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4、表情が読めないなあ

 黒い蛇、いや、大蛇がその身体から隠していた魔力をあらわにする。御神木の前の石を中心にトグロを巻き、石を抱いているようにも思える。蛇の胴体の直径は人の身体の半分程。


 その蛇の大きな身体に恐れおののくヘリオス。


 その蛇の魔力の大きさに驚くスキヤキとダニエル。



 ヘリオスは剣を構える。そして叫ぶ。


「この化け物。身体がでかくたって怖くないぞ! 」


 ダニエルが大声で叫ぶ。


「神様、ラミア様、申し訳ございません。すぐ帰ります」


 スキヤキはじっと巨大な黒蛇を見つめる。その大きな蛇の胴体に流れる魔力を感じ取ろうとする。ついさっきまで隠していたとは言え、あそこまで小さかった魔力がここまでに膨れ上がるとは思えなかった。


「蛇では表情が読めないなあ」


 刀を構えたスキヤキは呟きながらも何かを見つけたい、何かあるはずと、観察を続ける。スキヤキは死ぬ気はないので逃げるという選択肢は手放してはいない。だが簡単に逃げるのも癪に障る。


 黒大蛇も動かない。ヘリオスも動かない。スキヤキもダニエルも動かない。

 アールマティだけいつの間にか少し離れていて、岩の一つに腰掛けている。



 ヘリオスはこの状況に押し潰されそうになってくる。魔物、いや、魔族と闘う事を夢で見た事はある。特に小さかった頃は、父親が勇者であるなんて言われて、夢見ない人なんかいるものか。

 自分が大きくなり、狩りをするようになると現実を知る。ウサギを狩れれば充分だ。狼や熊なんて逃げれればいい。まして魔物なんて……と。


 ダニエルは動かない。想像以上の魔力を放つ魔族。ここは何とか被害なく撤退したい。最初の小さい蛇どもに騙された。あの程度の眷属ならと隠れてる先を見つけ落として見れば……本体のこの魔力は何だ、これは間違いない、魔族だ。


 スキヤキはこの魔族を、いや、守り神をそこらの村人が倒した、封じたというのが疑問に感じた。一流の剣士や魔導師がやったのならわかる。だが自分がまともに斬りかかって倒せるだろうか? ラミアと呼ばれる魔族はじっと動かず、圧力をかけてくる。きっと心が揺らいだら一瞬で勝負が終わる。何か弱点があるはずだ。見逃すな。



 守り神ラミアと三人が緊迫した時間を送っているのをいい加減に飽きたアールマティが、よく通る声で優しくはっきりと語りかける。


「ラミアさ~ん。もうそろそろ終わりにしませんか? けして悪いようにはしませんよ~! 」


 アールマティ以外の者はその言葉にぎょっとする。何とかお互いに隙を見せないようにと踏み止まる、ヘリオス以外は。ヘリオスは完全に驚いた反射で後ろに振り向いていた。

 だが、次の一言で全員がアールマティに視線を向けてしまった。


「早く出て来ないと、ヘリオス君の首を切り落とすよ~! 」


 ヘリオスは何を言われているのか言葉の意味がよく分からなかった。ただただ呆然。

 ダニエルはヘリオスとラミアの関係を今一度思い返す。彼の父親がラミアの仇なはずだが?

 スキヤキは自分の目が節穴ふしあなであることを呪う。ラミアが自分達の前に姿を現した時の事を思い返す。ラミアの大きな黒い身体に目が行く前に自分が捉えたモノは?


 ラミアは本当の姿を現す。


 緑の右目と黄の左目が光る女性がいた。目が違うだけではない。彼女が人間でないことを表しているのはその黒い髪。髪が全て蛇。髪である蛇達は絶えずうごめいている。

 スキヤキはメドゥーサと言う伝説の化け物を思い出す。彼の元いた世界の神話に出てくる怪物にそっくりだ。彼が知るメドゥーサと違うのは、両目の色が違うこと、目を見たものが石になってないことだ。


 髪である蛇を除けば、それは可愛らしい容姿をしている。


「ヘリオスを殺さないで! 」


 スキヤキとダニエルはちっともわかってない。ヘリオスはまだボーっとしている。

 スキヤキはアールマティと可愛くなったラミアを交互に見ながら発言する。


「ヘリオスは殺しませんよ」


 アールマティはスキヤキを諭す。


「スキヤキ。目がいいのはわかるが、目にとらわれるな。たがら一流の先になれないんだよ。魔力の波長を感じるんだ」


 スキヤキは目を閉じる。先程まであったような圧倒的な魔力はない。強い魔力はある。だが迂闊に動けないような、緊張をいるような魔力ではない。

 いや、怖いどころではない。森に感じた優しい包み込むような魔力の流れ。



 あぁ、間違いない。森の女神だ。

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