第8話;あっちでも、こっちでも その3
お久しぶりです。
地図片手に街をぶらつく。一見観光している様にも見えるのだが、いましているのはそんな穏やかな事ではない。
危険と隣り合わせの『猫探し』だ。
地図には12箇所にバツ印が打たれており、その一つ一つが反領主勢力の集会場となっている。
次に向かう所で10箇所目となる。ここまで2日掛かっており、かなり疲労が溜まってきている。体力的な事も去ることながら、精神的にもかなり疲れている。
その理由は、猫を探す方法にある。
まず『気配感知』で中の様子を伺い、人の気配が無ければそのまま、中に侵入して猫探しを探す。
人が居るならば、後回しにしてそれでもまだ居るようならば、『気配遮断』と『隠形』を使い、姿と気配を消して捜索する。
そんな事を10回近く繰り返して今に至る。
ここは町外れの丘の上にある屋敷。立派な外見で手入れも行き届いている様にも見えるがここには誰も住んでおらず、反勢力の集会場として使われている。
だが昨日、モニアが集めた情報によると、ここ1ヶ月くらい頻繁に人が出入りして、さらに夜遅くまで明かりが付いている事も有るらしい。
そんな訳で今日はこの屋敷の捜索から始める。
何の躊躇いも無く『気配感知』を発動させる。
すると明らかな違和感に気づく。
「この屋敷は中の人の数が多いな……」
今まではせいぜい2、3人だったのがここには20人近くが集まっている。中には明らかに気配の強い者が複数人いる。
そこでお馴染みの『気配遮断』と『隠形』を発動させてご丁寧に正面から入る。
気配の分布は2階に集中しており、1階にはあまり気配を感じないが、何処に居るか分からない為、一応探してみる。
結局、30分ほど探したが見付からず、2階へ上がることにした。
2階の部屋数は1部屋しか無く、大きな扉で仕切られただけの様だった。
その前には見張りか警備かは分からないが2人両脇に立っている。
流石に正面突破は不味いと考えて、人が出で来るタイミングを見計らう。
少しして扉が開いた。中から数人が出て来て、扉が数瞬開く時間が出来た。
そこを見計らい、僕は部屋の中に入る。
そこは広いだけで、豪華な玉座とテーブルが置かれてある以外何も無い部屋だった。
玉座に目を凝らすと、その上で寛いでいる猫を見つけた。
(間違いない……あの猫だ……)
僕が猫に近付こうと一歩踏み出した瞬間、何かが途轍もない勢いで僕目掛けて飛んできた。
寸でのところで避けた僕は、恐る恐る背後の壁を見る。
そこには刃渡り20cmほどのナイフが刺さっていた。
「げへへへ……そこに居るのは誰がい?有象無象の目は騙せても俺らの目は騙せないぜ?」
僕はそいつと目があった。
(どうやら本当にバレているらしいな……)
僕は大人しくスキルを解除する。
「ほぉぉ?餓鬼か……げへへへ……おもしれぇ、掛かってこいよ」
僕は戦闘態勢に入る。相手も同じで両手にナイフを持つ。
「げへへへ……自己紹介がまだだったな、俺はナイフ使いのザハだ。ただの雇われの殺人者だよ、宜しくな」
「悪いけど僕は名乗る気はないよ」
こんな奴に名乗っても仕方が無いので僕は名乗らない選択をした。
だがその後の展開は想像を大きく超えたものだった。
「げへへへ……、そう釣れないこと言うなよ、Cランク冒険者のフェイ=ローレン君?」
「な、何故僕の名前を……?」
予想外過ぎる発言に僕は驚愕した。何がどうなっているのか分からなくなっていた。
一介の犯罪者に僕の名前なんかが知れているはずも無い。
(ならどうやって僕の情報を知ったんだ……?)
様々な考えを巡らせるが何一つ分からない。
「それは私がザハに教えたからだよ、フェイ君」
突然、部屋中に響いた。その声の元を辿ると、一人の男が脇から姿を現した。
その男は、僕の見知った顔だった。
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