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3、勇者の息子なんだしな

 朝、ヘリオスが三人を連れて村を出るときには、村の人々がかなり集まっていた。

 ヘリオスは村の人々の顔を見る。様々な表情が見える。彼は一人の女性の顔を見たところで視線を固定する。この小さな村でどうせ隠し事などできない。死にに行くのも同然の魔族退治。父はどんな気持ちで出発したのか? 父には愛した人はいなかったのか?


「セレナ……」


 ヘリオスは誰にも聞こえないような声を出す。口元を隠しているわけではないので、彼が呼んだ名前はわかる人にはすぐわかった。


 スキヤキはいつもの刀を持ち、アールマティは腰に短めの剣を差し、紅い複合弓を手に持つ、ダニエルはその低めの身の丈からすると信じられないような大きさの戦槌ウォーハンマーを両手で持っていた。

 三人を見た村人達の反応は大きく二つに別れていた。


 当然スキヤキ達は気付く。割に合わないと思っているダニエルは機嫌が悪い。スキヤキはダニエルをこづく。


「表情に出し過ぎだ」


 ダニエルは村人達に背を向け呟く。


「失敗を期待していた、している奴が多過ぎる」


「何か、俺が期待するたぐいのドラマとは違うよなぁ」


「ド、ラマ? ドラマか? 何だそれ? 」


「舞台。お芝居。まあ、深く考えなくていいさ」


 アールマティはいつもの麻の外套がいとうで、顔を隠しているので、この場にいるものは誰も表情を伺う事が出来なかった。





 森へと出発する。アールマティだけ馬に乗り、後は徒歩だ。距離はあまりない。

 ヘリオスは馬で行くことを不安がっていた。森の中にまでは馬を連れて行けない。足場が悪いからだ。すると馬は森の端でつないでおかなければならないが、安全かわからない。そして、アールマティは笑うだけで、何も説明をしなかった。


 森に着く。なんの変哲もない森だ。


 スキヤキは辺りを見渡し、何も無いことを再確認してから、瞼を閉じる。深呼吸をしながら神経を研ぎ澄ます。


「本当に守り神かもな」


 スキヤキは呟く。禍々しさの欠片もない。しかし、隠している魔力には気付けた。

 同じように魔力自体には、金儲けが好きな相棒も、宝探しが大好きな美女も気付いている。


「守り神かも知れませんが、村の家畜が殺されてるのは確かなんです」


 ヘリオスが自分の決心を再度固めるように話す。


「わかってる。大丈夫だ」


 スキヤキは実は楽しんでいる。ただの魔物でなさそうな事に。ヘリオスよりも先に森へ入っていく。巨大な魔力が溢れるほどあれば逆にどこに行けばいいか迷っていたかも知れない。だが隠しているからこそ魔力の場所が一点で読めたのだ。

 森の踏み固められた道を進む。道なりに進んで行って魔力の元へ確実に近付いているからだ。


 大きな、とても大きな木が見えてくる。道の終わりにその木はあって、木の幹の前に人と変わらない大きさの石がある。


「父がいつも来ていた場所です。森に来る度にここに花を供えていました」


 間違いなくここら辺だ。石そのものから魔力が出ているわけではない。巨木から出ているわけでもない。だか、秘めた魔力が近くにある。


「ヘリオス、神様か魔族かわからないけど、呼び掛けてみてくれ? 勇者の息子なんだしな」


 スキヤキは刀を抜き構える。ダニエルも戦槌ウォーハンマーを構える。アールマティはみんなより少し後方に立っていた。


「森の神ラミアよ。ここに現れて下さい。あなたにお願いがある」


 ヘリオスは緊張しながらも、はっきりと訴える。


「あなたが今後も私達の村を襲うなら退治させてもらう」




 『ふふふ、面白いな小僧。お前ごときが私を倒せるものか……。踊らされてる事にさえ気付かない憐れな小僧には教えてやらねばな』



 その場にいた四人の頭の中に直接声が響いてくる。声が止まったかと思うと、木の上から真っ黒な蛇が何匹も何十匹も落ちてくる。もちろんさっきまで蛇なんていなかった。突如現れたのだ。

 スキヤキの目の前に落ちた五匹の黒蛇も地に着くなり、身体をくねくねと走らせて襲ってくる。


 身体の近くまで迫ると蛇は口を大きく開け、鋭い牙を見せて飛んでくる。

 最小限の動きで蛇を交わして交わして、魔力の元を探す。蛇達の魔力はそれこそ薄い、身体に近いところから寄ってくる蛇を次々に切り捨てる。


「毒がありそうだ、切っても返り血には気を付けろ」


 返り血を浴びないようにしながら、スキヤキは蛇を一刀で仕留め続ける。


「我が眷属をここまでやるとは……」


 どんどんスキヤキが減らしていく蛇だが、それ以上に落ちてくる蛇が四人を追い詰める。


 ダニエルはフットワーク軽く、木の幹に近付いて行く。


「本体に来てもらわないとなん」


 そういうと戦槌ウォーハンマーで木の幹を思っいきりぶっ叩いた。


 ひときわ大きな蛇が落ちてきた。黒蛇なのは変わらないが、その瞳は緑と黄色が混じった不思議なものだった。


「さて、本気を見せてやろう、人間ども」


「落とされておいて良く言うよ」


 例え大きな蛇であろうと、ただ話せる蛇でしかない。そう決めこんで軽く答えたのはスキヤキであった。




 後ろでヘリオスを守っていたアールマティが呟く。


「どっちも甘チャンだ」

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