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第十五話 晴天

巨大なグロウガンが倒れ、辺りには沈黙が漂っている。

ふらふらと重い足取りだが、目的は精霊を捜す…

それだけは忘れてねぇ…

それに、まだあそこ…

女の子の所には行きたくない…

…臆病者だ…事実を肯定する勇気が、俺にはないんだから…だから。

この気持ちは…記憶を無くす前の…

俺にぶん投げる事にするよ…

本当に、情けないけどな。

でも…

こんな脆い俺より…明日か…明後日か…はたまた一年後か…それくらい先の…未来の俺の方がまだ頑丈だろうよ。

ああ…逃げてるんだなと自覚する。

ああ…逃げてんだよと肯定する。

責任転嫁だと分かってるよ…でも。

死を受け入れるのは…見るのは……

中1じゃあ辛いんだわ…


「って…明日の俺だったら…立ち直れるかな」


いや、そんなんいいや。


「さて…出てこいよ。ここに…いるんだろ?精霊様」


俺は虚空に、声を出した。

何か確信が持てたか…分からない。

でもいる気がした…それだけが根拠だった。


「…ハハハッ!ハハハッ!ありがと、ありがと。アソんでくれて」

「こんな激しい遊びは懲り懲りだな」


はぁ…疲れた…

だが、休憩してる暇なんてねぇよな。

目の前に突如として現れた精霊…

記憶を失った根源を見据える。


「さて、記憶を返してもらおうか」

「…イイノ?イイノ?」

「…どういう意味だ?」


ここまできたのは記憶を取り戻すためだった。

そう、心変わりしたんだから。


「キミのキオクはツライんだよ?とてもとても、ツライ…イマでさえオしツブされそうなキミに、ウけトめられるの?ホントウにカエしてほしいの?イイノ?」

「…辛い…ものね」


そう言うと精霊は頷いた。


「…ウラギられたキオク…キョゼツされたキオク…それをウけて、シにたくなるようなキオク…」

「……」


一日二日なら、こんなこと言わないだろう。

ならば年単位持ってかれてる事になる。

その記憶を取り戻す…勇気…ね。

…ッへ…


「そうか…そんなに、俺の人生は波乱万丈だったのか」


…燃えるじゃねぇか…

こんな展開…

それに、選択肢は元々…一つしかないんだ。


「そうだよ!だからボクにキオク。チョウダイよ」

「…いや…返してもらうぞ?」

「…え」


何故かビックリしたような顔をしている。


「波乱万丈…そりゃ結構。それに、決めてんだよ。アイツの…名前を…思い出すって」

「イイノ?イイノ?ホントに?イイノ?」

「いいんだよ。早くしろって」

「…はーい……」


渋々と俺の言葉に従う精霊。

多少…怖い気もする…

いや、かなり怖い…

自分の知らない記憶が入ってくるのだろう…

もしかしたら未来の記憶でもないのかもしれない。

はたまた記憶が消されて…


「落ち着け…落ち…」


いきなり膨大な量の…何かが入ってくる…!

頭がキィィィィイインッ!という音が鳴り響く!

これは…記憶…!


「ぅ…」


吐き気…目眩…体は一ミリも動かず、倒れこむ。

体が地面についた感触も、痛いという感触も…

何物も得られることがなかったが、今でも色で判別も出来ないような何かが頭の中に…


「…っく…」


何故…忘れていた…人に対する…疑い…

自己嫌悪…


「…!」


確かに…思い出さなきゃ良かった…

ああ、良かったよッ!

なんでまたこんな…!

クソッ!


「ぅ…!」


てめぇら!また…!

ぁ…!

っち!


自分でも制御の出来ない、感情の変化。

ただ、噴き出すものは全てが黒い…

信じられるもの?

ねぇよ…

両親?友達?

ああ…信じてねぇよ…!

何が…何が信頼してるだ…!下劣な野郎ども…

男だ?女だ?関係ねぇよ?

先公?知らねぇよ!

ああ…逃げたんだよ…何が悪いんだよッ!


クソッ!


「ワカル?ワカル?イマならまたモラってあげるよ?」

「…ああ…そうだったな…」


過去の俺…分かってるよ…

やめる気は…毛頭ねぇから…!


