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第四十八話 体育館

 ……俺は何故か分からないのに糞餓鬼と模擬戦とやらをやることになった。

 手加減とか面倒だな……

 相手は生徒らしいし怪我ぁさせたりしたら後味悪いしな。


「……燃え盛る業火よ……彼の者を焼き尽くすものと成れ……」


 餓鬼が詠唱に入り、額から汗を流すほどに集中しているのが分かる。

 ついでに、詠唱が長い。

 待ってやる必要性が皆無なのですぐに懐に潜り込み、腹部を蹴る。


「ぎゃあ!」


「んぁ?」


 本当に俺の事に気づいて無かったようで、受け身すら取らずに床を滑る。


「詠唱の邪魔をするなんて……!」


「長いし、受けるワケ無いだろ?」


 多分、ティナが使うより強力な魔法なのだろう。

 そんなの受けたくもねぇし。

 好き好んで受けるヤツはマゾだ。


「詠唱中は攻撃禁止だッ!」


「なんつー暴論! どっちも詠唱中だったらどうすんだ!」


「その時はその時だ!」


 鼻息を荒くしながら、糞餓鬼が地団駄を踏んで言ってくる。

 模擬戦とか言ってたが、これじゃあ俺が的になってるようなもんだぞ。


「取りあえず、速攻で終わらせてやる」


 短剣を抜いたはいいが、使うとシャレにならなそうだ。

 打撃だけで戦うか。

 あと、悪属性魔法で。

 短剣を腰に戻し、両手を空にする。


「麻痺の力……宿れ。パラライズ」


 右手に麻痺属性を宿して、再度、餓鬼の元へ潜り込む。

 そして、顔面を右の掌で叩く。


「ぶぇ……ッ!」


「悪い子はお仕置きだぜ!」


 唸れ……!

 俺の平手ッ!


「必殺ッ! おうふくビンタッ!」


 麻痺も入ってるし、全部の平手打ちを受けてくれる。

 やば、これめっちゃ楽しい。

 いや、絵的には超マズイんだろうけどさ。

 動画サイトにアップしたら捕まりそうな勢いで。

 そんな事を考えると超悪い事してるみたいだ。

 模擬戦なのに。


「ごめ……なさ! ごめんなさ……! ごめんなさい!」


 おうふくビンタを何発も与えていると、糞餓鬼が謝ってくる。


「え? なんつった? 聞こえん」


「ごめんなさいッ! オイラの負けだ! やめて……やめて!」


 そろそろ本気で泣きそうになってきた糞餓鬼である。

 生意気だけど、根はやはり餓鬼という事か。

 つうか大人げない事した気がする。

 まぁ、いいか。


「メイさん!? 何してるの!?」


「あ、やべ」


 丁度、手を上げていた場面をティナに見られる事になった……


 ティナに説明をしたのだが、一向に機嫌が悪いままだ。

 糞餓鬼が嗚咽を漏らし、その度にギロッと俺の方を睨む。

 これ、俺が悪いか?

