怪しい人影と第一試合
おや、あそこに誰か……。
???
「やっと着いたぬ〜」
「長旅で変な語尾になってますです」
「………まあ、いいかな……?」
紫の髪の少女は、そう言ってため息をついた。
ぬ〜、なんて変な語尾を使ってる少年は、青と白を基調とした制服のような服を見に纏い、両手に穴あきの白い手袋をしていた。
で、その中央のですます少女は、白いフードを目が隠れるほどに被り、そのフードの元っつーかコート部分は、膝近くまである。フードがなければ、まるでワンピースか何かのようにも見える。
彼らは、やってきたのだ。
魔術最強の国家『ウェルベリア』に。
「通行許可証を」
門にやってくると、兵士が通行許可証……要するに、許可証か身分証明証の提示を求められた。
「はい」
「あざむ〜」
「………ん」
三者三様変人三様。
世界で五指に入るような変人強者が、入国した。
わーい。魔術大会当日でZO☆!
さっさと蹴散らしてアルマとかゆーのに会ってやろうじゃねーかこん畜生! そして願わくば稀有にアホヅラかかせてやる!
そんな思いを胸に、観客席に座った。
実況はない。審判が六人。貴賓席には女王やら他国の王かな? が座っている。
他を見回すと、まあ一般市民だったり、新聞記者かな? あとは出場者に出場を目指す魔術師くらい?
トーナメント制で組み合わせはくじ引きで公正に。
まあ本当に公正かは知らないけどね。
『安心しな。多少不公平の方が盛り上がるってばよ』
そーですか!
そんな話にゃ興味ねーですね!
てなわけで第一試合が始まった。
西門からはえーっと……。パンフどこだっけ?
あ、これこれ。えーっと? ルルティナ? 選手かな? エルフの公用語で書かれてるっぽくてよくわからない。
『それはアルティナだね。エルフ文字は「あ行」と「ら行」の書き方が似てるからね』
へー、そうですか。
いやなぜ知ってるしっ!?!
東門はクルシア=バーン? 選手らしい。
こっちは人だ。
『まあよく見とけなー』
ハイハイ。
『あー、エルフ についての説明は?』
『いるに決まってんだろボケ』
全く。こいつは人をなんだと思ってるのやら。
『エルフっつーのは森の守護種族でなー? 森人ともいうけど、結局ぁ森を守る種族だ。自然自体を大事にする傾向で、特に「木」を重視しとってな。そいで、「木」に追随する魔術魔法は相当神聖視されてっから、種族間で「木」の力を行使していいのは、森林に危機が迫った時と、族長クラスの偉い人だけらしい』
なるほど。森に住まう陰キャではなかったというわけか。
でも森林霊廟の大魔女は陰キャだし。
お、始まる。
緑の軽装を普段着か何かの上から着た、金髪ロングヘアの女性がアルティナで、赤っぽい荒々しい髪色のトゲトゲ少年がクルシアらしい。
魔力量はやはりエルフのアルティナに軍配が上がる。
が、攻撃力は髪色からしてもクルシア少年の方が高い気がする。
消耗線に持っていけばアルティナの勝ちかもしれないけど……。どっちが勝つかはやっぱりわからない。
試合が始まる。
……………………………
最初、クルシア少年が何をしてるかよくわからなかった。が、観客席から見れば、それは別だ。
彼は一回転し、小さく圧縮した炎魔術を上に、曲射狙いで発射したのだ。それも何発も。
要するに、相手に手元を見せずに、発射したわけだ。
しかし、それがなんの意味もない行為だなんて納得してやるほど、アルティナ女子も甘くなかった。空に何かあるのでは、と上空を警戒しながら動いている。
あれ? 接近戦?
『クルシアの曲射が上空で、初見の相手である、と仮定した上で、自分の接近主体の魔法戦に持ち込み、上に放った何かを無効化する狙いだと思うよ』
つまり、相手の戦略の一つを潰す方向にシフトしたわけだ。
てことは、二人とも初見同士。初参戦かな?
