第二十五話 なんなんだ…コイツら
自分の手に届く所に作った存在。
それは重荷であり、自分の分からない存在であり、何よりも理解しあえない存在。
…だからか分からない。
そんなもの、もう手に入れまいと思った。
そんなもの、もう作りたくはなかった。
頭では分かってたハズだった。
手に入れたらまた話したくなる。
そして、仲を深めたがる。
最後は決まって…
『裏切られる』
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「…っふぅ」
「もう暗くなってきたね…そろそろ帰る?」
「そうだなぁ」
暗くなってきたのもあるが、俺とティナの体力…HPではない、スタミナの疲労を感じていた。
ゲーム数値でなんでもかんでも片付けられては睡眠というものが存在しなくなってしまうしな。
それに、両手では数えられないくらいの戦闘をこなして、素材も昨日とは天と地の差…とは言い過ぎか…
それでも、宿屋に10日は泊まれるくらいの資金は手に入れられるだろう。
「…帰るか」
「うん」
俺らは城を目印に歩き出す。
ワイルドベアの出現頻度はハンパないな。
他の種類の魔物に出くわした事が数回しかない。
そうそう、スライムにも出会った。
ポイズンスライムという、とあるゲームのヤツとは比べ物にならないくらい気持ち悪かった。
ねちょぉっと進んだ跡には溶液がこびりついているし…
口から溶化液みたいなのを吐き出したり。
俺はともかく、ティナは細心の注意を払って当たらないようにしていた。
溶けたらシャレにならないしな…
「メイさん」
「ん?」
「私たち、友達だよね」
「…ああ」
「そう…そうだよね…ふふ」
「…な……なんだよ」
「ううん…これからもよろしくね」
「お…おう…」
俺は戸惑いつつも返事をする。
これからも…か
これからも一緒にいれたら…
って何言ってんだ俺は…
「…」
「あれ?メイさん、顔が赤いよ…?熱でもあるの?」
「んなわけねーよ…つか赤くもねぇし」
「そうなの?でもなんで離れるの?」
「んなのいーだろ勝手にさせろっつうの」
「じゃあ……ぴたッ…」
「んっ…!?」
いきなり肩に触れられてビクッとする。
そして、ティナとの距離を稼ぐ。
「…あれ…?」
「んんッ…」
咳払いをして歩き出す。
「…ぴたッ…」
「…」
ティナがまた触れてきたのでサッと距離を稼いだ。
「あれ…」
「さっさと行くぞ…」
「…ぴたッ」
「んだよ!?」
そしてまた俺はサッと距離を稼ぐ。
その俺を見ながら目を丸くしている。
「友達…です…よね?」
「それとこれとは別じゃねぇッ!?」
「えっ?友達って手を繋いで歩いたりしないの?」
「知らねぇ…ッ!俺はしねぇからなッ!」
「まさか…友達と思ってくれて…ない…とか…」
「いやいやいやいやッ!それはおかしいからッ!」
「嘘!思ってくれてないからしてくれないんでしょ!」
そう言いながら…
笑ってやがる。
「くっ…おちょくりやがったな…」
「あっ…バレちゃった」
「バレちゃったじゃねぇッ!くそ!」
「えへへ」
「くぅ…」
「ほら、行くよ!早く!」
「腑に落ちねぇーッ!」
なんで先導されたのか、分からない!
俺は仕方なくティナの後ろへとついていった。
城下町に帰ってきたのは本当に暗くなった頃だった…
今もティナは俺の前を歩いている。
それがどうというわけではないのだが、少し新鮮だな…
いつもは俺が前にいるのに…
「ねぇメイさん?もうご飯食べる?」
「あーそうだな。このまま寄るかぁ」
「じゃあ今日はいつもとは違うお店寄る?」
「任せる。ってか知ってるのな」
「任されましたー!」
微笑みながら言ってくる。
無邪気な表情…
それを見てフッと笑ってしまう。
途中で何やってんだと思って顔を引き締める。
「…あ…つ…?暗殺…い…は…?」
…辺りには人がいる。
盗み聞きならお手の物だが…
その内の一つ…から不穏な単語が出てきた…
「暗殺…」
小声で呟く。
盗み聞きした中で特に気になった…
それに周囲で拾った声じゃない…?