「続けろ…!」

「…ワかった」


恨み…妬み…辛さ…苦しさ…

楽しさなんて一欠片もない…

闇と表現するのがいいくらいだろう。

それが、俺の心の中…

だった…

小さな…明るい雫が滴り落ちるのは。


「…なんで…こうも…コイツは…」


今は…もういないハズの存在…

ソイツを…


「…笑顔が…眩しいだろ…」


…思い出したよ…


…セレスティナ・エルローゼ…


「……安心しろ…俺が、埋めてやるからさ」


覚えちゃいないだろうが…な。

信頼した相手くらい…手厚く葬ってやるよ。


「それが…俺の……」


言葉が…止まる…

ふるえて…る…

…ざけんな…

ふざ…けんな…


「クソ野郎じゃねぇかッ!俺は…ッ!俺は…!俺は……!」


なんで…四年前…助けにいけなかった!

なんで…四年前の俺は…冷たくした…!

仲間だったんじゃ…ねぇのかよ…!


「は……はは……」


過去の…俺は…

厄介なもん…

置いていってくれた…


クソが…

力がねぇからか…?

こんな思い…すんのは…

初めて…だ。


人のために…泣いたのは…


「ふ…ふふ…ふ……」


こんな記憶…無くしたい…

こんな記憶…捨て去りたい…

願うことなら、時を巻き戻したい…

あんな…

あんな勝ち方…

勝ちって言えねぇだろ…!


「キオク?とる?キオク、ボクにくれる?」

「…」


本当はしたい…

本当は…何もかも忘れていけりゃあ、楽なのかもしれない。

でも…


「ティナは…ティナだけは…忘れたくねぇんだよ」


短い間…強固な絆なんかは確かに…無いかもしれない…

本当に薄い…長い…

納豆の粘りけで出来た、極細極長の糸だ…


それは…

初めての…本当の意味での…


「…馬鹿だよな…」

「…フシギ…フシギ…そんなにツライのに、どうしてワスれたくないの?フシギ…フシギ…」

「…なんで…だろうな…」

「ニンゲンはヨワイよ?そんなキオクゴト、ナくすのもデキるよ?」

「そりゃ…ありがたいが…」


元はと言えばコイツのせいでティナが…

いや…違うな。

あんとき、入らなきゃ良かったんだ…

奥になんて行かなきゃ…

いや、過去は変えられねぇんだ…


「やっぱ…覚えててやりてぇんだよ…いや…覚えていたいんだよ」


結局はワガママ…

自己中…

そんな俺が嫌いだが、だが…

ティナの事は…

ティナの事は…どちらかというと好きだった…

あんなお人好しの…あんな馬鹿…

真面目で律儀で泣き虫で…

ドジで…マシンガントークし始めるし…

かといってたまに黙るし…

とか思うとなんか笑うし…

でも…芯があって…

とても…

暖かい…


「…会って…んな経ってねぇのに…よぉ…」


上を向いた…

泣きたくねぇから…

でも、雫が…流れる…

なんで…だ…

こんな…辛いことなのか…


「クソッ…らしくねぇ…本当に全部の記憶、戻したんだろうなぁ…!」

「…うん、したよ」

「っへ…こんな…情が…まだあったんだな」

「キオク…どうするの?」

「……持ってやるよ…こんな…きたねぇ…大切な…ものをな」


そう言い残し、俺はやるべき事をやりに戻る…

彼女の…

ティナの元へ…










「…待たせたか?」


返事はない…

…地に伏している…ティナの亡骸…

胸が…胸の奥が痛い…

顔は血の気を無くしていた…

でも…必ず…


「…安心しろって…俺は…俺だけは…忘れねぇ……」


見下ろしながら…呟く…


「だから…ゆっくり…休め…大切な…友達…」


途切れ途切れになってしまった…

死んでしまった…

ティナに届いただろうか…


「…らしくねぇって笑うなら笑…ん?」


抱き上げた時だった…違和感を感じたのは…

温もりを感じる…

それに…息を…


「…」


頬がひきつった。

そういやぁ…まだパーティメンバーだよなぁぁ?

俺の名前の下…そこにはティナの名前があり、HPが…


セレスティナ・エルローゼ

HP28/82

MP32/36



「…」


やべぇ…キレそ…!

人がんな心配して…!

