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ダームガルス戦記  作者: あじさい
第1章 ノーリンドン
25/146

1-22

 ナヌラークほどの実力者になると、真剣勝負を想定した教練をできる相手はごく限られていた。

 ナヌラークが教練の相手として選びがちなのはバートンという男だった。

 実力が均衡しているらしく、バートンもまたナヌラークとの教練に快く応じた。

 バートンはナヌラークと並ぶ大男だったが、つぶらな垂れ目が印象的で、どこか人のよさそうな感じがした。

 胸毛はそんなに濃くなかった。

 言葉遣いは(どこか知れないが)田舎の訛りがひどく、私には聞き取れないことがあった。


 ナヌラークは槍でも剣でも激しく打ち込むパワーファイターだったが、バートンは守りを重視した堅実な戦い方をした。

 ナヌラークとバートンが模擬戦を始めると、私たち下っ端の隊士は自分たちの教練をサボって2人の模擬戦を見て、横から囃し立てるのが常だった。

 だが、マイクロフトが見回りに来たときには、呑気に観戦している訳にもいかなかった。

 マイクロフトは声を荒らげることこそないが、諦めと嘲笑の混じった顔をするのだ。

 それはまるで、「ああ、こいつらは戦場で真っ先に死ぬんだろうな」とでも言いたげだった。


 そんなマイクロフトも、ナヌラークやバートンと模擬戦をして見せることが度々あった。

 小隊長という立場上、隊士たちに自分の強さを見せておくことにしたのかもしれない。

 実際、相手が手加減しているようには見えなかったが、模擬戦ではいつもマイクロフトが優勢だった。

 ナヌラークとの試合では、2人の激しい打ち合いを見ることができ、見物の隊士たちも手に汗握った。

 一方、バートンとの模擬戦は、しばらく睨み合いが続いて、間が詰まると直後にはマイクロフトが勝っているという具合だったので、隊士たちはあまり熱狂できなかった。


 マイクロフトがニコラスと模擬戦をすることも無くはなかったそうだが、私たちの多くは見たことがなかった。

 さすがのマイクロフトもニコラスには勝てないのだということを、私たちはみんな知っていた。

 ただ、後で知ったところでは、2人がみんなの前で模擬戦をしない背景には、マイクロフトに対してだけはニコラスが遠慮するという事情もあったらしい。

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