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闇夜に紛れし閃光XV

「あら、随分と早く終わったのね」

「…………」


 淑女然とした女性は、用悦に微笑みながら、そういった。

彼女のすぐ近くにいるジブリールは優先して救うべきだな。時雨は意識が飛んでいるだけだろう。そこまで心配していない。


「強いんだな」

「あら、そう言ってもらえると自信がつくわ。まあこれでも五席だもの」


五席……ということは第五位か。五位でこれか。一位は化け物かな?

それにしても、隙がない。あるように見させている感じか。二人はこれに引っかかったのだろうか?


 こいつは隙だらけに見せているだけで、ボクですら突っ込むのに躊躇する。

下手に攻撃すればそれこそ即死だ。どういうタイプか、見極めなければならない。それは向こうも同じか。それか、こっちだけか。


「あなたの能力は魔術やら能力やらの破壊、原理の破壊、セフィロトとクリフォトの自在操作といったところかしら」


 だいたいあってる。セフィロトとクリフォトってこっちでも普通なのかな?

向こうでも聞いたことなかったようなものなんだけど。

さて、ほとんど知られているのだから、対抗策は持っているだろう。では、その対抗策とは何か。神子の力ではないだろう。


 ではなにか。質量負けは今までなかった。質量負けかな? と思った瞬間しかなかった。ノルンくらいしか質量負けは起こせない。ノルンは置換することで質量を膨大にできる、らしい。


「私の能力は〝無〟。ただ対象の把握している能力を強制的に、何よりも優先して封じる能力よ。あなたの能力も例外ではないわ。限度として、今は三つまでだけど」


 つまり、〈世渡りの剣〉と【破壊】の実質三つのスキルを封じるということか。チートじゃん。何よりも優先される現実をねじまげるのはもう無理だろう。多分既に封印されてる。


 つんだか?

いや、もとの身体能力で倒す。


 ピュン、とレーザー光線でも飛んだかのような風切り音とともに、淑女然とした女はボクの方むけて走ってきていた。

ふだんより動体視力の落ちている今、早めに対処しないとまずい。


 走ってくる彼女が反応できてないふりをするボクの目の前まで来て、止まった。


くる。

そう思った瞬間、そっと。彼女の柔らかい腹部に手を当てた。そしてそのまま………


 プチ、という肌の破ける音がした。

暗器カーテナ。イギリスの国宝たる剣とは別だが、短い、という意味合いがいったりだったので、カーテナと名付けさせてもらった。


「ぐっ………」

「あはは。油断しすぎだってーの」


 蹴り飛ばす。

とくに先ほど刺したところを点で狙う。ノルンにもらったのが通気性重視の靴だったせいか、少し血がにじんでしまったようだ。あとで浄化魔法でもかけてもらうか。


「っ………。あなた、ねぇ………」

「これが戦場だよ。命のやり取りをしているのに、卑怯な手を使うなと? いつ、ボクが君と正々堂々と勝負してやるといった? 数の卑怯、容赦ない攻撃、どんなものでも結構。すべてボクは利用する。【召喚】」


 唯一ボクが使役する存在。序列第三位魔神サタン。

今ではボクが主。悪魔界の王ではないが、それでも実務はサタンの持ちだそう。支配しているのはベルゼブブだとか。


『久々に呼ぶと思ったら………』

「悪いね、こんな雑な相手で」

『いんや、こいつ結構強いな』


 あの時とは全く違う、完全に人の違う、しゃべり方。まるで親友か何かに話すかのような態度。まあ好みといえば好みだな。それに普通の青年じゃん。

これが、魔神ですか? 広告詐欺よりも悪質だぞ………。


「あら、召喚も使えるのね。でも、私の前であなたの能力は効果をなさない」

「それはどうかな。君はボクとこいつ、どっちの能力を抑えるべきだと思う?

「それはっ………」


 そう、序列第三位の魔神の能力を抑えようとも、三つごときでは微妙なラインだ。いや、それすらも嘘か。もしや………。いやまさか、それは嘘で対象の特定のタイプの能力を封じるのか。


 自分に不利な対象の能力の排除、か?

そりゃさっきのように単純な身体能力で負けていれば勝てないだろうが、能力で穴埋めしているようなジブリールは勝てない。そして何よりも気になったのが、この能力は神子の力に追随するのではないだろうか? なぜならこれでは時雨の能力まで封じれたことが証明できないからだ。


 神子の力は同じ神子かそれ以上の力でしか排除できない。〈原型の世界〉のような上位世界につらなるスキルなら最低限通じるかも。しかし、そう言った能力も少数。今回のような完全に封じるタイプではない。


「なるほどね。君は【封印】の神子で、一対一に向いたタイプなのか」

「………黙っても意味ないわね。そうよ。でも、一対一ではないわ」


 ふぅむ、最悪のパターンだ。複数の対象を設定できるらしい。

さて、ここでもう一つ。この神子の力は〈世渡りの剣〉に通じると思っているみたいだ。これを利用するのと、奪命剣にため込んでおいた兵士の魂。


 これを今同調させればいい。ついでに実験として、人の魂ならどれほど持つのか、副作用はあるのかを知っておこうと思う。


「あら、聞こえなかったの、私が把握している能力をすべて封じるのよ」


 あれ、ちょっとまてよ。サタンくんって能力に関しては〈憤怒〉をおさえればそれでほぼ全部止まるんじゃ……。

それをいってしまうと、ボクも〈奪命剣〉と【破壊】を抑えられるとすべて止まるし、それ以前に固有スキルで止められると根本的に終わる。


 ステータスの低さは折り紙付き。せいぜいボクのステータスの大半は〈奪命剣〉の稼ぎ。ボク自身のステータスは結構低い。

それにもともと何レベル分か上がっていなかった分がある。総合的にステータスが通常より低く、そのうえ元のステータスも低いので上昇率も平均以下。あ


 天敵? いや、でもこいつがボクの仲間をつぶした限り、こいつは永遠と宿敵。

でも、ボクにとってもっとも相性の悪い相手になることは違いない。そういう意味では、最悪の天敵。宗教関連でいえば、神敵認定するほど。


「名前を聞こうかな。これから天敵になってくれそうな人」

「あら、こっちとしては取るに足らぬゴミムシに見えるのだけど」

「そうかい、残念だね。ボクに腹掘られた人」

「言葉の使い道が間違っているわね。まあ表し方はあっているわ」


 足で掘ってあげました。

あれけっこういたいんだろうなぁー。


「それに、意外といたそうだったよね」

「喧嘩を売りたいのかしら」

「すでに売ってきた身で何が言いたい」

「「…………」」


しばしの間。


サタンの方にちらっと眼を見やるとジブリールの治療を終わらせ、時雨の方を看病していた。すげぇ、何もいってないのに動いてくれてる。


 そんな間もあって、先に彼女が動いた。


「『守衛の大罪』が五席、『淑女』カイネル」

「へぇ。『七星の闇』トップ。今は無名だけど、鬼灯稀有」


 互いに名乗りあう。


「東方の生まれなのね」

「まあ、そんなかんじだよ」


 そして、二度目の硬直と沈黙。






「「………いつか殺してやるッ‼︎‼︎」」


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