!
前のリーザドンとは違う、外見は確かに似ているかもしれない…しかし大きさが違う、そもそも種が違う…リーザドンは所詮爬虫類、しかしグリーンドラゴンは龍種…圧倒的な力を持つ存在、他種とは一線を越えた生物を超えし位……超位種!
超位種最弱とはいえ、幻想の中でしか知らなかった生物と戦える…それだけで俺の心は喜びで震えた…。
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「………氷結の…やっと…見つけたわよ…ッ!」
「……」
「大丈夫や!エリーはささやかやけどあるやん!」
「……」
「それに、ケイジはエリーの胸好きっていって、いっつもがっついてるやん…?」
「……(ポッ)」




