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7、神の声を理解出来ぬ者達よ

 エルフの隊長率いる四人が庭に入り込んで行く。低いレンガの壁だからひょいと乗って入ってくる。エルフにとって壁でも何でもない。座り込むアイラトの元に一人残り、後方の五人はスキヤキ達に近付いてくる。さらに道の先にはこちらに駆けてくるエルフが数人見える。


 白き獣は虹色のオーラを発する。魔法の障壁だ。エルフの四人はその圧力に脚を止められる。

 歌姫は、突然剣を抜いて走り込んで来たエルフ達に引き下がる事なく、まっすぐ立っている。

 周りの猫達は再び鳴き始め、グレーの膜が庭を覆い始める。

 スキヤキはリナの手を取り、庭の中に飛び込む。スキヤキ達が入った後に猫達が作り始めたグレーの膜が黒くなる。黒いドームが庭に出来上がり、残りのエルフ達は入って来れない。


 外にいたエルフ達は魔力が付加された光る剣でドームを割り始める。



『スキヤキよ。申し訳ないが、カサンドラを連れて、この場を離れてくれ。まだ敵の援軍が増えている』


 霊獣ヘクトールの声が脳内に響く。スキヤキは言葉を返さず、周り込んでカサンドラの傍へ向かう。黒いドームへ走る亀裂の数を考えると外のエルフの数は間違いなく増えている。


「失礼」


 そう言って、リナの手を外したスキヤキはカサンドラを抱える。


「何をするのです」


「歌姫がいると、そこの猫ちゃんが本気出せないのさ」


 抱えられながらも、スキヤキをキツく睨むカサンドラ。そのカサンドラに声をかけたスキヤキは後ろを振り返らず、庭から家に向かい、家の後ろにある玄関口へ急ぐ。


 魔力を温存せずに戦いに臨んでくるエルフは脅威だ。それが複数、いや、集団ともなれば余裕はない。ヘクトールがどこまでのちからを持っているのかもスキヤキにはわからない。だが、何かを護りながら戦うのが大変なのはよく知っている。


 カサンドラとリナを連れて門を出ると、魔力の込められた咆哮が鳴り響く。


「何故、逃げるのです。ヘクトールが中にいます」


「ヘクトールの事を思うから逃げるんだ。とりあえずこの街の憲兵がいるところに行く」


「ヘクトールを置いて行けません」


「カサンドラさん、お前さんを送ったら俺がすぐに戻る。走れるなら走れ。救いたいなら走れ」


 カサンドラを降ろすと、カサンドラの手を引き、走り出す。

 カサンドラは口では文句を言いながらもきちんと駆け出す。


「いいか、リナ。憲兵の詰所に行く。そこで歌姫とともに待機してくれ」


 スキヤキにとって、リナは負担にしかならない。


「多分マドックと言う奴が憲兵隊長なはずだ。奴に連絡を取るように言えば……俺の名前は出すなよ、それでしっかり守ってはくれるはずだ」


 歌姫カサンドラは、ただ名前が知られているってレベルではない。国の要人だ。きっとしっかり守ってくれるはずだ。


 そう思い、詰所まで走りきった。


 ただ連絡を取る必要はなかった。



「何故、貴様がここにいる? それも歌姫様を連れて」


 スキヤキは舌打ちを何とか堪えて、返事をする。


「用心棒の仕事をしてるだけさ」


 マドックも舌打ちを堪えている。


「あの咆哮は何だ? 」


 ヘクトールの咆哮は魔力が強大だった。ここまで離れていてもはっきり魔力を感じられる。


「説明は後でする」


 マドックは顔を一度しかめただけで反論はしなかった。歌姫と知り合えた事をなかった事にするはずがなかった。


 スキヤキはリナにここに残るのもいいが自信あるなら、ダニエルを迎えに行って欲しいと頼む。


 また咆哮が響く。


 空の色が真っ黒になる。突然暗闇になり、雷が走る。

 ヘクトールの魔法か?

 エルフの魔法か?


 スキヤキは急ぎ駆け出す。


 雨粒が落ちてくる。

 額に、頬に、雨粒が殴りかかってくる。


 スキヤキが歌姫の家に戻って来た時、鼻に獣を焼いた匂いが入り込む。

 庭に進むと、ヘクトールを取り囲むように、エルフ達とローブを着た男がいた。


「悪魔よ。神の裁きはどうだ? 悪魔に未来など存在せん」


 エルフの隊長の声ではない。多分あのローブの男の声。声色からは年齢を感じさせる。もちろんエルフの実年齢なんてスキヤキにはわからない。ただ人間で言うなら年老いた者の声だ。


 スキヤキは門から中に入ったものの、庭には出れない。

 そんなスキヤキの脳内にまた響く。



『感謝する。我はこの姿を保つのが難しい。一度、還る事にする。カサンドラには無事に逃げたと伝えてくれ』



 白き獣の姿が白い霧に変わっていく。そして、その霧から声が放たれる。


「神の声を理解出来ぬ者達よ。貴様らに理解できるのは罰だけのようだ。心して待つがよい。間違えていた事を知るのだ」


 声が消えたのと同時に白い霧も消えた。

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