病院へ行こう!
―ズル―ズル―ズル―
私はまだ引きずられている。
え?なぜかって?
そりゃあ奥さん決まってますよ!彼の優しさですよぅ…ぐふふぅ♪
私が目を覚ましてからゲロ吐いたあとぉ♪背中を摩ってくれてぇー
―――プリメラ、小川まで連れて行ってやるから楽にしとけ
って言ってくれたんですよおおおお!
もうなんてゆーか?やさしさ?もう溢れ出ちゃってぇw
彼に引っ張ってもらってるんです!
え?抱っこ?うん、私も最初はしてほしかったんだけどぉ、彼ったらね!
―――俺もクマタンの返り血をかなり浴びている、お前を汚したくない
って言ったのよおお!!!1!!
もう彼の紳士っぷりったらすごいわ!
胸がラブラブキュン!ってきたわぁ…
そんなこんなで私たちは汚れを落とすために、小川までやってきたのだ。
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―――ぐふふふぅ…
後ろから気持ちわr…かわいい声が聞こえる。
さっきからプリメラがぶつぶつと呟いてはニタニタと笑っている。
早く楽にしてあげよう…。
俺は小川で汚れを落とし、足早に街へ帰ったのだった。
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「あら、おかえりなさい。プリメラちゃん。ケイジさん。」
シエラさんが笑顔で迎えてくれる。
討伐の証であるクマタンの体の一部…今回上半身が爆散したが、牙や両手は一部残っていたのでそれらを持って帰ってきた。
「あらぁ…すごい。ケイジさんって強いのねぇ♪」
彼女が値踏みするような目つきで俺を見る。
端からプリメラに狩れるとは思っていなかったのだろう、少しプリメラに同情する。
「えー、シエルさんー?私だって頑張ったんだよー!」
確かに頑張って吐いていた。
「うんうん、プリメラちゃんも頑張ったねぇ。」
彼女はプリメラの頭をヨシヨシと撫でている。
エヘヘェと頬をほころばせながらカウンターに顎を乗せているプリメラ。
こういうところだけを見ればかわいいんだけどな…。
「けど、それだけ強いのならケイジさんすぐランクあげれそうですねぇ」
「ランクってすぐあげれるんですか?」
「はい、ランクを上げるには一定量のクエストをこなすか、ランクアップ試験を受ければ1発ですよ。
試験は大体討伐クエストになります、時期によっては対象魔獣がいなかったりするので受けれないこともあるかもしれませんけどね。
ランクを上げれば、色々なクエストを受けれるようになります。
クエストによっては、○ランク以上のみ受給可能といったものもあるので、やはり高いほうが何かと便利です。
また、ランクはそれだけで信頼度にも繋がります、個人的な依頼とかもくることもありますよー。」
なるほど…確かにランクアップは大切だ。
特に俺の目標である強者との戦い、おそらく超位種・幻種討伐クエストなんかはランク制限があるのだろう…。
あげれるのならばさっさと上げてしまおう。
勝手に狩りにいくのもいいだろうが、この世界で生活するのだ、狩ってお金をもらった方がいいだろう。
「はい、じゃあ今回の討伐クエストの報酬の50銀貨です。
次もお待ちしております。」
この世界は、水晶貨・金貨・銀貨・銅貨というものがあるらしい。
それぞれ100枚ずつで単位が繰り上がる。
パン1斤が5銅貨くらい、1銅貨が10円くらいのものだろうか。
つまり今回の50銀貨は5000銅貨、50000円くらいか。
なるほど、確かにCランククエをこなせば食には困らないだろう…Cで1人前とはよく言ったものだ。
いや…よく言わない…か…
―俺は横にいるプリメラを見つめがらため息をついた。
「いやーホクホクだねぇ♪」
プリメラが楽しそうに俺に話しかける。
しかし今俺はそんな気分ではない、どうやって彼女を病院につっこむか。
言葉を間違えては、彼女を傷つけてしまう…何より拒否されるだろう。
ここはさりげなくかつストレートに…
「そういえばプリメラ、この街に病院はあるのか?」
「びょう…いん…?」
――まさか…そうくるとは…思わなかった…。
結論から言うと、彼女が病院も知らないほどのアホの子ではなく、この世界にはそもそも病院というもの自体がないことがわかった。
医者はいるが、町医者のようなものばかりで、入院施設はないらしい。
また、魔法(無属性による治癒力活性化)や効力の高いポーションのおかげで、医者にかかることがそもそも少ないらしい。
この分ではウィルス、手術といった概念がないのかもしれない。
体調が悪くなれば、寝て治す。実にシンプルだ。
そうか…だからシールさんはプリメラを家においているのか…。
女手ひとりで大変だっただろう…今夜から俺も手伝おう…。
そして彼女には、優しく接してあげよう…。
俺はそう誓い、彼女と共にダーゼ家へ帰ったのだった。
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「プリメラちゃあああああああん!!1!1おかえりいいいいい!!」
家に帰るとシールさんがプリメラにぶちかましをした。
鳩尾にはいったのか、プリメラの意識が飛んでいる。
シールさんはそんなこともお構いなしにキスの嵐だ。
「ケイジ君も、おかえりー♪」
天使だ、天使がここにおられるぞ!
俺に向けられた極上のスマイル、ああ…ラブリーマイエンジェル…!
「ただいまです、シールさん。」
「ごめんねぇ…この子のお守り、疲れたでしょう…?
この子、母親の私が言うのもなんだけど、かなり馬鹿なのよ…。
おまけに妄想や自己陶酔も激しいし、発想も普通じゃない…。
まあそこが…かわいいんだけどねええええええ♪」
なるほど、彼女は元からああだったらしい、決して石が頭にあたったせいではなかった。
よかった、何も問題はなかったんだ………俺はほっと胸をなでおろしながら彼女の方を向いた。
……………彼女はシールさんの愛のチョークスリーパーで黄土色になっていた。