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星光の魔法戦士  作者: あさぼん
第1章 決意の時
9/13

日常

家に帰ってきた私は、数日ぶりに自室のベッドへと倒れ込んだ。

そのまま、ぼんやりと天井を見つめる。


『お前はもう戦うな』


優地の言葉が、ずっと頭の中に響いていた。


ようやく手に入れた、彼を守る力。

もう守られるだけじゃなくて、今度は私が守れると思っていた。

それなのに――


無論、優地の言っていることはわかる。

たとえ魔法戦士になったとしても、少し強くなっただけだ。

ニュースで見たことだってある。魔獣対応の最中に命を落とした人がいるのも事実だ。


それでも、私は――

今度こそ、優地の力になりたい。


()()()のお返しをするのは、今しかないのだから。


……ううん。

もう、迷わない。


そう心に決めたところで、少しずつ瞼が重くなり始める。


明日は学校だ。

ゆっくり休んで、明日に備えないと――


そうして私は、ゆっくりと眠りに落ちていった。



朝、目を覚ますと見慣れた天井が目に入った。

数日ぶりの自室。昨夜はすぐに眠ってしまったせいか、まだ少しだけ体が重い。


それでも今日は学校だ。

久々の登校というだけでも嬉しいのに、優地に会えると思うと自然と胸が高鳴る。


……けれど。

『お前はもう戦うな』

昨日の彼の言葉が、また頭をよぎった。


「……」


会いたい。

でも、少しだけ怖い。

昨日みたいな顔を、またさせてしまうかもしれないから。


それでも、逃げるわけにはいかない。

ちゃんと話そう。そう心に決めて、私は制服に袖を通した。


鏡の前で軽く髪を整え、鞄を持って階段を下りる。


「陽菜、早くしなさい。ご飯冷めるわよー」

「はーい」


食卓にはいつもの朝ごはんが並んでいた。

席につくと、お母さんがにやにやしながらこちらを見る。

「今日はなんだか機嫌よさそうね」

「え?」

「久々の学校だから? それとも優地くんに会えるから?」

「お、お母さん!」


思わず声を上げると、お父さんが苦笑する。

「図星みたいだな」

「ち、違うし……」


顔を伏せる私に、お母さんは笑いながらも少しだけ真面目な声を出した。

「でも、昨日ちょっと気まずそうだったでしょ?」

「……」


図星だった。

何も言えずにいると、お父さんが静かに口を開く。


「なんかあったのなら、ちゃんと話してこい」


その言葉に、私は小さく頷く。

「……うん」


朝ごはんを食べ終え、支度を済ませて玄関へ向かう。


「いってきます」

「いってらっしゃい。……あんまり無理しないのよ」


お母さんのその言葉に一瞬だけ足を止めたが、私はすぐに小さく笑って頷いた。

「うん!」


ドアを開けると、朝の空気が頬を撫でる。


嬉しい。

会いたい。

でも、胸の奥にはまだ昨日の言葉が残っている。


それでも――今日は、ちゃんと向き合おう。

そう決めて、私は通学路へと歩き出した。




道中ほとんど信号に引っかからなかったおかげで、今日はいつもより少し早く学校に着いた。

教室に入って辺りを見渡すと、窓際で優地が新一くんと話しているのが見える。

その姿を見つけた瞬間、私は自然とそちらへ足を向けていた。


「優地、おはよ」

「陽菜……おはよう」


少し気まずい。

それでも、ちゃんと私の気持ちを伝えなきゃいけない。


「昨日の話なんだけど……その、私は――」


「……なあ。俺、席外したほうがいいか?」


先程まで優地と話していた少年―――北見(きたみ) 新一(しんいち)が、なんとも言えない顔でそう言った。


「……あ、ごめん! 忘れてた!」

「忘れられてたかぁ〜。そりゃ仕方ない……わけあるかーい」


優地のことで頭がいっぱいで、新一くんの存在がすっかり頭から抜けていた。本当に申し訳ない。


「……放課後」

優地が静かに口を開く。

「放課後、改めて話そう」


そう言うと、優地は自分の席へ戻っていった。