いや、んなことはどうでもいい!


俺は片手でティナを支え、もう片手を天に掲げる…


「起きろバカッ」


パチンッ!


そんな音が鳴り響いた…










「なんで叩いたんですかぁ…」


頭を抑えるティナ…

頭叩いたもんな。


「…ムカついたんだよ」


イライラはまだしている。

短気舐めんな。

…だが、それ以外にもあるさ。

少しだけだ…

ほんの…少しだけ嬉しかった…


「…あれ?モトシマさん…雰囲気変わりましたね?」

「…記憶を取り戻したんでな」


ったく…四年前の記憶を思い出すのが大変だ。

…まぁ、ハッキリというか鮮明に残ってるからいいが。


「えっ?じゃあ、私のこと…?」

「ティナだろ?お前、変わんねぇな。今も昔も…」


ホント…かわんねぇよ…

人間だと拒絶してた割には結局助けに来やがったか…

…ま、命拾いしたが。

というか、ティナを失いかけた…が…


「ティナ…ですか…ふふ…」

「なんだ?」

「いえ、親しみを感じます。貴方は人間なのに」

「人間じゃ、悪いか?」

「…分かりません」


だよな。


「…でも、いいかもしれませんね」


そう言って微笑んでくる。

…ホント…変なやつだ…

今も…昔も…


「記憶、取り戻すか?」

「…え?」

「取り戻さねぇなら、残念だがおさらばするぜ。俺が信頼してるのは、お前じゃないからな」


…もしそっちを選べば、本当に切り捨てるつもりだ。

心苦しいが…でも、信頼してるのは、コイツじゃない。

コイツだがコイツじゃないんだ…

記憶を取り戻さない限り、信頼はすることが出来ない。


「…一つしか…選択肢…ないじゃ無いですか…」

「さぁな?選ぶのは…お前だ」

「…取り戻しますよ」


その言葉に俺は少しだけ笑う…

いや、笑うつもりはなかったが、顔が緩んだというか…


「じゃあ、行くか」

「え、あっ…はい!」


俺の言葉に、ティナが頷いた…


先程の…餓鬼の所へと向かった。

餓鬼は相変わらずふわふわと浮いてやがる。

やっぱ殴りたくなるな…

俺らにやったことといいよ…


「あ、あなたが…精霊…」

「ハハハ!イきてる!イきてる!」


餓鬼はティナを見ると笑ってやがる。

コイツ…後で制裁を…


「あの…記憶を返して貰えませんか?」


ティナがそう言った。


「イイノ?イイノ?キミのキオクはカナしいんだよ?とても…とてもカナしいゲンジツなんだよ?」

「…それでも、取り戻したい…だから…返して下さい」


ティナの眼は鋭い…

ま、あの町長のアホ息子に向けたのよりはまだマシだったが…


「…ワかった」

「…モトシマさん」

「なんだ?」


ティナが俺に話し掛けてくる。

こんなときに何が…


「ありがとう…」

「お礼を言われる筋合いはねーよ」


そう言い返すと、少し剥れていたが、ティナは再び微笑み…


「ぅっ…!」


倒れこんだ…

それを俺は支える。

ただでさえHPがコイツは少ないからな。

油断は出来ねぇ…


「いや…!やだ…!」


苦しそうに、喚く…ティナ…

…コイツも、過去になんかあったんだな…

一応先輩だしな。

…関係ねぇか?


「ぁ…」


…今度は長い間、沈黙し始めた…

何を…見ているのだろうか…


「…メイ…さん…メイさん…メイさんッ!」

「お、おう」

「思い出しました…!全部…全部!」

「本当か?」

「はい!メイさんと初めて会ったのは…」


ティナが勝手に一人で暴走し始める。

いや、こんな回りくどい話し方しなくていいし。

つかさ、めっちゃ思い出補整激しいな。

なんか知らんセリフすら入れてくる始末だ。

例えば、「ここは俺がやる!」

とか。

絶対わざとだろティナ!

何をすんだよ!?

料理か?

料理したろか!?