 模擬戦とか持ち出して詠唱してきやがったし、受けてたら俺が死にかけてたかもしれないのに。


「メイさん……この子に言うことは?」


「ざまぁ」


「……」


「イッ!?」


 ティナは無言で俺の顔を平手打ちする。

 絶対赤くなったって。

 手形ついたって。


「も・う・い・ち・ど。この子に言うことは?」


「ざ・ま・あ・み・ろ」


「メイさんッ!」


 俺の態度にティナがカンカンだ。

 だが、俺も退くわけにはいかない。

 コイツは自分から模擬戦のルールを提示し、それに同意の上で勝負を行ったのだ。

 俺にただの動く的になれって言ってるようなもんだ。

 さっきの糞餓鬼の態度じゃ。


「えぐ……ひぐ……」


 ここぞとばかりに泣きやがって……

 だから餓鬼は嫌いなんだ。


「大丈夫……大丈夫。よしよし。泣かないで。お姉さんがいるから」


 ティナが糞餓鬼をあやしている。


「何があったか正直に言ってくれる?」


「えぐ……そこのお兄ちゃんに……話しかけただけなのに……いきなり……ただがれで……」


「う……わぁ……」


 ティナという火に油を注ぎやがったコンチクショウ……

 ギギギという効果音がしそうな感じで首を俺の方に曲げてくる。


「メイさん……最低……」


「俺は嘘は言ってないからな。だから謝りもしない」


 俺は事実を言っている。

 嘘をついているのは糞餓鬼の方だ。


「メイさん、謝って……こんなことで私、幻滅したくない……」


「知らん。幻滅したきゃしろよ」


 そろそろ俺のイライラも我慢の限界だ。

 何せ、糞餓鬼の提案に乗ってこのザマだからな。

 上手く嵌められた感がして苛つく。


「……メイさん」


「俺は先に帰ってる。こんなとこ居ても、ろくなことが無いのは分かった」


 無意識に拳を握る。

 その力はとても強かったように感じる。

 ……ああ、またか。

 この感じ。


 俺は宿屋の一室に一足早く戻り、日記の細かい所を見ていく。

 国が色々あるのは分かった。

 まず、人間国。

 そして、魔人国……つまりここな。

 獣人国。

 動物人間がいるのか。

 亜人国。

 これはよぉ分からんな。

 ……これだけか?

 日記で読んでいってももう無いな。


「これはまぁ……進展か」


 つか多分だが、この本、俺が来るよりずっと前の気がする。

 それこそ100年単位で過去の……

 その頃は輸出入が頻繁に行われていたらしい。

 人間と魔人の間にも。


「……ふぅ。あー勉強嫌いだったからな」


 ドサッと、ベッドの上に寝転がり、照明を見る。

 相変わらず鉱石が光を放っている。

 その光を見ているとボーッとしてきたような気がする。

 昼寝でもするか……

 最近規則正しい生活過ぎて、睡眠とか足りてないのかもしれない。

 だからこんなイライラしてたりすんじゃねぇか?

 未だに静かな怒りが湧いてきている。

 そうだな、きっとそうだ。

 そう思い込む事にする。


 ……


 どれだけ時間が経っただろうか。

 目を開け、窓を見るとすっかり外は暗くなっている。

 本当……

 どれくらい寝てたんだろうな。

 俺をイラつかせていたものは退いている。

 先程より随分と楽になったな。


「メイさん」


「……いたのか」


 単純に気づかなかった。

 本当は少しだけいないのを期待していたが。


「先生にイフ君の事聞いててね、謝らなきゃって」


「イフ君……」


 多分、あの糞餓鬼の名前なのだろう。


「その子、いつも他の子を模擬戦に誘っては大ケガさせて、怯えさせたりする子なんだって」


「性格悪ッ」


「神童……って皆から呼ばれてて、誰も逆らえないみたいなの」


 それで天狗になってたり、暴論で片付けようとしていたのか。


「先生も手を焼いていたみたいだし、逆にメイさんに感謝してたみたい」


「荒治療の薬にさせられたワケね」


 それもそれで利用された感があって嫌だな。

 俺は俺のやりたいようにやっただけなのに。


「それで、本当の事を話してくれてね……その、ごめんなさい……」


「……」


「私、幻滅する……なんて言っちゃったり、頬を叩いたりして……ごめんなさい……」


 そう言って俺に頭を下げてくる。

 素直に謝られてもなんだかな。


「……本当、私、貴方に謝ってばっかりだね」


「別に良いんじゃねぇの?」


 何が……と言われても何にも思い浮かばんが。

 それがティナなんだろう。

 自分で勝手に空回りして、それでも自分が悪いと思って謝って……


「それにあんな場面だけ見られたら疑われるのは分かってたしな」


 あの場面だけ、写真のように抜かれていたら、誰だってイジメの現場に見えるだろう。

 多分、俺だって他者から見ればそう思う。


「……ごめんなさい」


「もう謝んなよ面倒くせぇ……それより腹減らね? 飯でも行こうぜ」


 俺は軽い感じにティナを誘う。


「……うん、行こう!」


 俺の誘いにティナは笑顔で肯定してくれた。

 学校なんざ、良いとこじゃねぇな……

 やっぱ。


 俺らは飯を食った後、約束の日記の恋愛話を読むことになったが……

 如何せんハーレムものだったし、読むのがクソはずいし……

 それでも目を輝かせていたティナは惑うことなき、変態なのだろうか……?

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