その背中を見送りながら、新一くんが小声で言う。

「……もしかして、喧嘩か?」

「間違ってはないかな……。詳しくは話せないけど」


新一くんは窓の外に目を向けて、ぽつりと漏らした。

「……いいなぁ、優地は。彼女いて」

「喧嘩してるのに…?」

「いや、そうじゃなくてさ。そういうことで悩めるの、ちょっと羨ましいんだよ」


それから、困ったように笑う。

「あいつ、昨日俺にも相談してきたんだよ。喧嘩したんだけどどうすればいいかって。俺にわかるわけねーのに」

「ははは……」


苦笑いする私を見て、新一くんは少しだけ真面目な顔になる。

「あいつさ、陽菜ちゃんのことになると周り見えなくなる時あるんだよ」

「……うん」

「だから、その……うまくやってやってくれ」


そう言って新一くんが自分の席に戻ったのとほぼ同時に、朝礼のベルが鳴った。





昼休み。

いつもなら優地と一緒に昼ご飯を食べるところだけど、今日はあの雰囲気のままだし、先輩たちにも会わないといけない。

だから昨日相談していた通り、図書館のロビーへ向かった。


「陽菜ちゃん、こっちこっち。」

声の方へ視線を向けると、徳姫さんと天音さんがいた。

「昨日ぶりですね、陽菜さん。」

天音さんが挨拶するのを見て、私もお辞儀をした。


「早速だけど…」

徳姫さんがそう言うと、天音さんがスマホを操作して誰かに電話をつないだ。


「えっと…確か話すのはここらへんの管轄の司令でしたよね?」

「うん。このあたりの管轄、北支部の司令、赤井さん。まあ顔は強面だけど結構優しい人だから肩の力抜いていいよ。」

とはいうが、仮にも偉い人なので緊張してしまう。

『電話をかけてきたのは二人だったか。』

ビデオ通話の画面に顔が映る。画面に映ったのは、いかにも上役といった威圧感のある男だった。

『横にいる子が、この前話していた子か?』


「はい。この子がこの前の魔獣騒動を一人で納めた期待の新人です。」

「ちょっ、確かに倒しはしましたけど…!」


『二人もよくやってくれたと聞いている。だが、結果として君のお陰で二人を含めた多くの人が助けられたのだ。この場を借りて改めてお礼を言おう。』

そう言うと画面の人は深いお辞儀をした。


『改めて…魔除庁埼玉県北支部司令、赤井(あかい) 弘志(ひろし)だ。よろしく頼む。』

「はい…お願いします。」


『早速だが…単刀直入に聞こう。陽菜くん。魔除庁に正式加入し、魔法戦士として戦ってはくれないだろうか』

「…それなんですけど。可能なら今すぐにでも入りたいんですが…今、このことを知っている知り合いと揉めていて…」

「…もしかしてこの前の彼氏さん?」

徳姫さんが小声で言う。私は小さく頷く。

『なるほど…』


赤井司令は少し悩んでから言った。

『なら一旦は保留ということにしておこうか。こちらから強制することはできないからな。』

「でも、いつでも歓迎してますからね。もし正式に加入するときは、ぜひ私たちに声をかけてくださいね。」

「はい!」

横から天音さんが言ったので私は大きな声で答えた。

『では、切るよ。今回の人事異動でかなり人が来るらしいのでな。少し確認をすることにする。ではまた。』

そう言うと電話は切れた。

「人事異動で一気に人が来るって言ってたけど……そんなに増えるんだ。元々、こっちってあんまり人回されてないのに」

徳姫が呟く。

「正式加入は保留ですが、これから三人で仲良くしたいですね。せっかくですし、三人で昼ご飯を食べましょう。陽菜さんも一緒に。」

「いいんですか?」

二人は二年生の中でも有名な存在だ。

テストではいつも首位争いをしているような、いわゆる才女同士。

正直、そんな二人に混ざっていいのかなと、少しだけ気後れしてしまう。

「それでは一緒に…」

そこまで言ったところで私の携帯が鳴る。

「…すみません。」

そう言うと私は携帯を見る。メッセージを送ってきたのは優地。


『放課後、屋上で会おう。』

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