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『第1話:インロックと、繊細系・麺形生命体』

俺葉「はぁー、宿題やった??」


統「やるやろ、普通」


俺葉「普通ってなんだろうなぁ……」


統「……深掘りすんな、うぜぇ」


俺葉(おれは)京一(きょういち)と坂道(さかみち)統(すべる)は、生まれた時からの腐れ縁だ。


家から徒歩5分にある『阿修羅高校』に通う高1の春。俺はオンボロアパートの2階・201号室で一人暮らしをしていて、統の実家はそのアパートから徒歩3分という超至近距離にある。


実家がすぐそこにあるくせに、統は毎日のように俺の201号室に溜まっている。


(この寂しがり屋め! あれだろ?「とりあえずお前に付き合ってやるよ」みたいなやつだろ? ツンデレも16年付き合うとただのストーカーだからな)


統「……で? ドアの前で黄昏れてんと、早く鍵開けろよ」

俺葉「あー……非常に言いにくい『概念』なんだけどさ」

統「なんだよ」

俺葉「鍵、母体(部屋)の中だわ」

統「インロックしとんのかい!!!!」


神奈川県本気ノ真面市(ほんきのまじし)の夜空に、統の絶叫が虚しく響き渡る。


統「どーすんの? 徒歩3分の俺の実家行くか?」

俺葉「いや、まずは腹が減った。コンビニという名の補給拠点へ向かう」

統「金はあるのか?」

俺葉「財布なら母体(部屋)の中で鍵と抱き合っている」

統「無一文じゃねぇか!!!」


結局、俺たちは徒歩1分のコンビニへ向かった。

自動ドアが開き、蛍光灯の眩しい明かりに吸い寄せられた俺は、迷わず麺類コーナーへと突撃する。


俺葉「おい統、この『繊細系・麺形生命体』を俺に召喚(奢)してくれ」

統「ただのカップラーメンを重々しく呼ぶな! なんで俺が奢らなアカンねん!」

俺葉「俺が財布を母体に置き忘れるという『神の悪戯』が発生したからだ」

統「堂々と人のせいにするな!!」


押し問答の末、統の財布からチャリンと300円をむしり取った俺は、会計を済ませるより早く、店内設置のポットからお湯をドバドバと注ぎ込み始めた。


統「おい正気か!! 会計前になにお湯入れてんだ!!」

俺葉「フッ……3分というタイムリミットは待ってくれない。伸びたらこの生命体の繊細さが損なわれるだろうが」

統「そういう問題じゃねーよ! レジの店員さん見てみぃ! 警察に通報するか迷って脳内サーバーダウンしとるぞ!」

俺葉「店員さん、どうすか? 意識が遠のく『虚無思考・無限流入(ヴォイド・インフロー)』の住み心地は」

統「店内で領域展開すなーーーっ!!」


冷ややかな死んだ魚のような目を送る店員さんに、命からがら300円(※お釣り1円は募金箱へ寄付)を支払うと、俺たちはスープを吸い始めそうなラーメンを手に、夜の街へと押し出された。


統「……で、これからどうすんの?」

俺葉「統の母体(実家)へ強襲(お邪魔)する」

統「俺の家を戦場みたいに言うな!!」


熟年夫婦か、と自分で自分にツッコミたくなるようなテンポ。

俺たちは春の夜風に吹かれながら、伸びゆくラーメンと共に統の実家へと足を向けるのだった――。

よろしければ次回も読んでいただけると幸いです。

鍵は小さいくせに大切なんだよなあ

次回もお楽しみに!

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