ロネちゃんの悩み
私の名前はロネ、19歳です。
一人旅をして半年が経ちます。
今、私はある事に悩んでいるのよ、それは・・・。
旅を続けるか故郷に帰るか、どうかです。
ホームシックと言うのもありますが、
一人だとやはり寂しいってのもあるのよ。
リリーさん達が楽しそうで羨ましく思える、私も旅友達が欲しいのよ。
『何処かにいないかなー・・・』
独り言を言ってしまうほど寂しいのです。
故郷に帰れば親も友達もいるから帰ろうかな・・・。
そんな事を考えながら町を徘徊している時でした。
建物の間から私の目の前に、いきなり女性が飛び出して来たのです。
その方は私と目が合った瞬間に、
こちらに駆け寄って助けを求めてきました。
『あ、あの!助けてください!私、追われているの!』
私は余りにも突然の出来事が起きて困惑してしまった。
『えっ、追われているって・・・?』
私が彼女に声を掛けると、荒正しい足音が聴こえてきました。
女性が飛び出して来た建物の間から、
次々と男性達が走って来て女性を睨んでいた。
彼女は怖がって私の背後に隠れました。
『おい!そこの黒髪の女!
お前に用は無いから、そいつを渡してもらおうか!』
『そいつは俺たちを騙しやがったんだ!』
『絶対に許さねえ!!』
男性達はこの女性に対して相当お怒りのようだ。
この女性が何をしたかは分かりませんが、
私はどちらが悪いか確認をするために男性達に質問をしました。
返って来た言葉は余りにも男性達の身勝手な言動でした。
この女性が道案内をしてほしいと聴いてきたから、
勝手に気があると思い込み、
身体を触ると拒絶されて逃げられた事に腹が立ったみたいです。
もう・・・何て言葉を掛ければいいやら・・・。
『はぁ・・・それは貴方達が完全に悪いよ』
『ほう・・・渡す気が無いなら、お前も一緒に可愛がってやるぜ』
『良く見ると、結構可愛い顔しているしなー』
『へへへっ、楽しみだぜ』
この男性達には痛い目に遭わせないと駄目ですね。
さて、久し振りに運動をしますよ・・・。
私は背中に隠れている女性に声を掛けました。
『少し離れていてよ、あいつらをやっつけるから』
『えっ・・・?』
彼女はとても不安な表情をして見ていた。
大丈夫よ、私はこう見えても凄く強いですから。
私が相手に一歩ずつ近づいて行くと、
真ん中にいた男性が自分から来るなんて積極的だねー。
と戯言を言っていましたが、完全に無視をしました。
そして私は勢い良く跳んで相手の顔を蹴り飛ばした。
『グヘッ!!!』
蹴られた相手は地面に転がり、
左右にいた二人は何が起きたのか分からず呆然としていました。
私はいつも以上に低い声を出して忠告をしてあげた。
『二人もやられたいなら掛かって来ていいよ・・・』
二人は怖気ついて私に手を出そうとはしなかった。
私に見事に蹴り飛ばされた相手は、
鼻から血を流しながらも起き上がって私を鋭く睨み返していた。
『テメー・・・もう容赦はしないぞ!!』
隠し持っていたダガーナイフを取り出すと、仲間に呼び止められていた。
『おい、それは流石にまずいだろう!』
『落ち着け!グイル!』
どうやら左右にいる二人の方がまだ常識があるようだ。
グイルと言う男性は仲間の言葉を聴かずに、
私にダガーナイフ向けて攻撃をしてきた。
こんな攻撃で私に勝てると思っているのかな?
素早く左に避けた私は、相手の横っ腹に鋭い蹴りをもう一発入れた。
これも見事に飛ばされていた。
余りにも力を入れ過ぎて、どうやら気絶をしてしまったようだ。
二人は気絶をしているグイルに肩を貸して運び建物の間に戻り、
何処かに帰って行きました。
『これで一件落着と・・・』
彼女の方を振り向くと安心して腰が抜けたのか分かりませんが、
地面にぺたんと座っていました。
『大丈夫?立てる?』
『あ、はい』
私は彼女に手を差し伸べて手助けをしました。
立ち上がると彼女は両手で私の右手を握り、お礼をしました。
『助けてくれて、本当にありがとうございます!!』
『どういたしまして。
これから道案内をする時は気をつけなさいよ、じゃあね』
彼女と別れて、私は泊まっている宿屋に帰ろうとすると、
後ろから手をぐいっと引っ張られ止められました。
『あの・・・一人だと怖いから道案内をしてくれませんか?』
彼女の目を見ると、まるで捨てられた子犬のような目をしていたので、
ほっとく事が出来ませんでした。
『えーと、道案内は良いけど、
私はこの町の住人じゃないから詳しくないよ、何処に行く予定なの?』
『えと・・・宿屋に行きたいのですが・・』
『宿屋なら私もこれから行く予定だったから、ついてきて』
『はいっお願いします!』
『じゃあ、行こうか』
宿屋に向かう途中、彼女はずっと私の手を握って歩いていたので、
少しだけ気まずかったです。
名前も知らない女性と手を繋いでいますので、
私はこの気まずさを紛らすために名前を尋ねました。
彼女の名前はセリカ、年齢は私と同い年の19歳。
見た目は緑色の髪に長めのコートを着ていて、
ちょっとか弱そうな感じの女性だ。
セリカが自己紹介をしたので、今度は私が自己紹介をしました。
『私の名前はロネよ、旅人をしているのよ。
まぁ、もう辞めようと思っているんだけどね』
『えっ?旅を辞めるのですか?そんなに強いのに勿体ないです!』
私は疑問に思った、強いのに勿体ないとはどういう意味なのかな?