『だろうね。どっちも探ってる。相手の出方を伺って、それに対応したいんだろうね。つまり、奇襲を仕掛け、一ケーを狙うか、もう硬直状態で忍耐勝負に持ち込むか、だけど。今回は……』
アルティナが接近魔法戦を挑んだ。この時点で、硬直はない。そして、これにクルシア少年がどう反応するかで全部が決まる。
接近魔法戦。「水」と「土」の目潰し魔術を使い、かつ領域魔法の応用で、足元の地面を軟化させ、動きを鈍らせ、そこに「土」魔法で生み出した棍棒を投げつけつつ、「土」魔術の一ノ型と二ノ型の同時詠唱……。
多重詠唱とかいうけど、どうやるんだろ。
『確か、脳内で一つ、口頭で一つ、指でかいて三つ〜四つとかで、大体三つほどができるな』
すごい面倒だった。
しかもアルティナ、口頭で目潰しで発動2秒、同時に脳内で領域魔法1秒。先に領域魔法が発動、それと同時に指で書いた術式で棍棒アタックしつつ、脳内と口頭で一と二を発動する。
ぴったり計算された行動だ。
クルシア少年は……、うまく反応できず、モロに受けた。
しかし、さすがは熱血系っぽく見えるクルシア少年、悲鳴一つ漏らさず、受け切って見せる。
アルティナの行動に湧き上がった会場がさらに湧き上がる。まさか……。
始まってしまった。
肉弾戦をも交えた、近接魔法戦が……。
『おい、なんでもありかよ……』
本当それな。
こんなのがありなら剣術もありなんじゃ。
クルシア少年、流石に女性の大事な場所は避けた攻撃している。蹴り主体で手で術式を書きつつ、口頭で魔術を唱え、脳内でバフ系を唱えているように見える。
対して、アルティナは、足と手を巧みに使い、空いた手で術式を、頭、口頭でも術式を唱えているようで、やはりクルシア少年と比べると、明らかに接近戦なれしていることがわかる。
もう、一方的にも見える。
けれど。
クルシア少年は、立ち上がる。
幾度も。幾度も、幾度も。
例え、何があろうとも、どこを攻撃され、どんな風に吹き飛ぼうと、場外ギリギリで持ち堪え、また飢えた狼のように飛びかかる。
アルティナの、冷静な顔も、だんだん苦しみの顔に変わってきた。
痛いのだ。
クルシア少年のように、体格に恵まれているわけではない彼女にとって、彼の考えなしの肉弾戦は、明らかに疲れる。
その上で、魔法戦もしている。
足が悲鳴を上げ始めたのか、動きも鈍くなっているように見える。
もちろん、クルシア少年も同じだ。
クルシア少年も、痛みに耐え、身体中が悲鳴を上げる中で戦っている。
『………っ』
自然と、手に汗を握ってしまう。
クルシア少年は、本当の本当に、消耗戦をしようとしている。
そして突如、稀有が声をあげた。
『まさか……ね……』
私には、最初何もわからなかった。
だが、途中で気がついた。
アルティナには、もう素早く逃げ切る力なんてない。
もし。もしも。
クルシア少年がこれすらも、接近戦すらも見抜いて、最初に上空に放っていたのが、三ノ型だったら???
ある条件を揃えると、魔術の発動時間を思いっきり短縮できる。それこそ、一回転するうちに発動できるほどに。
その条件の一つとして、脳内、口頭、手に分けて詠唱することで、術式をより早く完成させる、というものがある。
クルシア少年は、それをしていたのでは?
そして。そして、そして。
クルシア少年は、アルティナに飛びかかり、あろうことか、抱きしめた。
ハグだの抱擁だの、そんな生優しい物じゃない。
逃さない、という確固たる意志の籠もった、全力を込めた、拘束である。
そして。
二人もろとも、三ノ型が、降り注ぐ。
高威力単発の、三ノ型が。
アルティナが、ダウンした。
ダウン、要するに、生命の値が0になった時、フィールド条件で、15%回復する、ということだ。
そして、クルシア少年の体力は、1だった。
『その勇姿に決意あれ』
体力が0になった時、3回だけ、1で耐え、耐えた時、4秒間、一切のダメージを無効化する。
接近戦だろうが、中距離線だろうが、どうでもよかった。
彼は、最初から、自爆狙いだったのだ。
謎の位置に投稿されてしまったカレンちゃんの設定。どうしよ?
あと稀有は精神世界内だったり、カレンと会話するときに限り、キャラが崩壊する、という謎設定を追加しました。
↑自分でも意味不明。




