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選定の騎士 Ⅰ






 そっと。



花を置く白い淡雪のような浴衣を着た灰色の髪の少女『初雪』。単純に墓参り。十五人で結成した〈十五の罪徳〉、又の名を〈Keter〉は、わずか動員二人のまま、消え去ってしまった。もう一人のメンバーにして、〈Keter〉を引き連れてくれていた、魔神の如き戦力を持つ白髪灼眼の少年・ケテルの死亡により。


 ケテルはよくやってくれた。身を挺してまで、たかが同志と割り切った部下である『初雪』を、名前すらもらえなかった彼女を、助けた。

十分、そう思っている。彼は何か不満を感じているだろうか? 『七星の闇』もかなりの打撃を受けた。これからはちょくちょく『守衛の大罪』から迷惑を被りそうだ。


 ちなみにケテルが戦ったのは『守衛の大罪』の第三位【深淵の歩】とかいうやつ。

普通にそういう種族らしいけど。深淵の種族だとか。まあ人間をそのまま超強化した感じだそう。


 アビスウォーカーという風にも呼ばれているみたいだが、あの強さ……。魔神すらも超える、そのくせして、ただの歩兵。周の軍師・太公望呂尚が書いたとされる『六韜』という書物によると、兵力は戦車……馬車に乗った兵士……1台で騎兵10騎に相当し、騎兵10騎は歩兵八十人分の力があるとした。

つまり、アビスウォーカーの騎兵に当たる奴はあいつの八倍の強さを持つことになる。


そんなやつと互角な時点でケテルもヤバかったんだろう。


 『初雪』は乱雑なケテル をそれでも勤勉と評し、慕っていた。

側から見るとケテルはヤンデレ少年に見えたりもした。『初雪』はそんな彼の一面に惹かれたのだろうか? 誰も信じず、ボクとアイリスだけは信じてくれた彼を。主君だけは絶対に裏切ろうとしない、彼の一面に。


「…………もう、いいのかな?」

「はい。次の仕事をこなしましょう」


 すでに新人はいる。仕事……というより戦力拡大の布石は打っている。


「右方第5番 左方−85番 前方第111番 後方第11番」


 その声とともに、一人の少女が現れる。


「彼女が新人ですか?」

「うん。まあ、そうなるね」

 不思議なものを見るように、『初雪』は彼女の現れた空間を眺める。


「この能力……いえ、現象は、〈神子〉? いえ、神子程度とは桁が違う……〈選定に落ちた〉?」

「うーん、後者だね。この子は〈選定落ち〉の半神。ヴァルキリーと同じ立ち位置。ボク的には結構強いと思うよ」

「次元が、違うと思います。〈選定落ち〉ですから魔神級ステータス以上ですよね?」


 どうだろう。

手合わせしたけどそこまで強い、ってわけじゃなさそうだった。どうやら術式の組み立てに時間がかかるらしくて。


「あと無口」

「急ですね。それで喋らなかったんですか。納得です」

「超絶美少女」

「何ですか? アイリス様の時に閉じていたはずのロリコンへの入り口が開いちゃいましたの?」


 口調変わってる気がする。そしてボクは美幼女とは言っていない。

それに、この子は〈選定落ち〉………何それ? その場の雰囲気で知ってますよオーラだしちゃったけど、何ですか、それ?


 〈選定〉?


 何それ。


「とりあえず、そろそろ『七星』の方が動き出すから、その子と頑張ってね〜」

「丸投げですか……」


 呆れられてる気がする。

だって仕方がないんだもん。この部隊はあくまでも『七星』直轄ではなく、ボクとアイリスの個人的な部隊。『七星』の直轄である『ナンバーエージェント』とは違うわけで。


 知られてしまうとこれまた厄介。


 察しのいいノルンやどこにでも現れるシズあたりには特に気をつけなければならない。

さてさて。ここで問題となるのはやはりシズ。〈転移の神子〉は伊達じゃない。自分の任意の範囲であればどこだっていけるのだ。さすがに下手に飛ぶ気はないらしいが、こうすれば、簡単にとべる。


 ボクの元に転移。


 こうすれば、安全に、そして何よりも確実に飛べる。距離があればズレが生じるが、神子。そんな事は滅多に起こらない。その距離が何千億という単位でもない限り、大きなズレは発生しない。


 特に、細かく決めていれば、よりその確率も下がる。


 これが神子の特徴。

ちなみに、神子<神=魔神<魔神王みたいな感じらしい。魔神王がトップ。ただこれはあくまで人が知ることのできる範囲。これより詳しい枠組みもある。〈選定落ち〉のような、例外が。


 ケテルの墓に一輪の白い花をおいて、ボクは彼の墓に向かって……、





「また、会おう」





 と。


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