セリカさんに尋ねました。
『強いのに勿体ないとは?』
彼女は少しだけおどおどしていました。
『あ・・・すいません。気を悪くしてしまいましたか?』
『いえ、そうではなく、
強いから旅をするのと何か関係があるのかなーと思っただけよ』
そう言うと、彼女は俯いてしまいました。
『セリカさん・・・?』
『私もね・・・旅人なんだ。でも、旅を辞めようと思っているの、
好きだけど危ないもの・・・命がいくつあっても足りないわ』
彼女は歩くのを止めて落ち込んでしまっていた。
『私、モンスターにも襲われたりした事があってね。
今まで全部助けられたからこうやって旅をしているけれども、
逆に助けて貰えなかったら、今頃、生きていないと思うのね・・・。
もう一人じゃ怖くて旅をするなんて出来ない・・・』
なるほど、
セリカさんは旅をしたいけどこれ以上は危ないと思っているのか。
だから、強いのに旅を辞めたら勿体ないと言ったのか・・・。
私と旅を辞める理由が違うみたい、
私は寂しいから旅を辞めるから・・・およ?待てよ?
私がセリカさんと一緒に旅をすれば、両方辞める事も無くなるのでは?
セリカさんは私みたいな人がいれば、安心して旅を続けれるかもしれない。
私もセリカさんと一緒に旅をすれば、寂しく無くなるかもしれない。
これは・・・言ってみよう。
『あの!セリカさん!もし、良ければ一緒に旅をしてくれない?』
彼女は驚いて、きょとんとしていました。
『え?ロネさんみたいな人がいれば安心だけどね、
私みたいな人は足を引っ張るだけな気がする・・・』
『そんな事はないよ!私が旅を辞めようと思っていた理由は、
一人だと寂しいから辞めようと思っていたの。
だから、セリカさんと一緒に旅をすれば寂しくないかも!』
彼女は目には涙が溢れていました。
『私・・・まだ旅をしたい!
お願いします、一緒に旅をさせてください!』
『うんっ、一緒に旅をしよう!セリカさん!』
リリーさん、スフィアさん、フワリちゃん、
私にも旅を共にする仲間が出来ましたよ、もし逢えたら紹介したいですね。
それから二週間後の事です。
○
『んー、この苺とても美味しいのー!』
『この林檎も美味しい!』
『この町の露店に売っている物は全部新鮮だな』
私達はいつも通り仲良く、今日は露店巡りをしています。
それにしても、この通りは人が多いです。
たまに肩がぶつかりそうになります、
気をつけないといけませんね・・・。
そう思った矢先に人にぶつかってしまい、
相手の方が倒れてしまいました。
『あっ、ごめんなさい!その、怪我はないですか?』
『いたた・・・うん、大丈夫よ。
こちらこそごめんね、余所見をしていて・・・』
『セリカ!大丈夫!?』
人混みの奥から心配そうに女性の方が駆けつけて来ました。
『人が沢山いるから気を付けないとダメだよ!』
彼女は転んでいる女性を手助けして起こしてあげていました。
『すいません、こちらの不注意で・・・』
『いえいえ、こっちも余所見を・・・』
私と彼女が目が合うと、二人で驚いてしまいました。
そう、目の前にいたのはロネちゃんでした。
『ロネちゃん!!!』
『リリーさん!!!』
『えっ?ロネの知り合い?』
緑色の髪をしている女性は、この状況に困惑していまして。
まぁ、そうですよね。
5人中4人が大声を出して驚いていますので、
何事だと思いますよね。
それよりも、この女性はどなたなのかしら?
ロネちゃんが私達に紹介をしてくれました。
彼女の名前はセリカちゃん。
二週間前にロネちゃんと旅先で出逢って友達になり、
一緒に旅をしているみたいなんです!
出逢い方を尋ねると、セリカちゃんが追われていた所を
ロネちゃんが助けてくれたみたいです。
『えっ、ロネちゃんってそんなに強かったの?』
『あれ?言っていませんでした?格闘技を10年やっていたよ』
『いや、初耳だ・・・凄いな』
『かっこいいのー!』
『いやー、そんなに褒められると照れますよー』
ロネちゃんとスフィアってどっちが強いのかなー?
と思った私でした。
取り敢えず、立ち話も何なので近くにあった喫茶店に入って、
ゆっくりとお話をしました。
楽しくて何時間も話をしていると、
店員が来て注意をされてしまいました。
『もう3時間もいますが・・・』
『あ、すいません』
私達は喫茶店を出て、お別れをしました。
『また何処かで逢いましょう!』
『今日は楽しかったです、ありがとうございます』
『うん、またね!』
『ロネちゃん達も気をつけて旅をしてね』
『またなのー!』
ロネちゃんも旅仲間が出来て良かったです。
ロネちゃんとセリカちゃんの後ろ姿を見ると、
二人共とても仲良さそうにお話をしていました。




