フラハー王との面会
翌朝、王との謁見の時間がやってきて、一同は謁見の間にきて着席する。
着席し、数分で王が部屋にやってくるが、その装いから一般の兵士と見分けがつかず、周囲の態度で判別するしかなかった。
琴葉以外の皆が席を立ち、王に礼をしようとしたのだが、すぐに王に座ったままで良いと手でジェスチャーをされ、着席する。
「ようこそ、フラハーへお越し下さいました。道中、お疲れでしたでしょう。昨夜はお休みになることはできましたでしょうか」
などと、王ですら国賓扱いをしてくれた。
のぞみは、感謝の意を述べ、既に伝わっているかと思うが、と経緯を一通り説明した。
王は黙って話が終わるまで聞き、頷きながら、
「私どもが聞いていたことと相違ございません。状況はまことその通りです」
とにこやかに微笑む。
「まず、推測ではありますが、あと一週間は敵は来ますまい。私どもは二週間後と睨んでおりますが」
と話し始めた。
「まだ時間的な猶予はあるので、今日、明日はゆっくりとしてくだされ。この砦の中の全ての場所の出入りを許可しておきますので、ご自由に散策されるとよろしい。こんな小さな砦はエムエールではつまらないかもしれませんがね。で、三日後にはちょうど平野部で定期訓練があるので、そちらを是非ご見学下さい。ちょうど戦争の良いシミュレーションにもなるでしょう。もし、我が軍の欠点などがあればご指摘賜れればこの上なくありがたい」
そこまで言うと、一度琴葉達全員を見渡し、反応を窺う。
あまりの待遇の良さに、言葉が出ずにいると、異議なしと捉えたのか、さらに話を続ける。
「市場での買い物なんかは楽しいかも知れません。さすがに、この辺境でしか売っていない物もあるでしょうから、エムエールの方にもご満足いただけるかと思います。ただ、大変申し上げにくいのですが、お支払いはお願いできればと思っております。持ち合わせがないようでしたら、本国に戻られた後でも構いませんので。常に財政難な国情がございますゆえ、ご容赦下さい」
そういって、申し訳なさそうにする。
「いえいえ、とんでもない。王宮に個室まで与えていただき、その上、私的な買い物までご負担いただくつもりはございません。魔獣の宝石で可能であればお支払いはキチンとさせていただきます」
と丁重にのぞみは頭を下げるのだが、
「お支払いの件は感謝致します。ただ、ここは来賓用の建物ではありますが、王宮ではございませんよ」
といって、手を振る。
「私の家は、他の町の民と同じく、市中にありますれば、王宮などというものは存在しません」
といって、にっこりと笑う。
あとで世話係に聞くところによると、この国の王はあくまでも兵の中で最強のものがなるというだけであり、王という身分というよりも、肩書きを得るだけだそうである。
なので、生活も一般の兵と変わらないということだ。
ただ、名前は王になった瞬間に「フラハー」となるようであり、名前を受け継ぐといったところが正確なところなのかも知れない。
琴葉達はその王のふるまいに感嘆し、提案に従うのだった。
一通り、町の中を歩き、観察すると、市場で食べ歩きをしたり、服を買ったりと楽しんだのだった。
特に服に関しては、斬新さなどはなかったものの、エムエールでもかなり上質とされるランクのものが取引されており、皆買い込んだ。
また、武器についても同様で、質が高いのはいうまでもないことだったが、形状や重さなどの種類の豊富さがエムエールとは比べものにならなかった。
いわゆるオーダーメイド品と思われるような、同一規格大量生産といったのとは異なるものが平然と並ぶ。
ひとつひとつ手に取り、自分に合うものを選ぶというのはこういうことだと思い知ったのだ。
朝美は投擲用の槍を数本と、護身用のナイフ、鉈を買い、のぞみも投擲用のナイフと、「まきびし」といわれる罠用の武器を買う。
テラガルドは金属製の大盾を物色していた。
女子が市場での食べ物よりも武器を物色しているあたり、普通ではないが。
建物が、城壁よりも基本低く設定されていること、全ての建物が天井は平らになっていること、北の岩山から湧き水が得られること、出入り口は本当に正面の一箇所であることなど、多くの知見を得た。
基本的に岩づくりとなっており、火災には強いが、出入り口が一つな為、火災が起きたときには城壁外に逃げられないというのが構造上の欠点だろう。そのための最大二階構造であり、屋根伝いに逃げれる構造であると思われる。
籠城にはそれなりに強いが、侵入されると厳しいし、守りには不向きと言わざるを得ない。
慢性的な財政難もあり、兵糧も外部に頼っていることからも、籠城には不向きな理由の一つだ。
さらには、石作りゆえに、焼き払って撤退というのも困難なため、陥落した際は敵国にこの城塞が渡されることも想定しなければいけなかった。
軍隊による野戦が全てということがわかった。
それ故に、野戦で敗戦するわけにはいかない。




