表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

13/70

3、願い事があるなら、悪魔に頼むのさ

「君の大事な人が亡くなったのかい? 」



 少年はパッと振り向く。見慣れない顔の男が立っていた。綺麗なシャツに、グレーのズボン。この辺りで見かけない男で、身なりがまともな奴を信じてはいけない。少年はその表情と姿勢でそう表現していた。



「亡くなった人に祈りを捧げるのは正しい」



 彼はそう言って、手を合わせる。少年は路地の角に向きなおす。少年は確かに亡くなったアリスに祈りを捧げているとも言える。






 アリスに謝罪していたのだ。自分がボール遊びをしようなんて言わなければ、彼女は死ななかった。自分が強く投げて、彼女の頭を越えていくような事をしなければ、彼女は死ななかった。


 あの男に少年がボールを当てなければ、彼女は死ななかった。


 威張りちらして、感じの凄く悪い男、レオニスに少年のボールは当たった。母から近付くなと言われていた新しい衛兵隊長は、この街に多くいる亜人達を毛嫌いしている。


 そして、噂通りに、ボールをぶつけた人間の子供ではなく、その人間の子供と遊んでいた()()()()()()()に矛先を向けた。


「三番衛兵隊、隊長への反逆行為だな」


 アリスは何が起こっているかわからなかった。


 子供同士がボール遊びをしていた。そのボールが通行人に当たった。怒られるかも知れない。そうは思っていた。だが、反逆行為?


 彼女が、ごめんなさい、と口にした時、彼女の腹にはレオニスの抜いた剣が突き刺さっていた。


 少年も何が起きたかわからず、どうしていいかわからず、声すら出せなかった。





「神に祈りを捧げるなよ? 」


 男の声に、少年は現在に引き戻される。


「な、なんで? 」


 少年はアリスに謝罪するとともに、レオニスに天罰が下る事を、確かに神に願っていた。


「神は何もしてくれない? 神は、君の大事な人を見殺しにしたんじゃないのかい? 」


 そうだ。神は助けてくれなかった。


「願い事があるなら、悪魔に頼むのさ。絶対に叶えたいなら、魂でも捧げればいい。君の魂に価値があるなら叶えてくれる」


「僕の魂になんか価値はないよ」


「どうかな? 亡くなった人を真剣に想うその姿に価値はあると思う。一度でいい、悪魔を信じてみることをおすすめするよ」


 男は立ち上がり、少年の肩を軽く叩いて、路地へ戻っていった。



「あの人、悪魔かな……」



 レオニスが剣で切り殺されるところを頭に思い浮かべる。その光景は、確かに神がしてくれるというより、悪魔がしてくれたというのがあっている画だと思った。











 スキヤキは結局酒場で話を聞くことにする。この酒場、つまり賭場の上で話を聞くんだから、レオニスの悪口しか出て来ない。


「情報収集って難しいなぁ。ダニエルの仕事なんだけど」


 つい最近の出来事として、ゴブリンの娘が言い掛かりで殺されたのを聞いた。元々、帝国と親しいとされているナパート族の子で、彼女の父が病で倒れ、収入の亡くなった家族、母と子の二人でこの北側の貧民街に流れてきたらしい。


「レオニスって、それだけ嫌われてて、ひどい性格でよく隊長になれたな。帝国自体が落ち目なんかなぁ」


「帝国にもましな人はいるさ。前の隊長さんは犯罪者には優しくなかったが、ここいらに流れてくる人達を差別したりはしなかったよ」


「それとな、兄さん。レオニスは斬りたがりなのよ」


「そうそう」


「あいつは、衛兵の武道大会の剣の部で優勝してな、わざわざ賞金を断って、この地区の隊長を希望したのさ」


「人間以外は斬っていいと思ってるのよ」



 後は、コリンティアファミリーのシマで話を聞くかと席を立つ。その直後、酒場に火が投げ込まれる。松明たいまつだ。


「鉄砲の打ち込みみたいなもんか? 」


 すぐに松明の火は消される。地下から出て来た奴らは火を投げ込んだ奴を追おうとするが、昨日、木札を売っていた年老いた男が止めて、指示を出す。


「お客さんに怪我がないか確認しろ。これくらいの事で慌てるな。親分の命令を思い出せ」


 その声に、みんなの足が止まる。


「親分には親分の考えがある。時を待て。お前らが考える事は、この町の皆さんの事だ」




 スキヤキは騒がしくなった店の外に気付く。一部の者達は怒りの声をあげている。だが、残りの者達は血気に逸る者達を抑えようとしている。


「いいか! 俺達には他に行く場所ねんだ」


「でもよ」


「大事になれば俺らみたいな亜人は追い出される」


「切り捨てられるんだ」


「どこまで行っても、所詮、縄張り争いさ」






 縄張り争いになるのはよくないか……。


 だが、見てみんとわからないよな。




 スキヤキは路地に出て歩き始める。


「コリンティアファミリーにも挨拶だけはしとくか」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