「…で、ちょっと止まれ」

「あっ…は、はい」


俺の呼び掛けに応じなかったらどうしようかと思ってたわ…

さて…俺は精霊に向かい合う。


「てめぇ…なんでこんなことしやがった?」

「だって…キオクがタスけてって…」

「…?」

「ヒッシに…ヒッシにタスけてってイってたもん!」


…話を聞いてみた。

要約すると、記憶を覗けるらしく、その辛い記憶ごと何年か分の記憶を頂こうとしていたらしい。

そうすれば、俺らが助かると思っていたみたいだ。


「結論、やっぱ餓鬼だなお前」

「め、メイさん…」

「…ワからない…ニンゲンは」


記憶を…消せばいいとか、頭がおかしい。


「いいか?辛い記憶でも、支えになるときがあんのさ」

「そう…ですか?」

「支えっつうのも変か?教育とか…学びとか…」

「そうなの?」


ティナと餓鬼に首をかしげられる。

クッソ!説明下手くそかっ!


「裏を反せばそういう事態にならなようにとか…な?」

「ああ…確かにそうかもですね」

「…断定してほしかったよコノヤロウ…」


自分でも何言ってるかわかんねーんだぞ…


「とにかく、記憶は大切だ。どんなものでも…例え、友人が死んでしまった記憶でさえも」

「…メイさん…もしかして…」


いや、さっきの事だけどな。


「だったら…ボクは…ナンでここにいるの?」

「……ん?」

「ボク…キオクのセイレイはなんでこんなトコロにいるの?」


記憶の精霊…ね…

知るかよ…

んなもん自分で探せって言いてぇが…


「…メイさん…私…ここが忘却の洞穴って呼ばれる理由…やっと分かりました」

「俺は前々からだが」

「えっ!?嘘ッ!?」

「コイツのせいだろ?」


何を当たり前のことを…


「記憶の精霊さんは…きっと存在意義が欲しかったんです」

「それと記憶抜きとんのは…」

「同じです。彼は、記憶を抜くことも戻すことも出来ます…でも…多分、それ以外出来ないんです」


つーか精霊ってだけでもは初耳なのに…

…つかまて。

ティナ。お前、変なスイッチ入ってねぇか?


「だから、私たちでなんとか…」

「まてまてまて…何すんだよ…」

「だからそれをこれから…」

「やってなんのメリットが…」

「それはここに来る人々の記憶を抜かれない為ですよ!」


…変に意志のこもった発言だな…おい

…ため息が出る…なんでこんなことを…


「いいですよね?メイさん!」

「…勝手にしろよ…じゃじゃ馬…」

「…!はい!」


ティナは精霊と向き合い、対話を始めた。


「記憶の精霊さん…あなたは、何がしたいの?」

「…へ?」


スットレートに聞くのなぁお前…

大抵の人は餓鬼の反応するわ。


「あなたがしたいこと」

「ボク…が…」

「はい。あなたが…したいこと」


餓鬼は考える。

うーんと唸っているのだ。

無いのか?

無いなら引きこもり予備軍、もとい俺の仲間だな。


「…エガオ…」

「笑顔?」

「…エガオにしたい!」


餓鬼は笑う。

不思議と明るく、外見の年齢相応の笑みで。

それにつられてティナも微笑む。


「素敵ね!」

「うん!」


そして、またティナと精霊の話が始まった。


「笑顔にするのはとても大変なの。相手にとって嬉しい事をしてあげるのが一番の方法なのよ」

「イチバン…ツライキオクとること!」

「…それは違うって言ったじゃない。辛くても、記憶は大切なんだって」

「う…うう…」

「そうだなぁ……ってメイさんも何か考えて下さいよ!」


いきなり話を振られた!?


「勝手にっつったろ!?なんで振られるんだよ!?」

「そんなこと言ってると、モテませんよ!」

「グフッ!?」


刺さった。

本当の事…言うんじゃねぇよ…


「…わーったよ…」


イマイチ乗り気じゃねぇが…

仕方ねぇ…

いっちょ考えてやるよ…

…はぁ…










「ホントウにこんなコトでいいの?」

「いいからいいから。えーっと…昨日の晩御飯、何作ったっけ…」


ティナがわざとっぽく…

いや?

