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6、押し通る

 五人の戦士はゆっくりと夜道を進む。その姿に焦りも恐怖もない。無言で背筋を伸ばして歩む。


 ゴブリン達を見かけた人々は目線を外して道を空ける。完全武装のゴブリンに街中で会えば逃げるのが普通だ。人間が亜人達を圧倒して数百年。しかし、太古からの記憶が刷り込まれているのだろうか?


 屋敷の入り口には門番がいる。形だけではなく、戦う事が出来るだろう門番が二人、槍を手にして立っている。


「どうするのですか? 」


 リナの質問にダルトンが答える。


「押し通る」


 リナが慌てて引き止める。


「僕がまず行きます。一人目を攻撃する時に、皆さんが残りの一人をお願いします」


 正面突破するのは構わないと思う。門番が手練れであったとしてもこちらの人数が多いし、ゴブリン達だって素人とは思えない雰囲気を漂わせている。

 しかし、屋敷の中の人々に、敵が来たなんて優しく教えてあげる必要はない。静かに排除すべきとリナは提案する。


「我々は戦士だ。しかし、戦争をしたこともないのも事実だ。玄人プロに従おう」


 ダルトンが答えて、他の戦士達も頷く。

 リナは自身に玄人だと言い聞かせる。そして、時間をかけずに門番に近付く。待たせるとどう動くかわからないからだ。


「あのぅ、すみません」


 がたいの良い方の門番が睨み付けてくる。もう一人の門番が口を開く。


「こんな夜更けになんだ? 」


 リナはすまして答える。


「傭兵を雇ってると聞きました」


「そうだったとしたら何だ? 」


「いや、雇って欲しくて」


 二人の門番がリナを上から下まで見てから、顔を見合わせて笑う。そして、もう一度リナへ顔を向けようとした時、先程口を開いた門番の喉にナイフを差し込む。目を見開き、何かを言おうとするが何も言葉にならない。大柄な門番がリナを脳天からかち割ろうと槍を振り上げるが、頭上まで槍が動いた時には横腹に緑色の銛が刺さっていた。

 夜であり、注意が逸れていればこそだが、ダルトンは門にさっと近付き横合いから緑の銛で刺したのだ。銛が突き刺さった門番の口をリナが塞ぐ。銛が引き抜かれる時に声が上がりそうになるが、リナが首筋に止めを刺していた。


「早く次に行こう。フッガー家を潰す。ナパート族に手を出したらどうなるか教えてやる」


 同族意識? 仲間意識? 非常に強いとリナは思った。

 オランジェ村が襲われた時はどうだったろう……。盗賊どもが村の若い衆を何人か斬ったところで村は諦めていたと思う。たまたま真紅の月(ブラッドムーン)の師匠達が通りかかったから良かったけど、あのままなら盗賊の言いなりだったと思う。

 リナが強くなりたい、誰かを守りたいと思うようになった事件と今のゴブリン達とを比較する。


 例え専門家にならなくても、家族を守る為に、それぞれ戦士であろうとしているナパート族はリナのひとつの理想の形だ。彼らは仲間を殺られたら絶対にやり返すという姿勢を見せる、見せつける。


「早く進むのは賛成です。中からの敵の事もありますが、衛兵達が来る前に終わらせたいです」


 リナがひとつ気にしているのは、ナパート族の四人が復讐を果たした後の事を考えていなさそうなところだ。リナ自身は最悪この黒いローブを脱いで捨てればどんな事態になろうと逃げられると思っている。

 誰もそれこそ殺しあった敵以外に顔は割れていないだろう。もちろん師匠達のところの黒ローブとしての意味ではバレるが、ここからは逃げ切れる。師匠達には迷惑をかけるが彼等なら許してくれると信じている。


 門番達を寝かせて、屋敷の中へ入って行く。かなり広い中庭がある。そして、中庭を真っ直ぐ伸びる道がある。五人でその道を走る。姿を隠すものが何もないのだ。走るしかない。

 道の先には大きな館。三階建てくらいにリナには見えた。建物をじっくり見る事が出来ないのだ。道の脇に植え込みがある訳ではなく、中庭には背の高い木が植えられてる訳でもなく、後は気付かれまでにどれだけ進めるかだけ。見てわかるだけで、10人の私兵がいる。


 これは本当に戦争と一緒なんだと思う。戦争に行った事がリナにはないが、身を隠すものがなく、ただ正面にいる敵に突っ込むなんて、戦争以外に何がある。


 声を上げて、仲間に知らせた私兵の首にナイフを突き刺す。顔を一瞬でも反らしてはいけない。

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