第7話;『クズ』とは……【1】
「ふぇ?」
驚きの余り、腑抜けた声が出てしまった。
何が起きたか全く分からなかった。最近、倒すのが早くなったと言っても、せいぜい数分は掛かる。それを一刀で絶命させたのだから、その違いが生み出す利益は僕にとっては大きい。これについてじっくりと考えはしたかったが、そんな隙、今は無い。確かに一刀で仕留めはしたが、完全にこの力を信用した訳ではない。やはり逃げるのが一番だろう。
(今はこの現状を打破する事に集中だ)
オーク達は一刀で絶命した仲間を見て慌てている様に見える。作っていた陣形が僅かに崩れている。
(今だ!!)
僕は崩れた陣形の一部に隙間を確認し、駆け出した。その隙間を縫ってサークル状の陣形の外に出た。そしてそのまま走り続け、オークの不快な声が聞こえない所までやって来た。
ちなみにオーク達は僕を追う為に、僕が出た隙間から出ようとして将棋倒しになった。
一先ずピンチを脱した僕は、歩きながら考える事にした。
色々考えたが、納得できる結論には至らなかった。だが以前までこの様な事が無かったことから考えると、恐らく『クズ』が関係しているのだろう。
もう一度試してみるのが良いだろう。そう思い、辺りに手頃な魔物が居ないか見回した。
「おっ、スライムがいるな。」
スライムは何度斬っても、核さえ有れば元に戻ってしまう。だから基本的には核を斬って倒すしか無い。核は常に体の中心に有るのだか、この森のスライムは体の中で核を移動させる為、非常に倒しにくいと本で読んだ事がある。
僕はスライムを見る。何だろうか、この感覚は。さっきの様に赤い線は見えなくなっている。それになのに何処を斬ればいいかが何となく分かる。言葉では説明しにくい感覚だ。
そして僕が思った通りに剣を振ると、核が丁度剣筋に移動して斬れた。
単純に凄い……もしかして『クズ』って何か凄いものなのかも知れないな……
ただ考えるには余りにも情報が少なすぎる。
僕は考えるのを止めて、王都へ急いだ。
◇◇
オークの一件の後は特に何も無く進めた。王都に入る際の検問もすんなり通れた。
日が沈む前に、と思い身体強化を使って急いで来たがもう日は沈みかけている。ギルドは明日にして早く宿に行こう。さっき門の詰所で宿の場所を聞いたので迷うことは無いだろう。
十分程歩いた所で、教えられた宿に着いた。見た目はボロ宿だ、まぁ、一番安い所を教えてほしいと言ったのはこっちだから、兵士を責めるつもりは毛頭無い。
「まぁ中に入るか」
外からはよく分からなかったが、中は思ってたより綺麗だ。
僕は受付らしき所へ行き、部屋をとる。朝、夜ご飯付きで銀貨30枚となっている。銀貨100枚で金貨1枚なので、今の手持ちだと長期間泊まれる。取り敢えず10泊部屋を取ることにした。
部屋はとてもシンプルな造りになっており、変に飾り付けられていない。ベッドに机に椅子、最低限のものはあるから不満は無い。だが驚いた事に、部屋にシャワーが付いていた。これは嬉しい。
僕はさっとシャワーを浴びて、疲れを癒やすためにベッドに入った。
真っ白で何も無い空間、そこに一人僕がいる。
《やっと来たね……君を待っていったよ……》
顔が見えない誰かが、僕に話し掛けてきた。
《誰?待ってたって何の事?》
"彼"は不敵な笑みを浮かべて答えた。
《まだ言えないなぁ、でもすぐ分かるよ》
《いつか会えるのを楽しみにしているよ》
"彼"がそう答えた瞬間、真っ白の空間は崩壊した。
「はっ!はぁはぁ……、夢、か……」
額に手を当てると、手がぐっしょりと濡れた。かなり汗を書いてしまった。
「シャワー浴びて、素振りでもするか」
僕はベッドから出て、日課を熟しに向った。
日課を終えた僕は街へ出た。
「おぉ、凄い。店がいっぱいだ」
今いるの広場である。真ん中には大きな噴水があり、その周りを取り囲むようにして店が多く立ち並んでいる。その一つ一つを見て回った。
「そこの坊や、ちょっと見ておくれ」
そう、ある店の前で呼び止められた。どうやら様々な種類の本を売っているらしい。
「へぇー、色んな本が売ってあるんですね」
そう言ってお店の人を見る。顔はフードでかくれて良く見えないが、かなり際どい服を着ている。僕はドキドキした。
お姉さんが僕の顔を見つめている。すると突然、
「坊や、今気になっている事あるでしょう?」
「えっ……?」
意図が掴めなかった。確かに今、気になっている事が1つある。だが人には話していない。
「あぁ、私が何で知ってるのかって顔してるわね?まぁそんなことはどうでも良いわ。坊やに渡さないといけないものがあるから。はい、これ、しっかり渡したわよ?じゃあ私はこれで……」
「えっ、ちょ……」
気付くとそこにもうそのお姉さんは居なかった。残されたのは薄い1冊の本だけだった。
ただ、タイトルは目を惹くものだった。
タイトル;『クズ』のための本
著者;???
近くにあったベンチに座り、僕は吸い込まれる様に本を開いて1ページ目を見た。
注意書き
これは『クズ』の為の本です。それ以外の人が見ても意味はありません。
そこから流れる様に僕は読み進めた。
『クズ』とは『屑』と書き、ここでは『星屑』を表す隠語だよ。何故隠語を使わなければいけなかったのか……それは……秘密だよ!
(中々尺に触る書き方をしているな……)
そんなことは良いとして、今この本を読んでいるということは"選ばれた者"と言う事だね。じゃあそんな君には能力の開放の仕方を教えよう!ここに書かれている鍵言葉を詠唱すると出来るよ。まぁ後は頑張ってねー!
最後まで殆ど話し言葉で書いてあった。だが内容はとても重要だ。確かに昨日の一件で『クズ』に何かが有るのは十中八九間違いない。
そう考えると、内容をすんなり信用出来た。そもそも『クズ』について書いてある時点で信用に足る物だろう。そうなると、さっきの売り子のお姉さんが気になった。
(もしかしたら……)
まぁ良い、取り敢えず物は試しだ。僕は鍵言葉の詠唱をする事に決めた。
だが人が居ない、ある程度の広さが有る所で行わないといけない、と書かれていた。
なので僕は一旦王都の外に出て、昨日来る時に見つけた丘の上に行くことにした。
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