…ぁぁ?
なんでそんなのわかんだ?
俺が…
「…銀髪…………が標的…」
「…そ…か…じゃ…………」
いや…素直に喜ぶか…
喜んでいい話じゃあねぇけどな!?
銀髪っていってるし警戒はしておくべきだ…
つか、声の主はどこだ…?
周りの人ではないことは確かなのが分かる。
なんでかは知らんけど。
「どうしたの?メイさん」
「………いや」
「…なんか隠してるでしょ…」
ムッとした顔でティナが顔を近づけてくる。
「なんも隠してねぇよ…」
「…ふーん…」
「んで、どこの店だ?」
「あっ…こっちこっち」
ティナが手招きして、歩き出す。
どうにか誤魔化せたな…
警戒するのは俺だけでいい。
どのみち明日にはこの町を出る予定だしな…
今日を凌げれば問題ない…
そう思って俺はティナには何も言わなかった。
しばらく歩いていく内に人通りの少ない場所へと来た…
キョロキョロとティナは辺りを見渡している。
「…どこだっけ」
「分からねぇのかよ!」
「うぅ…もしかして閉めちゃったのかな…」
残念そうにティナは俯いた。
「いつもの場所いくか」
「…そうだね…ごめんね」
「気にすることねぇよ…」
しかし引き返すのか…
面倒だな…
「…覚悟……」
俺の後ろ…ティナの後ろからそんな声が聞こえた。
…嫌な予感ッ!
「ティナッ!」
「え、何?メイさ─────」
腕を強引に引っ張り、引き寄せて投げる。
そして、ククリナイフを取り出して構える。
「…感付かれたか」
見ると全身を黒の生地で覆った何者かがいた。
手にはナイフを持っている…
つまり空耳でもなんでもない本当の作戦会議を聞いていた事になるのか。
「警戒しておくもんだな…」
「いったぁ……ってメイさん?その人は誰?お友だち?」
「もうちょい俺でも人選するわ…」
どうみても昔話しに来た風でもないだろ…
つうか話し合っていたんだよな…
後、一人は最低いるはず…
「…」
暗殺者は無言のまま左手を上げた。
すると、どこからともなく4…5人…の暗殺者が現れる…
「…っち…面倒な事になったな…」
「こ、こんなにお友だちがいたの!?」
「ちげぇよッ!どうみてもんな感じじゃねぇだろ!」
天然なのか!?
ふざけて言ってんのか!?
「クソッ…はぁっ!!」
俺は目の前の暗殺者に向かって切りかかる…
「何ッ…!」
なっ…!?
正面から防がれた…!?
「…少しはやるようだな…」
「…ッ」
すぐに後ろに飛び退き、ティナに背中を預ける形になった。
「どうしよう…メイさん…」
「っぐ…」
俺の素早さについてこれたっつうのか?
ヤバい…早くも詰みか?
そんなん嫌だぞ…!
「どうする…どうする…!」
考えろ!
パラライズで全員…
いやそんなの無理だ…
五人の時点でそんなことやってられん。
しかもだ。
掌が当たるかどうかさえ危うい…
「…」
暗殺者が手を上げようとする…
「ティナ…!剣を抜けッ!」
「う、うん!」
一か八か…切り抜けるしかねぇッ!