ガチで忘れてるなあれ…

そんなポーズをとっている…


「…」


精霊は少しだけティナをちょんと叩くとティナは思い出したように言った。


「…焦がした……お肉………ッ!」

「っくく…あっはっは!あれかぁッ!」


あれは笑ったわ。

倒した魔物の素材を剥ぎ取り、そしてその肉を晩飯にしようとしたティナ。

しかし、焼きすぎてカリカリになって苦味のあるコゲ肉になっていた。

しかも、全部。


「わ、笑わないで下さいよぉ……」

「いやいやいや…あれは笑うって」


ああ、俺のだったら逆に笑いもんにならねぇしな。

あんなにコゲてるから面白いんだ。

謎の物体Xに比べればかなりマシだわ。


「もー…!」


ティナが頬を膨らませている。


「…な?些細なもんでもいいもんだ」


俺はそう餓鬼に示す。

ひとつのことが切っ掛けで俺は笑えたのだ。

思いだし笑いだが。

でもこれも笑顔の一つだ。


「ホント…だ…ホント…だ!ホントだ!」


餓鬼は嬉しそうに飛び回ってる。

その様子を微笑ましいとばかりにティナは笑っている。


「街や村に行って、笑顔を広めてね?」

「うん!おネエちゃん!おニイちゃん!ありがとう…!ありがとう!」


…ったく…騒がしい餓鬼だ…

だが、こんくらい素直なら…悪くないかも…な。

ってなに考えてんだ俺、気色悪い。


「そろそろ行こうぜ。お前も外に出るんだろ?」

「うん!」

「はい!」


俺の声に二人は頷く。

…これでもうこの洞窟とはおさらば出来るな…

はぁー!

長かった…



「おニイちゃん、おネエちゃん…これ」


洞窟の出入口前に来るや否や、餓鬼が止める。

そして、俺らに腕輪のようなものを渡してきた。


「…ホントに…ありがとう!」

「ふふ、またね。記憶の精霊さん」

「うん!おネエちゃんも!」

「せーぜー頑張るこったな」

「うん!おニイちゃんも!」


ふわふわと、遅いが、確実に遠退いていく餓鬼。


「また会おう?精霊さん!」

「うん!バイバイ!」


元気に手を振りつつ、餓鬼は…

記憶の精霊は忘却の洞穴から姿を消した。


「…行っちゃいましたね」

「いなくなって清々したぜ」

「なんで寂しそうな顔してるんですか?」

「ぬかせっ!」


んな顔してねぇよ。

気のせいだ気のせい。


「んで?どうする?ここに入って多分一日経ってるわけだが?」

「…そうですね…とても長かった…ようには感じませんけど」

「そりゃ…記憶の挿入口がおかしいからな」


四年前にここに入った記憶もあり、最新の部分は断片的に欠けてて四年前と最新の部分が繋がるっていうめっちゃくそ面倒な事になっていた。


「精霊にあったと思ったらぶっ倒れてたわッ」

「私は…メイさんが優しく支えててくれました」

「誰が優しいっつうんだ…?」

「メイさんですよ?」

「俺は優しくねぇよッ!」


ったく…死なれたら困るだけっつうんだ。


「じゃあ、日は昇ったばかりだし…行けるか?」

「はい。HPがどんなに減ろうとも、メイさんに着いていきますよ」

「…外で休憩するか…俺が見張ってるから」

「大丈夫ですよ」

「休んでろ病み上がり」

「ふふ…分かりました」


俺らは休憩外へと出る。

外は雨上がりの晴天…

清々しい風が吹いている。


「下に毛皮とか敷いとけよ」

「…はい……メイさん?」

「なんだ?」


毛皮を敷いたティナは話し掛けてくる。


「雨…止みましたね」

「お陰で気分はいいからな。見張っといてやる」

「ありがとう…ございます…」


…寝たか…と思った矢先…


「メイさん」

「…まだ休んでろよ…」

「これだけ…聞いて良いですか?」

「……なんだ?」

「メイさんってこの世界とは…違う世界から…来たんですか?」


…四年前の俺…か…

とんでもないことをぶちまけてくれたもんだ。

だが…


「…まだ…話せねぇよ…」

「いつかは…話してくれますか…?」

「気が向いたらな」

「…ふふふ…楽しみに…してます」


ティナは嬉しそうにそういうと、静かに…眠りについた。

…ほんと…

不思議なヤツだよ…ティナは…

…四年前を思い出す…

随分と、変わったもんだ…

自身を皮肉って俺は空を見上げた。

微修正

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