1/28
プロローグ
朝。
目を開けると、包丁を構えたサーファーが僕の上に乗っていた。
黒髪に浅黒い肌の見知らぬ男だ。年齢は同じくらいだと思う。ゴーグルをしていて黒のラッシュガードは水色のライン入り。壁にサーフボードを立てかけている。
サーファーは目が覚めたばかりの僕の首を包丁で容赦なく切り裂いた。僕はわけがわからないまま死んだ。
しばらくして、僕は再び目を覚ました。
サーファーはまだ僕の部屋にいて、包丁を丁寧に洗ってくれていた。
僕と目が合うと気まずそうな顔をして手を振り、玄関から堂々と去っていった。
僕はその間、金縛りにあったように動けなくて、声も出せなかった。
動けるようになってから確認したが、ベッドもパジャマも壁も床も、血で汚れたりはしていなかった。もちろん体に傷もない。
時間が経つにつれ、じわじわと「あれは夢だったんじゃないか。あまりに非現実的だ」と思えてくるが、もしかすると現実だったのかもしれない。非現実的なことって、案外起きるんだ。
だって、僕は兄さんと一緒にスケッチブックに描いた『この世ならざるものたち』が現実の怪異になったのを見たことがあるし、そいつらは今も東京で事件を起こしているのだから。