「どわっはぁッ!?」
「なっ…」
第三者の声に、暗殺者が声を漏らした。
…俺とティナもだ。
髪の青い青年が路地裏から勢いよく飛ばされて俺の前に転がり込んだ。
…コイツ…どっかで…
「まてまてッ!リドルグッ!悪かったって!謝る!すんませんっしたー!」
「そうか…なら…返して貰おうか…竜の鱗を」
「だからないんだってばッ!ほら、ほら!また狩りにいけばいーだけじゃん!?な?な?だからそんな怒んなって!」
「そうか…カート…今日の所はその両手両足もいで許してやる」
「勘弁してってー!!ほらほら!お兄さん方もなんとか言ってやってよー!」
路地裏から出てきた褐色スキンヘッドが青髪の青年に向かって矛先を向けている。
んぁ…?両方共、魔人だが、ツノが一本ない…
「…仲間が増えたか…だが…我らに勝てると思うなッ!」
暗殺者の一人が青髪に向かって切りかかる。
「よし、やってくれ」
「リドルグッ!悪かったって!うぉ!?」
キンッ!と高い音がなる…
見ると青髪の青年は左手に盾を持ってガードを行っていた。
「あっぶねー!本気で切りかかってくるとか、心臓に悪いわー…!」
「…我が見えていただと…!?」
「よっ」
青髪の青年は盾で暗殺者を押し返す。
「…あの…貴方たちは…」
「すまないな、お嬢さん。ソイツを殺ったら姿を消すから待っててくれや」
「リードールーグーッ!ピンチだよピンチ!カート様がピーンーチーッ!」
「そうだな。俺が引導を渡してやろう」
「俺の話聞けってば!」
…なんなんだコイツら…
こんな所で言い争わなくたっていいだろうに…
だが、案外この状況を打破出来るんじゃないか?
「そこの兄ちゃんッ!」
「…俺か?」
スキンヘッドのおっさんに話し掛けられる。
なんだ…?
「その青髪をそのナイフでぶっ刺してくれ」
「ちょぉ!?やめとけって!な!な!?カート様を殺しても何にも得なんてないから!な!?」
「…頭がいてぇ…」
何が起きてるんだ…?
素直に頭がクラクラする…
「…いい…どのみち見られた全員…皆殺しだ…」
暗殺者の一人が片手を上げた。
すると他の暗殺者が俺らを狙ってくる!
俺に一人、ティナに一人…
おー…四人もあっち行ってくれた。
「よっ…はっ!」
俺は突っ込んでくる暗殺者の攻撃を跳躍からの即攻撃。
パッシブ、エリアルステップの効果で跳躍中にもう一度跳躍出来るのだが、その応用…
空を蹴って地面に即座に着くことが出来る。
それで、攻撃した。
「なっ!?」
…致命傷にならない…いや…
ダメージを与えてはいるが、その量が少なすぎるのか…
「小癪な…!」
「よっ…」
コイツはさっきのヤツと違って、俺を捉えきれてない…
これなら勝算はあるな…
「や…やめて…下さい…!」
「死ねぇッ!」
ティナは剣を構えて必死にガードしている。
攻撃に出ないな…
何故だ…?
「斬りたくない…!」
…人だからだ…
対してなんだ?俺は
普通に人に切りかかるとか、よくやったな…
ともかく、防御の姿勢じゃいつまでもつか…
「だーかーらぁッ!謝ってるだろぉーッ!」
青髪の青年は盾で攻撃を弾き、右手に剣を持って回転斬りを行う。
それだけで二人の暗殺者は吹っ飛んでいく。
「おい…なんでこっちに来るんだ?利用しようとした矢先に…」
スキンヘッドは暗殺者の攻撃をひらりと避けて拳を振るう。
それだけで一人は仰け反り、そこにもう一発入れた。
それで吹っ飛ばす…
「おい!リドルグ!やるぞーッ!」
「仕方ねぇ…これが終わったら制裁をカートに加えてやる」
「おいおい、勘弁だって」
お互い、背を預けている姿があった。
カートと呼ばれた青年にリドルグと呼ばれたスキンヘッド…
どうやら根本は仲間らしい。
「…ッ」
「メイさん…!」
「…ティナ…殺らなきゃ殺られるぞ…」
「…わかってる…つもりだけど…」
「じゃあ…死ぬなッ」
俺とティナは背中を合わせた後、俺だけが相手に向かって走っていく。
ティナは未だ、守りの体勢に入っていた…




